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活字の表現にアルメイは目が離せない。
「アルメイさん、アルメイさん」
強めに呼ばれてふと顔をあげる。
「すみません。少し見るつもりだったのですが。他にも教えていただけますか?」
と述べれば、山田はきょとりとした顔で、ついで驚きに反応した。
「アルメイさんがその本を手にしてもう5時間です。お昼ですから、昼食はどうですか?今日は五平餅があります」
5時間?
アルメイは時計を見ると確かに針が5時間分進んでいた。
私は体感で5分のつもりだったのに。
「私が、そんなに読んでいたのですか?」
「ええ。スローペースでじっくり読んでましたよ。味わうように読んでもらえて、推し活も捗ります」
「そうですか。ありがとうございます。五平餅?というものも是非食べたいです」
アルメイはこの時、放心していた。
少女は幼い時から天才と言われ、天才扱いをされていた。
天才は大体ゼクシィ大統領の関連施設に勧誘される。
大統領自体が天才なのでお姫様扱いをされないと、アルメイに合っていると思っていたが、幼馴染のリーシャがゼクシィフードを食べると、必ず泣いて倒れたりするので心配で勧誘は気にしなかった。
子供の間で天才はちやほやされるが、リーシャたちは全くしなかったし、アニメを教えられてきたので、同じ同志として一人のゼクシィ人になれる。
チヤホヤされて嫌な気持ちになったことはないが、天才だという感覚は生まれた時からあったので、わざわざ言われても反応に困るのだ。
今日は晴れだと毎回言われるのと変わらない。
当たり前の事を言われてもアルメイには意味がない。
その点、アニメの事を聞くと、アルメイなどまだまだひよっこであると分かる。
天才な自分でも、リーシャの伝えるものなど考えた事がなかった。
銀河は広い。
『見て!2人の言う通り書いてみた』
渡されたデータを見た時、彼女に書くように勧めた私は、自分を良くぞ言ったと褒めた。
『白雪姫』
毒林檎とはなんだろうと思いながらも、小人や複雑な家庭環境にドキドキした。
『おもしれーじゃん!』
ジャニクも満足げに笑顔を浮かべる。
特に魔女との死闘が気に入ったらしい。
白雪、やるじゃんとはしゃいでいた。
なお、アニメ小説でなかったのはリーシャの小説を書く表現力が弱く、自信がなかったので、書きやすい童話となる。
アルメイは五平餅を平らげて、山田から五平餅セットを貰い、スカエヴァもセットでもらった。
その足で、自身の部屋へ直接帰省。
***
アルメイが無事に帰ってきたとアルメイの母から連絡があり、アルメイはきっと夢中になっていて連絡出来ないんだろうなと察した。
大統領がノラえもんミュージアムを案内してくれた時の事を思い出して、ミュージアム行こうかなと、ミュージアムへ行くことにした。
入り口に向かうと相変わらず、デカい。
「やっとプライベートで入れそう」
2回も大統領直々に案内されて、なんとなく知った気になって、行かなかったという理由。
改めて見るとゼクシィ星全体から、どこでも見られるくらいデッカいんだ。
ノラえもんまんまの本体がドカンと立っている。
いやー、やっぱ権力者が絡むと石像みたいに打ち立てられちゃうんだね。
「ノラえもんミュージアムとどこにも書いてないけど、誰でも知ってるラウンドマークだからね」
ゼクシィ以外から星に来る観光客が居るのだが、その人達はその規模に度肝を抜かれるところがよく目撃されている。
「大統領の部屋があるって噂、本当かもしれない」
一部屋あるのが普通だと言わんばかりに広いから。
「あっ」
聞こえた声に向くと、こちらを見ている子が居て、ノラえもんの漫画を持っていた。
「にょわあ!作者のリーシャだあ!」
「ええ、どこ!?」
「生作者!?どこっ」
「リーシャ様がいるの?」
「きゃあ!雑談したーい」
「おおう」
呟きが漏れる。
一番初めに見つけられた人に詰め寄られて、近くにあるノラえもんベンチに座らされる。
「騒いでごめんなさい作者。私シャラって言います」
幼児フェイスでぺこりと頭を下げられて、構わないと首を振る。
「つい嬉しくて舞い上がって」
「ファンの方はみんな大体同じ感じなので、気にしませんよ」
はは、と笑みを浮かべていれば相手も安堵の笑みを浮かべる。
「漫画を眺めながらノラえもんミュージアムに浸っていたらリーシャが居て驚きました」
「シャラさんも大ファンなのですね。私も個人的に来たの初めてなんです」
「初訪問?でも大統領ちゃんねるで大統領と回ってたよね」
「あれは招待されて、接待されたので、私が自分の意思で来たカウントになってないと思って、来ました」
「あんなに楽しそうにしていたのに」
「初めから最後まではしゃいでいたのは大統領なので、記憶違いだと思います。はしゃぐ子供の保護者の気持ちになってたので、冷静だったと私は思ってますが」
「確かに、作者と大統領のコラボ動画って親子みたいな空気かも」
「クッキングもなかなか無茶をやる子供を見てた気分でした」
「わわ!クッキング&雑談動画の振り返り感想っ。きゃ、生で聞いちゃった。私、運使い切ったかも〜」
ジタバタする子を見ていると頭にリボンのカチューシャをつけていて、首にはメロンパンの首飾り。
ファッションにピンときた。
「ノラみちゃんを特に推してるよね」
指摘するとシャラは煌々と目を光らせてこくこくと頷く。
「気付いてもらえて嬉しい。ノラみちゃんは私の最推しなんです」
ノラえもんの妹、ノラみ。
好物はメロンパン。
「あのお、ダメなら言って欲しいんですけど、一緒に回りたいなーって」
「ふふ。良いですよ」
「へえ!?ほ、本当ですか?」
「はい。何度も行くことになるでしょうから、次に1人で行けば良いだけです」
拡張前のミュージアムだって行っているもん。
「はわああ、今日来てよがっだー」
泣きかけているシャラを行こうと誘い、中へ。
「拡張後のミュージアムに来るの二度目なんです」
「控えめですね」
感想を表明した。
ジャニクとか、何回も行ったぜ、とか言うのだが、住んだら良いんじゃないかと言いたい。
「アニメを見ていたら行く時間がなかったもので」
あー、話数多いからねー。
思ったのは、この子もゼクシィの人だなあってほのぼのした。
「シャラさん。進みましょう」
「ハイ。あ!ノビノビのゼロ点答案用紙」
ガラスケース入りの答案用紙を見て、これはいわゆる黒歴史だよ、と大統領に突っ込んだ。
人の答案用紙を飾るなんて人の心はないんかい?
初めて見たときからずうっと、思ってたんだよね。
いくらアニメでも2次元であろうと酷すぎる。
私だったらガラスケースを叩き割るね。
でも、大統領はキャラを愛しているから、ゼロ点を毎回取るノビノビですら愛おしそうに語るんだもんな。
もし大統領が私の答案を飾るなんてことをしたら……取り合えず、大統領のことを一週間眠らせよう。
強い大統領に勝てるビジョンが浮かばぬ。
大統領本人ではなくて、先ずは小手調べで大統領の愛読書を2つ焼く。
眼の前でじっくり弱火で。
想像なので燃やしてないよ。
「ふふ、可愛い。毎回テストゼロ点のノビノビくん可愛い」
「かわ、いい……?」
それは共感したことないな。
可愛いというより、不器用な男子の印象。
可愛いのはゼクシィ人である。
ぷにぷにしてるから。
「向こうにノビノビママの怒りポイントが載ってます」
載っちゃってる。
これもこれで晒されている感。
ノビノビパパのゴルフ日和という原寸大シーンが有る。
科学を超えているゼクシィに展示されるそれは、動いていた。
「凄い。あっちにはノラえもん映画ねじ巻き巻き大冒険の原寸大フィギュア!」
「あれは、カチカチ映画版の空間映像」
名場面を空間で立体にして、まるでその場に居るような体験が出来る。
「凄い。凄い。大統領は星を誇るノラえもんファンだ」
「それは、うん……うん」
皆んなおんなじテンションなんだよなぁ。
ほのぼの、ほくほく。
語る子は尊いのだ。
「次の場所に行くとシスカちゃんのお風呂シーンです」
「人権とかないんか?」
大統領よ、貴方に人権を考える余地はなかったかい?
シスカちゃんの扱いが超絶可哀想。
ただでさえ、ノビノビ達にかなりの頻度で見られてしまっているというのに。
挙げ句、私達に大公開されちゃってる。
大統領極まってるな、本当に。
「あ!シャイアンのコンサート会場です」
「大統領、遂にそこまで来たのか??」
シャイアンのコンサートって狂気の域でしょ。
皆これ嬉しいの?
え、本当に?
シャラを見ると頬を真っ赤にして大歓喜していた。
大歓喜するレベルなんだ。
私はその域には達してないや。
シャイアンもシスカも黒歴史というか、なんというか。
人の黒歴史を見てしまったときって、居合わせた側は凄く気まずいよね。
「きゃあ!見てください。ノラえもんが恋人未満の猫達に告白しようとするシーンですよ。恋多きノラえもんを実に良く表現されてる」
「そんな酷いことある??人の心はどこにあるんだろう?私だったら川に飛び込んでる」
結局、その猫達に振られてるのを皆読んでいたりするから知ってるよね?
知られたくない過去なのでは。
大統領の感覚が普通よりズレてるんじゃないかという説が浮上した。
「もう少し良いシーンとかあるでしょ。それにしたらいいのに」
「ノビノビくんのあやとり講座です」
「ホッ」
やっと、黒歴史ブースを超えたみたい。
あやとり講座はノビノビくんが立体で動き、声で教えてくれる。
声優なしで、元々ある音声で自由に言語を喋らせる事が出来るゼクシィの技術。
ノビノビくんの声優さんは忙しいだろうから、という大統領の優しさだろうか。
そこは、ゼロ点とかシスカのお風呂に回してあげてよ。




