79.聖女と魔女のバトル
私やセーブルさんが持ち帰った情報、刺客さんや捕虜の皆さんが口にした情報。
それらの情報を乗せた書簡が、帝国に向かう。紙の束が国境越しに数度往復した後、国王陛下は結論を出した。
「ワリキューア帝国軍との合同作戦として、スヴァルシャの魔女とその配下の撲滅に当たることになった」
「まあ、そうなりますわよね」
「どちらの国も、長が狙われたことになりますからね」
私たち王都にいる聖女が出向いた謁見の間で、陛下のお話を伺ったエンジェラ様とコートニア様は至極納得という感想を述べた。
ま、そりゃそうだよなあ。魔女は国境地帯にいるっぽいし、そうすると王国軍だけが出撃した場合に帝国侵攻を企ててると思われても仕方がない。向こうとしっかり連絡取らないと、逆パターンもあり得るし。
というわけで、王国と帝国が組んで魔女とその配下共を叩き潰すわけか。たかだか一貴族、とは言ってられないわよね。魔女と名乗る彼女、聖女と同じくらいには何かすごい能力持ってるっぽいし。『のはける』ではそのへん、あんまり出てこなかったけれど。
「向こうからはスヴァルシャの魔女が、こちらからは聖女スクトナとドナン・カリーニが主だった敵として上がっている。互いに滅ぼさねばならぬ敵として、魔帝陛下との意見は一致しておる」
……うん、すっかり忘れてたな、スクトナ様とドナンさん。そう言えばつかまったって連絡入ってないんだもんな。
おそらくあの二人ははもう、魔女と合流してるんだろう。戦力になってるかなってないかなんて私に分かるわけないけれど、なってることを前提に考えたほうがいいよね。
「……と。ドナンはカリーニ家の籍を剥奪したのであったな」
「あ、はい」
王家に歯向かったスクトナ様を牢から助け出して逃げちゃった時点で、ドナンさんは実家から見捨てられた……つーか、うちの子じゃありませんってことにしないとカリーニ家が大変だもんな。エイクも含めて。
戦場で会ったら敵、ということになるのか。ああもう、コートニア様に殴る機会与えてくれるといいな。
「それで、だ」
国王陛下の一言に、私たちは改めて向き直った。聖女みんな呼ばれたってことは、魔女をやっつけるために私たちの力がいるってことだよね。
「スヴァルシャの魔女、そして聖女スクトナが布陣することを鑑みて聖女の皆には出陣を願いたい。特に聖女ピュティナには、前線の守りを任せたいのだが」
うわ、これ本気で全員出てくれってことだよね。もちろん、こういう世界で国王陛下の命令にそうそう逆らえるわけがないので、行くしかないんだけど。
というかさ。
「はい、お任せくださいませえ」
「敵方が毒を使ってくることは分かっておりますから、当然わたくしの出番ですわね」
「戦だと当然怪我はしますから、私も出番がありますよね」
「スヴァルシャの魔女が呪いを放ってくる可能性は十分ございますから、そうなるとわたくしですか」
私も含めて皆、自分の能力は把握してるので既に役割分担が出来上がっている。幸い私は癒やし担当なので、最前線に出るのはほとんどないと思う、多分、メイビー。自分でフラグ立てた気がするけど、気にしないことにしよう。
「無論、王国軍部隊にも医療部隊は存在しておる。負傷も毒も呪いも、それぞれに専門の術師がおる。守備結界とて、専門ではないが得意とする部隊がある」
国王陛下は、私たちをまっすぐに見ながらそう言ってくる。それでも、私たちに出てほしい理由が、その先にはあるのよね。
「だが、聖女の存在はそれ自体が軍への鼓舞となり、我が兵士たちは勇気づけられる。……済まぬが、理解してもらいたい」
「それに、敵は魔女という我らには未知の存在、ですものね。わたくしどものような聖女が、立ち向かわねばなりませんわ」
陛下の言葉に続き、エンジェラ様が凛とした声でそう言う。うん、魔女とは対立する立場なんだろうしな、聖女って。
だったら私たちは、頑張るしかない。




