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あとがき

 まずは、ここまでお読みいただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。


 本作のテーマは、作中で千尋や美知恵が問いかけていた、「幸せになれる境界線」あるいは「幸せになる条件」です。


 とはいえ、作中で健(三浦)が、「明確な線引きは、できない」と考えていたように、作者である私も、そうした境界線や、条件自体が存在すると言いたいのではありません。ただ、必然的な逆境(運命とも言えるかもしれません)に対し、人はどこまで傷つけられ、失い、それでもなお、できることはあるのかということを、私なりに考えた結果、この物語が生まれました。


 作中、美知恵が執筆した「願望」同様、本編である本作においても私は、明確な結末を描くことをしませんでした。


 千尋が受け取った「もう一つのメッセージ」と、美知恵が伝えたかった「願い」(あるいは、メッセージ)が何だったのか。そして両者のそれは重なったのか否か。それは、読者様お一人お一人ごとのご想像にお任せしたく思います。


 場面は限定的ですが、「受け取る」とは、そういうものではないでしょうか。


 ときに人には、届かないものがある。空白がある。喪失がある。


 どうしてもそれが埋まらないとき、人はその余白と自分の間に、その答えを探り当てる。それがその人にとっての答えになったとき、客観的な成否を超えて、そこにひとつの道が生まれるのではないか。先が分からない道であったとしても。


 それが、私がこの物語を通して描きたかったことです。


 ここまで読んでいただけるとは、思っていませんでした。最初は、コンテスト自体をあきらめていたんです。理由あって、「恋愛」ジャンルは、自分の中で鬼門でしたので。弱気になったとき、くじけそうになったとき。皆様の応援が、私の力になりました。


 最後に。美知恵は、自死を選ぶ必要があったのか。


 まず、本作に自傷・自死を肯定、あるいは推奨する意図はありません。


 美知恵の死については、幸せを手にすることの難しさを、作者である私が、あのようなかたちでしか表現できませんでした。


 最終的に、「Can I fly? Maybe…….」という謎の言葉を巡り、お互いのメッセージが、美知恵のいない余白を埋め合うように閉じたこの物語。けれど、美智恵と千尋たちが美知恵の死によって隔てられている今、彼女たちの言葉は直接交わることなく、互いに「願い」として、宙に浮き続けるままです。それはやはり、悲劇であると言えます。


 しかし人は、そんな、ときに儚く、突けば脆すぎるまでの願いと共にでも、生きていくことができる存在。そして、そう願い合える存在。美知恵の生きた、あるいは千尋たちが生きる世界でのその可能性を信じ、最後のキーを叩きました。


 それをこの物語を通しての希望と取るか、そうでないと取るか。私にどちらかを選ぶことはできませんが、重ねて、読者様の感じられるままに、委ねたいと思います。


 あとがきを終えるにあたり、この物語の終わりとともに作者の手を離れた千尋たちの幸せを、願うばかりです。


「Can I fly? Maybe…….」


 皆様にとってこの一文は今、どのように映っているのでしょうか。


 また、他の作品でお会いできますことを願っております。


 重ねて、お読みいただき、本当にありがとうございました。




                                 西奈りゆ



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