76.魔女の能力実はロー
ミッチャさんの話を聞いて、あの部隊長とかいう女性の顛末は理解できた。
「いずれにしろ、魔女による口封じと見て間違いありませんね」
「ええ」
セーブルさんもそういう結論に達したので、お互いに頷き合う。もしかしたら彼女はこの後、あんまり長くないかもしれないなあと思ったのは私だけかな。はて。
「ミッチャといったね。君は、自分の口を封じられるのが怖かったのかな」
「怖いと言うよりは……我々は結局、国にとっても魔女様にとっても捨て駒でしかないのだな、と感じました」
淡々と問うセーブルさんに、ミッチャさんも何か諦めたような表情で淡々と答える。まあ、自分たちのリーダーがあんなふうになったのなら怖い、と思ってしまっても仕方がないよね。
「もっとも、少なくとも君は魔女にとっては取るに足らない存在のようだけれどね」
「お亡くなりになっていませんものね」
「そのようですね……いえ、まあ正直ホッとしています」
というかセーブルさん、なんとなく本人もわかってたようだけどそこまではっきり言うのはどうだろうね、と考えつつ同調しちゃったのはごめんなさい。ミッチャさん自身も、生き延びられて助かったという感じだし。
「……ちなみに、他の方々は大丈夫なんでしょうか?」
「特にそう言った情報は来ていませんね。暗殺未遂は五回ほどありましたが」
ミッチャさん以外の人たち、除く部隊長さんもとりあえずは大丈夫っぽい。大丈夫じゃないのは……てーか暗殺かよ。お城以外にも暗殺者いるのかよ、と思ったけれどもしかしたら構成員の中にいたのかもね。
「未遂ですか」
「全員捕縛して隔離済みです。ま、他にもいるかも知れませんがね」
セーブルさんはさらっと答えてくれたけれど、暗殺者って捕まえにくいと思うのよね。セーブルさんがピュティナ様みたいに勘が良かったりしたら、待ち構えて聖者の力でぶん殴って捕まえるとかやったのかな。
セーブルさん以外にも、近衛隊の人たちにも強い人がいるんだろうか。国王陛下の直属部隊だったはずだし、そりゃいるよな。
と言うか、それ以前の問題として。
「派遣部隊に暗殺者混ぜ込んで、情報漏れそうになったら殺しに来るとか……効率悪いですね」
「悪いですな」
「こう言っては何なんですが……仲間になった時点で全員に術かけたほうが、てっとり早いですよね」
「それができれば、そうですね」
うん、セーブルさんの言うとおりだ。配下とかに全部同じ術をかけておいて、情報漏らしたらおかしくなったり死んだりするようにしといたほうが簡単だし早かろう。
それをしない、ということは。
「魔女さん、そこまで能力高くないとかですかね?」
「多数相手に術をかけるのが得意ではない、かもしれませんね」
「もしくは限度がある、とか」
「魔女様のことを馬鹿になさらないでください!」
おっと。セーブルさんと魔女の能力について考えてたら、ミッチャさんに怒られた。いや、あなた多分その魔女に見捨てられたんだけど。
あくまでも魔女に対しては敬意をお持ちのままらしいミッチャさんに、セーブルさんはやっぱりはっきりと言ってみせたんだけどね。
「馬鹿にできない能力であれば、今頃あなたはあの部隊長と同じか……更にひどい状態になっているはずだが」
「っ」
そう。私が言ったようなことをできるほどの能力を持つ魔女であれば、今頃ミッチャさんはげらげら笑い続けていたか……呼吸もしなくなってたか。
そこまで行かなかったおかげで自分は助かっているのだと、改めて理解したミッチャさんの顔は真っ青になっていた。ま、どちらにしろ明日は真っ暗だね、この人。
「疲れただろう? ここはもういいから、ふたりとも休みなさい」
セーブルさんの言葉に、私とミッチャさんは同時にほ、と胸をなでおろした。多分、どっちも緊張していたのよね。




