62.不明者はパラディン
「他の目的と言われましてもお、どんな目的なのか見えないですわねえ」
相変わらずの間延びした口調ではあるけれど、ピュティナ様の表情は真剣なものだ。
いやほんと、警戒レベルが上がってるお城の中で騒ぎを起こして、セイブランやらグランビレやらは何をしたいんだろう。被害者の一人としては首謀者の顔をぶん殴りたいわけなんだけど、それは理由や目的を聞いてからにしたい。
「何と申しますか、本来の目的を達成できない愚か者がヤケになっているように思えますわ」
「状況が状況だからね。帝国側とも連絡を取り合いながら警戒や調査、摘発を行っているんだ」
ま、そうだよね。敵が国境越えて連絡取り合ってるんなら、こちらも同じようにやらないと。
と、摘発ってことはある程度確保はしてるのかな?
「じゃあ、あちら側で言うところの反体制派の方々も」
「だいぶ検挙されているみたいだよ。もちろん、こちらでもだけど」
「では、自暴自棄になってしまわれていてもおかしくはないですわね」
「うん」
聞いてみたら、どちらもとっ捕まえてはいるようだ。エンジェラ様の言う通り、仲間がぐんぐん減らされてる連中がヤケになって無謀な攻撃に出てきている……のかも。
「さすがに、スクトナの身柄も押さえさせてもらってるよ。彼女は自分は関係ない、って叫んでたけどねえ」
うわ、スクトナ様まで捕まえちゃったのか。ということは、ある程度証拠は揃ってるのか。そうでなければ大公家の娘、しかも聖女を捕まえるなんてことはしないだろ。
……『のはける』では、それに近いことをほぼ何の証拠もなくやらかしたわけなんだよなあ、キャルンと殿下。いくら物語とはいえなんてことをやらかしたんだ、キャルンは!
「では、グランビレの容疑が?」
「家自体はもうちょっとなんだけど、コートニアとキャルンを狙った刺客の雇い主にそれを命じたのがスクトナ、ってところまでは分かったよ」
「つまり、直接雇ったのではないわけですね」
「直接の雇い主はグランビレの元使用人だよ。スクトナとは古い知り合いでね、爺やとお嬢様という関係だったそうだ」
エンジェラ様、さすがというか短い言葉で殿下から色々聞き出してる。そっか、スクトナ様の爺やさんがあの刺客さんとかを雇ったのか。しかし、そういう人ならなかなか口は割らないと思うけれどなあ。
「そういうお方があ、命令の主をおっしゃるとは思いませんけれどお」
「うん。なかなか口を割らなかったんだけどねえ、カマをかけたら一発だってさ」
「ああ、スクトナ様にい、証言いただきますわあとか何とかおっしゃったのですねえ」
あのね、ピュティナ様。考えることが同じなのは分かるし、多分あなたとしては柔らかくおっしゃったと思うんですけれども……口調がそれなのに眼光が鋭すぎて思いっきり臨戦態勢なせいで、怖くて仕方がありません。
というか、元使用人相手ってことは取り調べた人絶対、遠回しにもっとひどいこと言ってると思うんだよね。いや、案外遠回しじゃないかもしれないけれど……現場見てないから、断言はしない。その程度には、この国の身分制度は人と人を区切っていることだけは確かなんだけど。
「スクトナのメイドや護衛役も既に押さえてはあるんだけど、一人見つからないやつがいてね」
「一人、ですか? ……もしかして」
「うん、コートニアの考えた相手で合ってると思う」
スクトナ様周りで見つからない一人、コートニア様が思いつくような相手。
あーもしかしてー。
「ドナン・カリーニ。実家にも連絡はとっていないらしくてね、エイクも困っているよ」
「や、やっぱりですか……何てことを……」
もしかしまくった。エイクと一番上のお兄さんに迷惑かけてどうすんだあの男はあああああ!
あと、目の前で頭を抱えたコートニア様にも!




