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ヒドインに転生してしまったので、何とかしてざまぁ回避しようと思います!  作者: 山吹弓美


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48.拝命ブラックナイト

「これはわたくしの、つまらぬ推測ですけれど」


 少し考えたのか、間を置いてエンジェラ様が口を開いた。聖騎士たちも含めて全員の視線が集中するその中心で、推測を述べてくれる。


「そのスヴァルシャの方々はグランブレストの王家とワリキューアの魔帝家、双方を潰し合わせたいのではありませんか?」

『え』


 そして今のえ、も私たち全員が一斉に発したもの。つーか、『のはける』本編より面倒なルートに入っていませんか、これ。エンジェラ様の推測が正しければ、だけど。


「確かに、そうであれば面倒な動きをしている意味は分かりますが……」

「自分たちが表に出たくない、ということなんでしょうか」


 ゲルダさん、そしてエイクが口々に意見を述べる。

 あー、裏で動いて表向きは王国と帝国が潰し合いをするというふうにやりたいのか、スヴァルシャ家は。で、漁夫の利を得る、と。もしあの令嬢が動いてるなら、まあやりかねないな。


「ま、ひどく面倒なことをやっている以上、そのくらい大きく出てくれないとつまらないよね」

「いや殿下、つまらないとかおっしゃってる場合じゃないです」


 この場合一番大変なことになりかねない立場であるのは、フランティス殿下である。その本人がいけしゃあしゃあとそんなセリフを吐き出してくれたので、思わずツッコミを入れた。聖女で良かった、無礼にも程があるよね。


「そうですわ。この推測が的中しているならば、セイブランやスヴァルシャが狙ってくる目標の中に殿下も入っておりますのよ」

「そりゃそうだろう。グランブレストの王家を狙うんなら、王太子である僕を狙わない理由はないもの」


 いや確かにそうですけど! てか言い出しっぺだけどエンジェラ様、涙目になってますって。

 対照的に殿下は平然とした表情のままで……黒騎士を、まっすぐに見つめた。


「ラハルト」

「はっ」

「君のことだ、帝国にもツテはあるんだろう?」

「一応、親類などが残っているという話ですが」

「うん」


 あー。

 ラハルトさんは、魔帝陛下の密偵として王国に潜入している。だから、実際のところは帝国に親兄弟とかごそっといるはずなんだけど、表向きはそういうことになってるんだな。家族関係とか、うまくごまかしたんだろうなあ。

 そのラハルトさんのことをどこまで知っているのかは分からないけれど、フランティス殿下は『帝国にツテのある』彼を利用することにしたようだ。相手が帝国の貴族なんだから、それが一番だよね。


「信頼できる筋を使って、情報収集と交換を行って欲しい。父上にも話は通すから、隠密を使わせてもらえるかもしれないね」

「よろしいのですか」

「君は聖騎士部隊の部隊長だから、聖女を守る義務がある。それに、こういう話をあまり多くの者に知られたくない」

「はい」


 あーうん。

 王国内でも帝国内でも、権力者に反目する勢力がそれぞれの敵を国境越しにぶつけ合おうとしてる、かもしれないなんて話をうっかり広めたらえらいことだよね。

 だから、エンジェラ様経由で動かしやすい聖騎士部隊の、帝国と繋がりのあるラハルトさんを使おうとする……ってのは分かった。


「そういうわけで、君を僕の手足として使わせてもらいたい。もちろん、父上やガルデスに許しを得てからになるけれど。どうかな?」

「それがご命令というのであれば、お受けいたします」

「分かった。頼むよ」

「はっ」

「本来のお仕事からは外れてしまうのでしょうけれど、王国と帝国のためにお願いしますわね? ラハルト」

「全力を尽くします」


 フランティス殿下と、エンジェラ様の双方からこんな事言われたら頑張るしかないよね……ってのは王国民の私だからかな? でも、ラハルトさんも頑張ってくれるみたいだから、何かホッとした。

 ん、あ、そうだ。


「コートニア様やピュティナ様には、どう説明するんですか? 放っておくわけにはいかないですよね?」

「ん……ああ、そうだね」


 一緒に行動することの多い二人の名前を上げて私が尋ねると、殿下は曖昧に頷いた。忘れてたか、忘れてたな? いや声に出して突っ込まないけどさ。


「ピュティナ様がセイブレスト辺境伯家の情報網をお使いになり、情報収集に当たっておられるようです。コートニア様にも、ある程度お話はなさっているようですね」

「ありがとう、ゲルダ。セイブランの情報はピュティナに任せるとしようか」

「まあ、ご本家ですしね」


 地味に敵に回したくないナンバーワン聖女様、ピュティナ様。なんで『のはける』の王国はセイブレスト家を擁しながら負けたんだろうか……殿下がどうしようもない馬鹿殿下から馬鹿陛下になっちゃったから、かな。うん。

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