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43.怒りの鉄拳プリンス

「うん、殴った。とても腹が立ってしまってね」


 フランティス殿下のお答えは、ある意味とっても分かりやすいものだった。

 事情が事情だったので修行を中断し、私はピュティナ様と共にお城に戻ってきた。で、例によってフランティス殿下のお茶会という名の報告会に招集された。そこで、刺客の人を殴ったんですかと聞いた答えが、これ。


「わたくしもお話を伺いまして、殿下のお気持ちがよくわかりましたわ。そして、よく殴るだけでお済ませになったとも」

「え、だってズンバラリンとやっちゃったら彼らはそれで終わりじゃないか。僕に不快を味わわせた分、彼らには恐怖を味わってもらわないと」


 一緒にいるエンジェラ様が、ほんわかと笑顔になる。殿下は平然とした表情で、何というか怖いセリフを吐き出してくれた。……まあ、こういう方が未来の国王としてはちゃんとやっていけるのかもしれない。

 『のはける』じゃあぐーたらだったり人の話聞かなかったりとえらくひどい性格になってたけど、アレはほんとにキャルンのせいだったからなあ。今の私に殿下をたらしこむ度胸はないです、うん。


「……失礼ながら、お二人とも地味に怖いんですけれど」


 同期ということでこちらも戻ってきていたコートニア様が、ものすごく素直な感想を述べる。

 ちらりと視線を別方向に向けると、エイクとドナンさんとゲルダさんとレックスくんが一所懸命こちらを見ないふりをしていた。うん、皆も怖いっぽいね、特にドナンさん。分かりやすくグラス持った手が震えてるし。

 聖騎士たちの反応を知ってか知らずか、フランティス殿下は表情をまるで変えることなく話を続ける。まあ、済んだことっぽいし。


「相手にもよるし、やったことにもよるけどね。今回はエンジェラを罠にかけようとしたこと、そのためにキャルンを利用しようとしたことが許せなかったんだ。さらに、グランブレスト王国だけでなくワリキューア帝国まで巻き込もうとしたわけだし」

「本来ならば彼らは、即刻斬首でもおかしくない話ですわね」

「そうなんだけど、帝国側にとってもいわば反体制派の陰謀になるわけだしね。父上もその点を重く見て、向こうと交渉するつもりらしいよ」


 ……エンジェラ様も言ってるけど、国家転覆にも至る罪を犯した刺客一同はその場でバッサリだの、首チョンパだのやられていてもおかしくないわけだ。そのためにエイクやゲルダさんたち聖騎士がいて、剣の技を磨いているんだから。


「まあ、陰謀がうまくいってしまえば、王国(こちら)帝国(あちら)の戦争になるわけですものね」

「そうなるとお、いの一番に駆り出されるのはうち、なのですよお」

「辺境伯ご当主でしたら、即座に任せよとお出ましになるでしょうけれど」


 エンジェラ様の言葉に、ピュティナ様がふてくされたように声を上げる。苦笑しながらコートニア様が続いたのには……まあ、ピュティナ様のお父さんってそういう人なんだと皆理解してるってことだろう。


「ただ、それはそれでちょっと問題なんだ。セイブレストを出すとなると、隙を見てセイブラン残党が動くかもしれないからね」


 そこに、フランティス殿下が口を挟んでこられた。そうか、ある程度捕まえてはいるけれどこれで全部、という保証はないわけか。

 セイブラン家はセイブレスト家の分家で、セイブレストの人たちは……まあ物理的に強いっぽい。私はリアルではピュティナ様くらいしか知らないから、詳しいことは知らないけれど。『のはける』では結構頑張ってたっけなあ、確か。

 で、その分家なんでそれなりに強い、はず、なんだけど……まあ、まともに戦ったら強いのかもしれない。まともに戦ってくれたこと、ほとんどないけど。

 つまり、殿下が問題だという理由はそこだ。


「それは面倒ですね。正面から来るわけがないのは、今までの方々を見てよく分かっていますし」

「だろう?」

「ですから、できるだけ二国の仲が険悪にならないように皆で計らっているのですわ」


 思わず素直な感想を述べると、殿下とエンジェラ様がほぼ同時に頷いてくれた。こういうところも、しっかり未来の夫婦って感じなんだよなあ。よくこの二人の仲ぶち破ったな、『のはける』キャルン。


「まあ、詳細はお国の方にお任せするしかございませんわね? 殿下」

「そういうこと。君たち聖女には、くれぐれも気をつけるように、できるだけ専属の騎士とは離れないようにというお達しが来てるけど、今更だね」

「特にい、エンジェラ様とキャルン様はあ、お気をつけくださいませねえ」

「気をつけます……」


 コートニア様の言う通り、この後の詳しいことは国に任せるしかない。もう私やエンジェラ様だけじゃなくて、王国と帝国の問題になりかけてる話なんだしね。

 それと、本当に気をつけよう。私はピュティナ様と違って、自分で敵を殴り倒せる腕は持ってないもん。

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