表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/114

44.帰還ティーブレイク

 面倒くさいことは国とあと帝国に任せることになり、私はガラティア様のところに戻った。

 いろんな村や集落を回るのは、短い期間で聖女の任務を身につけるための修行なり研修なりとしては最適らしいんだよね。戦乱地区とかでもなけりゃそうそう忙しくないし、ガラティア様としては普段やってることに助手が付いてくるって感じでしかないから。


「そりゃまた、大変じゃったねえ」

「大変でした。あ、こちらフランティス殿下とエンジェラ様からの差し入れです」

「ご丁寧に、ありがとさん」


 報告書と一緒にパウンドケーキと王室御用達の紅茶詰め合わせを差し出すと、ガラティア様のお顔にシワが増えた。いや、おばあちゃんなんだし元からシワ多いけど。

 なお、ガラティア様宛に持ってきた報告書は当然老眼対応である。ちゃんと作ってくれたのでありがたや。


「まあ、フランティス殿下が殴り飛ばしとうなるくらい、アレはとんでもないことをしでかそうとしたわけじゃね」

「エンジェラ様と、とても仲がいいですもんねえ」

「それもあるんじゃが」


 さっそく紅茶を入れながら、ガラティア様はやれやれと肩をそびやかせる。うん、私がちょっかい出してない以上殿下とエンジェラ様の仲が壊れることは……やめてくれよセイブラン残党軍団、次やったらぶっ飛ばす。エイクが。多分やってくれると思う。

 まあ、その辺りはあっちが動いてからにしよう。こちらから動くと、国際問題云々で多分殿下周りが困るだろうし。


「殿下もエンジェラ様も、キャルン様のことを気に入っておられるんじゃないかね?」

「はい?」


 そんなことを考えていたら、ガラティア様がおかしなことを言ってきた。えー、それって……いや、たしかにそうかも知れないけど。


「まあ、エンジェラ様の同僚であるしの。嫌われるよりゃ、好かれる方がどちらも気楽でよろしかろうて」

「は、はあ」


 そう第三者から言われるとなおさら、そりゃまあそうなんだけどとしか言えないというか。エンジェラ様とは何だかんだで仲良くさせてもらってるし、フランティス殿下のところでお茶飲むときは殿下、にこにこ笑って私のこと見てるっぽいしなあ。

 もっとも、私の方から積極的にアプローチして殿下をゲットしない限り、『のはける』展開にはなりそうもないからいいか。


「コートニア様もピュティナ様も、良くしてくれてますね」

「喧嘩になるよりはよっぽど良かろ? 今後、聖女同士で協力してのお務めがないとも限らんしの」


 確かに、ガラティア様の言う通りなんだよね。今のところ王国も平和だし、帝国もこっちに喧嘩ふっかけてくる気なさそうだけど。

 いや、二国間での戦争以前に強い魔物が出てくるとか、そうでなくても飢饉が起きて大変だーなんてことになったら聖女が数名一緒にお仕事、なんてことになる可能性は十分考えられるよね。


「私だけ平民出身なんで、どうしてもマナーとか知識とかで後れを取っちゃうんですけど、でも皆さんフォローしてくれます。……もっとも、私が恥ずかしいことしてしまったら聖女全体の評判にも関わりますし」

「ま、それはあるかもしれんの。そこはまあ、キャルン様ご自身の努力次第だでな」

「が、がんばります」


 そうだよなあ。マナーも知識も、自分が身に着けないとどうしようもないものだし。そこはお城で教えてもらってるけど、今みたいに小さな集落でお仕事するならともかく、貴族のお屋敷なんかに出向くことになったときがねえ。

 私が恥かくのは私が恥ずかしいだけなんだけど、それで聖女全体がマナーに疎いとか知識不足とか言われたら皆が困る。特にエンジェラ様は王太子殿下の婚約者で、そういう人にまで変な目が向けられたら嫌だ。私が。

 『のはける』では馬鹿娘キャルンのせいで、エンジェラ様は王国を追われた。

 今私が生きているこの世界は『のはける』と似たような世界だけど、(キャルン)はフランティス殿下とくっつく気はないし、エンジェラ様と仲良くしてほしいと思ってる。まあ、セイブランに近づいた帝国反体制派周りに『のはける』展開に持ち込みたい人がいる可能性はあるけれど。


「私が頑張って、聖女という存在に恥かかせないようにしないと。ガラティア様にも迷惑、かかっちゃいそうですし」

「わしはそうそう、長くは生きんがの。じゃから、自分のことだけ考えたほうが良いと思うがね」

「自分のことだけ考えても、恥はかきたくないですもん」

「ふむ、そりゃ確かにのう」


 ガラティア様の言葉に沿って本音をぶっちゃけると、おばあちゃんらしい笑顔で頷いてくれた。そりゃ私自身、赤っ恥かきたくないって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ