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69.王太子と聖女サリィ

 ずずずずず、という地響きは、割とすぐに消えた。揺れもなくなったので私たちは、よっこいしょと立ち上がる。


「レックスう」


 ぱんぱんと両手を払いながらピュティナ様は、自身のお付きである少年の名前を呼んだ。「はい」と挙げられた声は執務室の隅から……うん、お付きの皆さんあそこにいるんだよね。もし何かあった場合に必要な戦力として。

 で。


「王都の外からですね。次弾装填は……あっても時間がかかりそうですが、位置確認と五分かと」

「だ、そうですわ。陛下」

「情報提供に感謝する」


 おーい何だこのチート聖女アンドお付き。

 いやまあ、多分今のは王都の外からの魔術による攻撃で、それをピュティナ様がご自身の守りの力で防ぎきっちゃったんだと思うけど。

 それをあっさりやってのけたピュティナ様と、見えてもいないのに状況やら何やら把握しちゃったレックスくんと、それを当たり前っぽく考えている国王陛下とその他の皆さん。あー、チート能力見せつけられたモブの気分だ、私。

 ……国一つ潰したヒドインよりはマシか、うん。


「誰かある!」

「はっ!」


 陛下が呼ばわったことで、別の兵士さんがやってきた。制服からして近衛兵の人だな、国王直属軍。


「今の衝撃、王都の外からの魔術攻撃と聖女ピュティナが推定している。騎士レックス、方向は指示できるか」

「お任せください」

「よし。では聖女付き騎士レックスの指示に従い、敵軍の位置を確認せよ。近衛軍第一部隊を動かせ」

「仰せのままに!」


 おう、さくさくと指示が出た。さすがは国王陛下、と感心している間にレックスくんはピュティナ様に向かい、きりっと直立不動の姿勢を取る。


「ピュティナ様、行ってまいります」

「はあい。気をつけてくださいませねえ」


 深く頭を下げて、近衛兵の人と一緒に出ていくレックスくんをのほほんと見送るピュティナ様。でもその目は笑っていなくて真剣で、だからいま起きたことは現実なんだと私は自分に言い聞かせた。


「聖女ピュティナ、王都の守備を任せる。好きな場所に移動の上、その力を奮ってもらおう」

「任されましてございますう」

「聖女エンジェラ、聖女コートニア、聖女キャルン。そなたらには、負傷者の手当を頼む。王都は無事であろうが、敵軍との戦において傷を負う者は必ず出よう」

「承知いたしました」

「はい」

「わ、分かりました」


 テキパキと指示をくださった国王陛下に対し、私たちは一斉にカーテシーを披露する。これが軍服とかなら敬礼だったりさっきのレックスくんみたいに頭下げたりなんだろうけれど、聖女としての正装はゆったりとしたシンプルなドレスだし。


「フランティス」

「はっ」

「聖騎士部隊と連携し、聖女の守りを固めよ。そなたが前に出る必要があれば、ガルデスと共に参れ」

「仰せのままに。国王陛下」


 そうして陛下は、自分の息子にも命令を下した。王太子フランティス、今の状況なら一番頼りになる配下だものね。

 殿下もそれを理解しているのか、当然のように頭を下げた。

 いやもう『のはける』キャルン、この賢い王太子殿下をあの色ボケ馬鹿野郎によくも作り変えたよな。すごいと思う、いや私といえば私だけど。


「ゲルダ・ウーラ、エイク・カリーニ。本来の任の通り、聖女エンジェラと聖女キャルンの身を守れ。フラット・ロール、着任して間がないが聖女コートニアの守護は任せたぞ」

『拝命します!』


 ゲルダさんとエイク、そしてドナンさんの代わりにコートニア様の護衛として入ってきた女性騎士が一斉に敬礼した。

 ロールって、どこかで聞いたことがあるなあ。ま、いっか。ゲルダさんがガルデスさんの妹だったり、ドナンさんとエイクが兄弟だったりするから、多分どこかで兄弟姉妹と会ったことがあるんだと思う。

 そんなことは、敵襲が落ち着いてから考えればいいものね。

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