33旅行先
そして、もうじき地球へ一般人が行くことが可能となる。
カンタムの一件で更に地球へ興味を抱く熱が上がったのだが、それを見越した大統領が、前々から温めていた地球行きプロジェクトが遂に始動。
ゼクシィ人の旅行も可能だ。
旅行というより、散歩の感覚だけど。
ちょっとそこまで、の気分で気軽に行けるぐらい技術が違う。
「地球には既に通達している。地球人に擬態して行くように決めているから、混乱はそこまで起きないよ」
と、言われている。
大統領は超がつくほど賢いので、すでに対策はされているわけだ。
どこに行けば良いのかと言う本を出して欲しいと要請されていて、美味しい食べ物として紹介する。
私をツアーのガイド兼ゲストとしてどうかと言うものも打診されていて、それを承諾している。
ジャニクらもガイドとして指名され、私によく質問をしてくるようになった。
リーシャの記憶を渡したいくらいだ。
「記憶の取り出しは嫌だからなあ」
記憶というのは存外、穴埋めだらけというのはとっくに打ち立てられた理論。
地球開通を記念する式典にもお呼ばれしていて、地球へも通告され、宇宙人の来訪を伝えるかどうかは地球の政府に任せている。
こちらはどちらでも構わないというスタンス。
「そうだ。見てくれよ。ファンタジー武器のモーニングスター作ったぜ」
「ナチュラルに凶器作って友達に見せられるのもファンタジーだからね?」
「ん?」
「いや、もう良いよ。モーニングスターね。ゲームでもよく見る武器だね」
「おう!ゲームってまだよくわかんねーけど、あれ、面白いな。大統領がゲーム作るって8日徹夜してたぜ!」
「8日!?」
いくらゼクシィ1強くても、死ぬぞ。
「うちはゲーム作ったら最強になるよ。でも、ジャンルなにになるんだろ」
普通に考えたらRPGだ。
「でも、大統領の身体平気?」
「ゼクシィ通信では普通に見えたぞ」
心配になって大統領にメールしたら、大丈夫大丈夫と安心できないメールが帰って来る。
護衛の人達は安易に口出ししにくい立場だろうから、止めにくそう。
私が声をかけていくしかなさそうだ。
という会話をジャニクと交わした日から更に数週間後、大統領が朝から軽快なステップをしながら訪問しにきた。
相変わらずなフットワーク。
「大統領。どうしたんですか?」
「ゲーム、完成したよ」
完成したおもちゃを見せたい大人そのままの姿に、なるほどと納得し、大統領公認の披露癖を微笑ましく感じた。
「ふっふっふっ、ふーふふふふ!」
高笑いがやけに長い。
15秒ふっふ言い続けて、彼はにこにこと笑みを浮かべなおしジャーン!と披露するように、カバーをかけていたなにかを見せる。
カバーを外したのはボディーガードズ。
珍しい。
彼らは微動だにしないことが多々あるというのに。
「まさかのディスクバージョンパッケージ風」
チマっとそこには見覚えのある絵柄が描いてある、某家庭用ゲームのパッケージの形まんまのそれで、私はそこを参考にしたんだねと納得した。
形も大切にするものづくり、気持ちがすごく分かる。
「絵柄はノラえもん!名付けて!『もう一度あの空を』というタイトルをつけた、VRと呼ばれる概念を取り入れたシナリオ没入型さ!さ!さささ!」
「なんだってえ!」
リーシャは普通にびっくりした。
ゲームを作っているというから、てっきりノラえもんのキャラクターを起用したスゴロクゲームとか、ノラえもんのカードゲームとか、ノラえもんの会話が出来るAI仕込みのシミュレーションでも作るのかと予測していたのだが、予測を越えたものを完成させていたらしい。
全部ノラえもんなのは今までの大統領の趣味趣向を把握している人ならば、誰でも分かる事であった。
いやはや、大統領がドヤ顔で作り終えたのが良く分かる内容だ。
この世界でゲームを作るのは簡単だが、それでもシンプルなもの。
私も試作で作ったり、大統領にシナリオを付け足してくれと言われたことがあるが、それでもショートストーリー。
ゲームはゲームでもブックゲーム型。
VRという概念が入ってきた我が惑星はこれからもしかしたら、ゲームのシナリオに熱が起こるかも知れない。
ワクワクである。
「VR?ですか?」
「なんかよくわかんねー」
アルメイとジャニクはイマイチわかってない。
それも仕方ないというものか。
「VRっていうのはね」
と、説明しようとしたら大統領がノンノン、と指を振る。
そのしぐさ、さては地球の参考資料で得たスキルだな?
「やってのお楽しみさあ!」
「テンションがいつもより高い」
リーシャは密かにツッコミを行ったが、今の大統領はまるで無敵の何かを食べたかの如くなので、なにも反応せず、ゲームをセットして皆をフルダイブさせる。
フルダイブとかこの世界で使う日が来るとは思わなんだ。




