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冷めた令嬢

「おい、アンシェル。喜べ、父様は再婚するぞ。とっても綺麗な人なんだ!」


 ユイラチニ侯爵家当主である父ロマンドは、喜色満面で私に報告してきました。奇しくもそれは私の10才の誕生日のことです。


「再婚ですか? まだ喪に服して一年も経ちませんが「そんなことどうでも良いんだよ。早くしないと彼女が取られちゃうんだ!」…………そうですか」



 私の父は基本良い人ですが、時々ストッパーがぶっ壊れるようです。

 今回は初恋の元伯爵令嬢にお熱だとか。

 彼女は同じ伯爵令息と結婚し子を二人もうけましたが、嫡男となる息子さんはそのまま残され、その後に生まれた娘さんと家を出されたそうです。


 父は離縁され生家に戻ったその女性に結婚を申し込み、先日受け入れられたそうです。

 だから私には、完全に事後承諾ですね。


 先程のとおり、僅かな意見を言うことさえ阻まれて、勝手に事態は動いていきました。




◇◇◇

 今日は義母となる元伯爵夫人と、義妹が邸に現れる予定です。予定の時間となり、着飾った二人が到着しました。


「私はネルフィスよ。今日からよろしくね、アンシェル」


「私はリーネ。お義姉さま、仲良くしてね」



 美しい群青色の髪をハーフアップにした柔らかい雰囲気の義母(ネルフィス)は、(たお)やかに微笑みます。

 

 義妹(リーネ)は桃色髪のツインテールを揺らし、タレ目の可愛い顔で挨拶をしてくれました。



 その様子に父はうんうんと頷き、「こちらこそ、よろしくね。待っていたよ」と、嬉しそうです。


 私も挨拶をします。

「よく来て下さいました。至らぬこともあると思いますが、よろしくお願いします」



 私の挨拶を見て、義母が一瞬キツい目付きをしていましたが、瞬時に笑顔に戻りました。

 義妹の方は、「すごくしっかりしてるね。大人みたい」と褒めてくれます。良い子♪


 父は「さあ、挨拶は済んだね。部屋を案内するよ」と、彼女達の荷物は執事に任せて、軽やかに階段を駆けて行きました。

 義母達もそれに続きます。


 私は溜め息にならぬよう、深く息を吐き出しました。

 溜め息は幸せが逃げると言いますからね。辛うじて回避です。


 そこに家令が声をかけてきました。

「お嬢様。如何致しますか? あの女、一瞬ですがお嬢様を睨みましたよ。この邸の女主人になんてことを!」


 私は宥め、静かに指示を伝えました。

「良いのよ、クインス。私が臨時でその仕事をしていただけ。今後は彼女の仕事になるわ。それに……ただのフワフワ女じゃないと、初日に露見してくれるとは僥倖よ。分かり安くて。子供の方は、少し様子を見るわね」


「…御意に」


 少し不服がありそうですが、子供の私にはここが落としどころです。

 まだ何も始まっていないのですから。


 ただ父の惚れっぽいところだけは、昔から少し苦手です。


「純粋なのは良いけれど、もう少し慎重になるべきですわ」


 


 人生経験の少ない私が言うのは、少々生意気でしょうか?


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