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82.身内の恥をデリート

「良い、皆楽にせよ」


 魔帝陛下のお声に、私たちはやっとのことで立ち上がった。いやいやいや、さすがにいきなり帝国のトップと面会とかないわー。ガルデスさんの意地悪。つーかこの場にいないし……ラハルトさんはいるから、彼に任せて逃げたな。


「この場には帝国の長としてではなく、軍部隊の司令官として来ておる。そなたらも、そのつもりで対応していただきたい」


 陛下はそう言ってくれたんだけど、私にとってはどっちにしろ雲の上の人だわ。いや、『のはける』だと私がエンジェラ様とくっついた陛下にざまぁされる役割なんだけど。


「陛下がそうおっしゃるのであれば」

「閣下、だろう?」

「司令官としてのご身分であれば、確かに閣下ですわね」


 そこへ行くと、さすがはエンジェラ様だ。当然のようにそう言って、呼び方を変える。なるほど、司令官だと閣下なのか。間違えないようにしないと、失礼だよね。


「……そこのそなたが、平民出の聖女殿か」

「へっ」


 あ、変な声が出た。いやだって、魔帝陛下が私をピンポイントで呼んでくるなんてさ、こうまるで、『のはける』の終盤みたく貴様は処刑だとか何とか言われるときくらいで。


「きゃ、キャルン・セデッカです。はじめまして……えっと、お初にお目にかかります」

「言い直さなくていいぞ。平民であれば最低限の礼儀はしっかりできていよう、問題はない」


 思わず普通に挨拶をしてしまってから、貴族の礼儀でやり直そうとして止められた。あああああ、魔帝陛下が心の広い人でよかったあ。狭い人だと無礼だ、と殴ったり抜剣したりする人もいたりするって聞くからなあ。


「お、おそれいります」

「何、平民と貴族では様々な面で違いがあるからな。生まれ育った環境とは違うところに放り込まれて、大変だったであろう」

「あ、いえ。エンジェラ様や聖女の皆様、それにフランティス殿下も良くしてくださってますので」

「なるほど。さすがは聖女、そして未来の王とその妃ということだな」


 ……そういえば『のはける』の魔帝陛下、割とさらっとエンジェラ様を受け入れてたもんなあ。

 元々優しい人で、ただし敵には容赦ないこともあって魔帝、なんて呼ばれてたんだっけ。一族郎党、そういう性格なのでまるっとひっくるめて魔帝家とか言われてたわけだ。

 それが、この現実では私に向けてもらってる。いや、エンジェラ様が帝国に亡命してないからだけど。


「……まずはそなたらに、謝罪せねばならんと思うてな。こちらの司令官には既に頭を下げてきたが」


 そんな事考えているうちに魔帝陛下が口にした言葉に、私たちは一斉に凍りついた。い、いや魔帝陛下ともあろうお方が、私たちとかガルデスさんとかに頭を下げることなんて、ないと思うのだけれど。


「スヴァルシャの魔女は、我が帝国の暗部が生み出した存在と言っても良い。それが帝国のみならず、グランブレスト王国にまでその手を広げたのだからな……帝国を代表して、謝罪はせねばならんだろう」


 あ、いや、魔帝陛下が頭下げてるマジかー。ついラハルトさんの方に視線だけ向けたら、単純に呆れ顔をしていた。ああ、ガルデスさんのときにも一緒にいたんだなあんた。お疲れ様。


「しかも、聞けばそちらの聖女の一人とそのお付きを手中に収めたとか言うではないか。何とも愚かなことを、身内がしでかしてしまったものだ」

「失礼ながら。魔女はお身内の方なのですか?」

「一応、遠縁でな」


 コートニア様がずばり尋ねたのに、魔帝陛下もずばりと返す。あーそーか親戚だったっけ、そんな描写あった気もする。だからこそ、帝国内部で権力がないことをすねてたのかもなあ。知らんけど。


「こちらから挨拶に出向いたのも、そういう事情があってのことでな。まあ、身内の恥を片付けに来たわけだ」


 そう言って魔帝陛下は、苦笑を浮かべた。あーやっぱり、ヒーロー張るだけのことはあるわこのイケメンめ。くそう、『のはける』の記憶がなければ惚れてたなあ、私。

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