1/26
プロローグ
気泡のように余白が浮かんで、はじけて消える。
気づけば私はまた、そんな場所にいた。
その空白を埋めるには、私はあまりに無力で、非力で。
だからそっと、現実の中に身を浮かべていた。
(けっきょく、私は・・・・・・)
雨が降り始めた。交差点で長く止まっていたバスが、また息を吹き返す。
横たわった硬質な動物のようなそれは、エンジンの鳴き声をあげて重い巨体を移動させる。そういえば子どもの頃、私はバスの運転手に憧れていた。
その話は、誰にしたのだろう。
私にはいったい、何が残されたのだろう。
その答えすら掴めないまま、私はあの場所に向かおうとしていた。