88.進み出るラストボス
刺客、と見せかけて囮だった四人はぎりぎりと連れて行かれた。本命刺客さんは……今捜索中か。まあ、あの手の人は逃げるのも隠れるのも得意そうだしなあ。
「周辺の警戒と、侵入路の確認を急げ!」
「侵入者の尋問急げ。穴を吐かせろ」
聖騎士部隊もそれぞれに動いてる。ゲルダさんやエイクは私たちのお付きなので、当然ここで警戒中。他にも数名が残ってくれている……まあ、かなりの確率で聖女狙ってきたもんね、あれ。
「エンジェラ様、キャルン様」
「コートニア様!」
「まあ、セーブル様も」
おや。コートニア様が、お付き連れてやってきた。つか、セーブルさんも一緒だ。こっちの騒ぎを聞きつけてやってきた、ってところだな。
「こちらの事情は既に伺っております。大丈夫でしたか?」
「ええ、キャルン様が守ってくださいましたので」
「またですか!」
「また?」
あーいやコートニア様、怒るところは多分そこじゃないと思うんですが。セーブルさんが不思議そうに首を傾げてるのは放置ですか、あんた。
「キャルン様は、ご自身を守ることを第一にお考えなさいませ! そうでなくば、おつきの騎士の存在意義がございません!」
「……えと、そっちですか」
「そちらですわ。わたくしどもは、ピュティナ様のような例外を除けば自身を守る力などございません。そのための聖騎士部隊なのですよ?」
何か、畑の畝潰したときにお母さんに怒られた以上のレベルでめっちゃ怒られてる私。はいすみません、と言ってもやっぱり私よりエンジェラ様のほうが大事だと思うんだけど。いや、癒やしの能力は重要だけどね、今戦の真っ最中だし。
「まあまあ。コートニア様、落ち着いて。キャルン様がびっくりしてるじゃないか」
「失礼ながらセーブル様。自分の言いたいことを、コートニア様がおっしゃってくださっております」
「そうなのかい?」
間をとりなそうとしてくれたセーブルさんに、エイクが口を挟んでくる。くっ、お前さんもそう思っていたのかってそりゃそうか。私のおつきなんだから、私を守るのが任務だもんな、エイク。
「……ええと」
「キャルン様の専属騎士を務めております、エイク・カリーニであります」
「なるほど。……君の守護すべき聖女は、自分の身を顧みない無茶な人だってことだね?」
「そういうことになります」
っておい、そこ。確かにそう言われても仕方のないことなんだけど、特に聖者。全力でぶっちゃけるなよなあ?
「ほら、エイクもああ申しているではありませんか! わたくしも一度守られた身ですから申し上げますけれど、正直なところわたくしのせいであなたに死なれたらどうしようかと思いましたのよ!」
「コートニア様。そのお気持ち、今ならわたくしも理解できますわ」
「そうですわよね、エンジェラ様!」
がしっと、コートニア様がエンジェラ様の手を握った。うわあ、聖女連合というか何というか、爆誕。
でもでも、やっぱりそばにいる人が危ないって思ったら、私はかばうよ。多分、コートニア様……はどうかわからないけれど、エンジェラ様はそうすると思う。
まあ確かに、私は私自身をあんまり大事に考えてないとか思われても仕方がないけれどね。これでも、『のはける』みたいに最終的にざまぁされて因果応報な結果にならないようには気をつけてるんだけど、それはそれ。
「……ごめんなさい。今後は気をつけます」
ともかく、もう少し慎重に行動したほうがいいのは事実っぽいので、頭を下げることにした。まあ、また次なにかしたら怒られるんだけど、ねえ。
そんなふうに、意識が内側に向いていたので。
「やっと見つけた。キャルン・セデッカ」
「!?」
いきなり呼ばれた自分の名前に反応するのが、一瞬遅れた。エイクとセーブルさんがいなければ、伸ばされた手は私を掴んでいたと思う。
「はじめまして、愚かになるはずだった聖女」
「……スヴァルシャの魔女、か」
私を背の後ろにかばってくれたセーブルさんの向こうで笑う真っ黒なそれが、どうやらラスボス、なのかな。
そう、私は感じた。




