54.増やせボディガード
グランブレスト王家を追い落とそうとしている、グランビレ大公家。
魔帝陛下に成り代わろうと画策している、帝国反体制派。
その双方が手を組むなんて、お家騒動待ったなし、かける二じゃないのかおい。
「そんな噂が、しかもほぼ確定?」
「はい」
思わず再確認すると、エイクは苦々しげな顔で頷いた。おお、マジかー。
しかも、そんな状況であるにも関わらずグランビレのご令嬢であるスクトナ様が堂々とお城の中を闊歩されている、ということはつまりだ。
「証拠が全くない、のね」
「はい。それさえあれば、グランビレ大公家の取り潰しはすぐにでも行われるでしょう」
もっと王家に力があったり、国王陛下がもっと独裁者ちっくな人だったりすると証拠がなくても潰すんだろうな。
けれど、それができない程度にはこの国は権力が分散している。だからこそ、王太子の婚約者候補に大公家や公爵家の娘が挙がるわけだし。
もっと力がある王家の後継者なら、エンジェラ様をこっそりズンバラリンなりしてキャルンを妃に据えると思うぞ。『のはける』の王太子には、それができなかったわけだけど。。
「……そういうお家のご令嬢が、あれだけ上から目線というのはどうかと思うんだけど」
「証拠がなければお家は安泰、しかも大公家ですからね。貴族の中にも、大公家を推す家をいくつか存じ上げております」
あー。貴族が全体的に王家推しならともかく、大公家推しも一定数いるからうっかり手を出せない、と。大公家推しの中に、それなりに力のある貴族がいるんだろうな。うわめんどくさー。
……いや、それならもっと穏便に状況を打開する方法があるんじゃないか? ネット小説とかだと時々ある手だけど、どうなんだろう?
「いっそ独立して、別に国を立ち上げたほうが合理的だし面倒も起きないと思うのだけれど……それではだめなのかしら」
「どうなんでしょう……グランブレスト王国とワリキューア帝国、それぞれのこれまでの勢力や知名度をそのまま貰い受けたい感じもしますし」
「……そっか。一から国を作ると、組織づくりとか色々手間よね……」
まあ、実際のところは領地を持つ領主なんだし、その組織を拡大すればできないことではないと思うんだ。でもどうやら、彼らはその手間も省きたいと見える。
グランブレスト王国、ワリキューア帝国、そのトップの座だけが欲しいんだな。今目の前にある栄光の、その座だけが。
「この場合、証拠って反体制派と交流がある証拠、だけじゃだめなのよね?」
「それでは弱いですね。武器の融通や具体的な計画などが出てこないと、王家も魔帝陛下も動けないと思います。軍隊の一部が隠密として探っているようですが」
「ああ、やっぱり捜査はしてるわよね……」
ですよねー。証拠がないだけでクーデター狙ってるのがはっきりしてる相手がいるなんて、そりゃ証拠探すに決まっとるわ馬鹿か私。
しかし、それで見つかってないってことはうまく証拠隠してるんだろうな。フランティス殿下とエンジェラ様のためにも、何とかしたいもんだけど。
「これまでのことを考えると、どちらの勢力も私や他の聖女様たちにちょっかいを出してくる可能性はあるわよね」
「そうですね。少なくともエンジェラ様と、エンジェラ様に後見を頂いているキャルン様には」
「うん」
エイクと、ここらへんで意見は一致した。王国側では今の王家をどうにかしたいんだから、フランティス殿下の婚約者であるエンジェラ様には手を出そうとしてくるだろうし、お二人と近いところにいる私にもたぶん。
「エイク、大変だと思うけど私の護衛、頑張って欲しいの。何なら、私の方から増員お願いしてみましょうか?」
「え……あ、そうか」
なのでそう申し出たら、エイクは一瞬ひるんだけれど少し考えて、頷いてくれた。
「分かりました。自分からガルデス隊長に事情を説明し、直接ではなくても護衛の強化をお願いしてみます」
そう言って、彼は頭を下げてくれた。あーまあ、騎士であるエイクが直接上司に頼んだほうがいいか、うん。




