83.先を目指すはワレラ
挨拶を済ませた後、私たちは今後の予定を聞いた。まあ聖女は基本的に援護なので、部隊の後ろからのこのこついていく形になるんだけれど。
「守りはお任せくださいませねえ」
「ピュティナ様の結界の力、頼りにしております」
例外は結界を張るピュティナ様なんだけど、彼女はそもそも戦力に数えてもいいからなあ。そのあたりは、魔帝陛下ご存知……だよねえ。セイブレスト辺境伯、ご先祖様が帝国軍と殴り合った歴史があるはずだし。
ま、それはそれとして。
「スヴァルシャ別邸、及びその周辺にあるスヴァルシャ領は帝国領土だが、此度の討伐作戦においては特例として王国軍部隊の進駐を認めている。もちろん、愚かな行為をしでかせばこちらの法のもとに裁くことになるが」
「まあ、当然でしょうね。ただ、軍人としての裁きについてはこちらも関与させていただくことになっているのでしょう?」
「それは無論だ。それと、帝国側の者が王国側に不届きを働いた場合も同様に裁くことになるな」
魔帝陛下とエンジェラ様が、何というか難しい話をしている。要は作戦の関係で帝国領内に王国軍が入ることになるので、そのあたりの話なんだろう。帝国と王国が戦争してるならともかく、今回共同作戦だもんね。ただ。
「む、難しいです……」
「ああいうお話はあ、司令官閣下とエンジェラ様やガルデス様にお任せすればよろしいんですよう」
「そもそも、キャルン様にはご縁のないお話でしょうしね。できることはできる者に任せればよいのですよ」
「は、はい」
聞いててよくわからなくなってしまったので困っていると、ピュティナ様やコートニア様がそういうふうに言ってくれた。うんまあ、生まれつき貴族のご令嬢ならともかくその日暮らしの平民には縁がない話だもんなあ。
『のはける』のキャルンは、そういうことも全く知らずにフランティス殿下とくっついたんだろう。自分に理解できないことは周囲に丸投げ……するのは悪くないけれど、自分の欲求のためにお城と、国の中を混乱させて。
「まあ、私はお祈りして怪我した人を治すことしかできませんしね」
「そのとおりだ」
おっと、思わず呟いたセリフに恐れ多くも魔帝陛下がお答えくださった。やべえ……ああいやいや、楽にしていいって言ってくれてるんだけどさ。
「戦は我ら軍人がやるべきことで、政は王家やその周辺の役人がやること。そなたら聖女は、戦場に於いて各々の能力を使っていただくためにおいでいただいたのだ」
「は、はい」
うん。帝国のトップにそう言ってもらえると、何というか安心できる。これで軍の先頭に立って味方を煽れ、とか言われても困るもんなあ。そんなことできるかっての。
「わたくしは解呪が強いですが、傷を治すことも少々ならできますわ」
「……わたくしは解毒ですからね。以前キャルン様に守っていただいたこともございますが、わたくし自身が毒を受けるわけには参りませんわねえ」
エンジェラ様とコートニア様が、それぞれに考えを巡らせる。うん、コートニア様が毒食らったら大変だもんなあ、と前のことを思い出してみる。今は聖騎士部隊の人たちが守ってくれると思うんだけど……ええいドナン・カリーニ、顔見たらぶん殴る。多分ダメージ通らないけど。
「まああ、いざとなればわたくしは戦えますけれどもお」
「セイブレストのご令嬢に登壇いただくまでもございません。聖騎士部隊の力、お見せ致すことにしましょう」
「隊長は後ろでどっしり構えていてください。自分が先鋒を務めます故」
「王国の騎士にばかり、戦わせるわけには行かぬからな。我が帝国軍の力も、存分に見ていくがいい」
当人ががっつり戦力となれるピュティナ様とガルデスさん、ラハルトさんに魔帝陛下はもう、いつでも敵を殴る態勢に入っているようだ。
大丈夫なのかなあ、と一瞬だけ考えたんだけど……ま、『のはける』みたいに双方の軍が正面からぶつかるとかじゃないから大丈夫だよね。うん。




