68.宣戦布告即アタック
スクトナ様がドナンさんと逃げて二日後。私たち聖女は、全員揃って国王陛下の執務室に呼び出された。
謁見の間じゃないのが、何というかいやーな予感である。つまりおおっぴらに言えない話ってことだからね。
「聖女の方々に来ていただいたのは、他でもない」
国王陛下も同席しているフランティス殿下も、顔がかなりこわばってる。思わず姿勢を正した私たちの前で陛下は、確かにおおっぴらには言えない話をしてくれた。
「ワリキューア帝国においてスヴァルシャ家が、我が王国においてグランビレ家が、同時に独立を宣言した」
『は?』
「両家は手を結び、それぞれの領地を合併させて魔王国と自称している。さらに帝国と王国それぞれの真なる長を名乗り、双方に対し忠誠を誓うよう通告してきた」
『はあ!?』
いやいやいやいやさすがに無茶じゃないか?
魔女のいるスヴァルシャ家、スクトナ様のグランビレ家が手を組んで、帝国とも王国とも違う別の国を立ち上げた……まではいい。それでどうして、こっちに従えとか言ってくるのかなあ。
というか、さ。
「あの、それって要するに王国と帝国に宣戦布告してきているも同然ですよね?」
「そうだね。スヴァルシャは魔帝家に反感を持つ家だし、グランビレはあくまでもグランブレスト王家の分家でしかない」
私がぶっちゃけてみせると、殿下がはっきり頷いてくれた。だよねー、要はその二つの家がそれぞれの国に対して反乱起こしてる、ってことだもんねえ。
「しかも、勝てない戦であることは明白ですわね」
「あちらはあ、そうお考えではないわけですわよねえ? そうでなければあ、おかしなことをおっしゃって来ませんものお」
コートニア様がまなじりを吊り上げ、ピュティナ様は相変わらずの口調なんだけどやっぱり目が笑ってない。この人、こういうときが一番怖い……絶対敵にはなりたくない、うん。
でも、そうか。向こうが勝つ自信でもなければ、独立だの忠誠誓えだの言ってくるわけないよね。さっさと姿を隠したほうが、得ってもんだ。
「そう言えば以前、スヴァルシャの領地内で山火事や爆発が増えているというお話がございましたが」
「おそらくは強力な魔術や兵器の実験だったのであろう、というのが以前からの見方だったがな。どうやらこれで確定のようだ」
エンジェラ様が言ったネタ、すっかり忘れてたなあ。そうか、そういうことなら……っていや、それでも勝てるのか? 向こう。
……ああ、そうか。正面から戦争しなければ、勝てるかも、か。つまり。
「一応、城内をくまなく調べさせてはいる。王都も調査はしているのだが……こう言っては何だがさすがは我が国の都、広くてな」
「魔術や兵器が仕掛けられていると、発見は難しいということですか」
「そういうことだな」
お互いの会話で事情を理解して、エンジェラ様と陛下の顔がものすごく険しくなる。
正面から戦争したら勝てないから、向こうの人たちはそれぞれのトップの首を取りに来る。要は国王陛下と魔帝陛下、だね。
「もしい、外から撃たれたらあ、わたくしが何とかできますけどお」
「聖女ピュティナには苦労をかけることになるな。できれば、その前に対処したいのだが」
「無理っぽいですよお? そのへんにつかまっていてくださいねえ」
陛下の言葉に軽く首を振って、ピュティナ様が天井の方を見上げる。手を掲げたのが合図のように、私たちは一斉に床にしゃがみこんだり椅子につかまったりした。
「さん、にい、いち、着弾っ」
ずどん! びりびりびりびり!
「きゃっ!」
「うむっ!」
激しい衝撃が、お城全体を揺らしたんだろう。ぐらぐらと揺れる室内で、ピクリとも動かず仁王立ちになっているピュティナ様がひどく頼もしく思えた。




