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60.賑やかなホスピタル

 目が覚めると、知らない天井だった。とどっかのアニメっぽい導入はさておこう。

 薬草の匂いがするから、医務室であることには間違いなさそうだ。前世でもこの世界でも、こういう部屋が白っぽいのは変わりがない。


「……」


 あー、何だか身体がだるい。さて、何が起きたんだっけと思い出そうとして。


「キャルン様!」

「んぁ」


 名前を呼ぶ声に、思考を遮られた。視線を向けると、見慣れた私付きの騎士が半泣きの顔をしてこっちを覗き込んでいる。あんた、いつの間にそこまで私を心配してくれるようになったんだっけ?


「あー、エイク? ええと」

「大丈夫ですか!?」

「だ、だいじょうぶ、です」


 オウム返しのごとく返事をしたら、「良かったですううううううう」と思いっきり泣かれた。いや、泣かなくていいから……と考えかけて、思い出した。

 おうそうだ、コートニア様をかばって毒のメス受けたんだった。そりゃ泣かれるか、エイクは私の護衛だもんなあ。守るべき相手が守れなくて、毒食らったらねえ。死んでないからいいじゃない、というわけにはいかないんだよね。後でガルデスさんに話を通しておくかな。


「お、お待ち下さい。看護師を呼んでまいります」

「あ、はい」


 言うが早いか、エイクはバタバタと部屋を出ていった。扉の向こうで誰かと話をしているのは……部屋の番してる人がいるのかな。まあ、私一応聖女だし、状況が状況だから警護の手が厚いのかもしれないな。

 起き上がろうかな、と思ったけどだるいのでやめた。てか、毒食らった直後なんだよな。安静にしていたほうがいいかもしれないな……おとなしくしてよっと。


「こちらです!」


 割とすぐに、エイクの声が聞こえた。開いた扉の向こうから入ってきたのは……ありゃ?


「キャルン様!」

「エンジェラ様?」


 ゲルダさんを伴ったエンジェラ様だ。というか、今日はお家の用事で外出してるんじゃなかったっけ? いやまあ、終わったのなら戻ってきたんだろうけれど。

 思わず起き上がろうとしたところを、「いえ、そのままで」と止められたのでおとなしく寝ていることにする。今私、どんな顔してるんだろうね?


「あの、お家のご用件があったのでは」

「終わって戻ってくる途中で、キャルン様が襲われたと伺ったので慌てて参ったのです。大丈夫ですか?」

「あーはい、何とか」


 生きてますし、とはさすがに言えなかった。エイクがまた頭下げそうで泣きそうで、どうしようもないからね。

 で、この後私とエンジェラ様、そしてゲルダさんはエイクからざっと事情説明を受けた。

 ま、要するに使用人コスプレ同士の喧嘩は思ったとおり片方が刺客、片方が聖騎士で、しかも刺客さんは陽動に使われたらしい。味方に売られたんだ、ご愁傷さま。無事に生け捕りにされたらしいけれど。


「襲撃者につきましては、先にお戻りであったピュティナ様とレックスが捕縛しております」

「ピュティナ様も戻ってたんですか?」

「わたくしより早くに戻られた、とは伺っておりますが」


 エンジェラ様に聞いてみたけれど、まあ別行動みたいだし詳しいことは分かってないか。後で本人に聞ければ一番いいんだけど、はて。

 あ、ピュティナ様がどうやって捕まえたのかは気にしないことにする。どうせ物理的に捕まえたんだろうし、具体的には拳で。


「キャルン様の受けた毒につきましては、コートニア様のお力により完全に浄化されている、とのことです。現在コートニア様は、毒の分析に同席しておられます」

「分析、ですか」

「成分を調べれば、どこの勢力で扱われているものか分かりますから」

「なるほど」


 ゲルダさんが添えてくれた一言で、私はしっかり納得できた。コートニア様も、成分を調べるのに協力してるんだろうか。

 まあ、しばらくは皆に囲まれておとなしく療養してようか。何か、明日には普通に動けそうだけど。

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