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03.騎士とエンカウント

 私が聖女の素質持ちだと判明してから十日後のお昼前に、王都から派遣されたお迎え御一行が到着した。

 出迎えた私と両親の前に停車したのは二台と一頭。金の飾りが施された落ち着いた赤の馬車がメイン。付き添いの荷馬車にはロングドレスの私よりちょっと年上のメイドさんが乗っていて、そして。


「国王陛下の遣いとして聖女キャルン・セデッカ様をお迎えに上がりました、聖騎士部隊第七隊隊長ラハルト・ジーヴェンであります」


 ここらへんで使うような荷物乗せる馬よりもすらっとしてて力強い馬から降りて、黒髪黒目中肉中背だけどめっちゃイケメンの騎士さんがご挨拶をしてくれた。

 聖騎士部隊、要は聖女付きの騎士部隊である。災害で怪我人がたくさん出たり、魔物封じの結界張ったりとあちこちに派遣される聖女を守るための部隊であり……こんな感じで、王都から離れたところに聖女の素質を持った者が出るとそれを迎えに来るのも仕事。


「遠いところをよく来てくださいました。キャルンの父、クランドです」

「母のミーナです」

「キャルンです。お迎えに来てくれて、ありがとうございます」


 おいこら両親、はしゃぐのは分かるが本人より先に挨拶するな。ま、口には出さないけど。ほら、ラハルトさんも困ってるじゃないか。


「早速ですが、出立は明日の朝を予定しております。王都まではわたくしの部隊が付き従います故、聖女様におかれましてはどうぞご安心を」

「お、お疲れさまです」


 あ、スルーした。つーか明日出発かあ……まあそうだよね、私を王都に連れて帰るのが任務だもんね。片道五日はかかる道のりだし。


「それとこちらは、陛下より聖女様に下賜の品にございます。王都に向かわれる際には、こちらの衣にお召し替えいただくようにと申し付けられております」

「色々お世話になります!」


 荷馬車から多分服の入ってる、しっかりした箱が出てきた。それをメイドさんが両手で捧げ持つようにして、にっこり微笑んでくれる。栗色の髪をみつあみにしてて、落ち着いた感じの人だ。

 というか服とか用意してくれるなんてもう、ガチで頭下げるしかない。ほら、一緒に馬車を迎えた両親やいつの間にか来ていた村長さんや神官様まで、頭の後ろが見えちゃうレベルで下げてるし。




 ラハルトさんたちには村長の家で一夜を過ごしてもらうことになって、私は水浴びだけ済ませて部屋に戻る。こんな田舎、ちゃんとしたお風呂も村長さんちくらいしかないんだよね。普通は川で水浴びしたり、寒いときはお湯沸かして身体拭いたりで済ませる。


「……王都に行ったらお風呂入れるんだろうか……うはあ」


 今まではこれが当たり前だと思ってたけどさ、前世思い出したらお風呂が懐かしくなっちゃって。いや、文化やら環境やらがだいぶ違うから仕方のないところだけど。

 さて、前世と言えば、だ。


「……やっべ、ラハルトさん、マジイケメン」


 リアルで見せてもらったラハルト・ジーヴェンの地味だけどイケメンさにむはー、と鼻息が荒くなる。ただし、そのイケメンさに騙されてはいけない。

 『のはける』にももちろん、ラハルトさんは登場するんだよね。役割も同じ、聖騎士部隊の隊長さん。そして、キャルンの逆ハーレム要員……というわけではない。『のはける』キャルンは、正体が明かされるまでそう信じていたけど。

 『のはける』、正式タイトルは『真の聖女は魔帝の寵愛を受ける』。そう、この世界には魔帝と呼ばれる存在がいる。その魔帝は、私たちのいるクランブレスト王国と並び立つ大国、と呼ばれているワリキューア帝国のトップ、皇帝陛下だ。

 ラハルトさんはその皇帝陛下、魔帝がこっちに潜り込ませた密偵の一人。『のはける』の主人公が国外追放されたあと魔帝に保護されたのは、ラハルトさんが動いてくれたことが大きいんだよね。

 つまり。


「敵には回したくない……」


 いやしないけど。要は王太子殿下寝取るとかー、逆ハー狙うとかしなければ大丈夫、多分、きっと。

 せめて『のはける』主人公、エンジェラ・レフリード公爵令嬢を敵に回さないように頑張らないと。つーか普通に聖女修行頑張れば大丈夫だよね? ね?

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