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33.やけくそなチャージ

「それにしても、だ」


 新しく準備されたのは、チョコレートのプチケーキ。それを取り分ける私たちの中にあって、フランティス殿下は軽く首を傾げた。さすがイケメン王太子殿下、ちょっとした仕草も絵になるわ。うん。


「何で彼らは、王城の中で襲撃なんて愚行に及んだんだろうね?」


 その殿下が提示した疑問は、割と基本的なものだけど今まで誰も突っ込まなかったポイントである。

 てゆーか普通はやらないでしょうに。ある意味敵本陣ど真ん中だよ、お城の敷地の中なんて。一応セイブランだって王国の一員だから配下が入城しててもおかしくない、んだけどさ。


「しかも、昼間ですわね。まるで、失敗することを前提で行っているようなものですわ」


 エンジェラ様の感想に、ふと考える。確かに、お城の中で真っ昼間に、一人ずつとはいえ護衛を連れている人間を襲うなんて無茶なんだよね。人払いはしてたみたいだけど、……何というか。

 あ、そうか。


「失敗を前提というか……なんとなく、やけになっている感じじゃありませんでした?」

「確かに」


 自分なりの推測を言葉にすると、エンジェラ様は頷いてくれた。ああ、やっぱりそっか、あれ。

 理由はわからないけれど、推定セイブランの手下たちはやけになって、私やエンジェラ様を襲撃した。失敗が前提というよりは、もうどうなってもいいやといった感じで。


「帝国の協力者に、見限られたんじゃないですかあ? 失敗しちゃいましたからあ」

「まあ」


 そのやけになった理由、推測だけどピュティナ様がずばりと言っちゃうのはすごいなあ。親戚の配下だぞ、あれ。いや、あれ呼ばわりもどうかと思うけど、自分狙われたしね。赤ちゃんのことはきになるけど、同情する気は皆無。


「それはございますかもね。お間抜けな方々でしたがために後がなくなってしまって、セイブランのお家もお取り潰しの憂き目に会ってしまわれた。やけになって、その原因とも言えるエンジェラ様とキャルン様に一矢報いようとなされた」


 この中では一番当事者から遠い立場にいるコートニア様が、ピュティナ様の後を継ぐように言葉を紡いだ。あーなるほど、セイブランの家が潰されたのは私たちのせいだーせめてころしてやるー、とか言った感じ?


「ゲルダやエイクがおられたから良かったものの、本当に彼らのやけにつき合わされるところでしたわ」

「そもそも、何を考えているかは知りませんけれどあちらからふっかけてきた喧嘩だったはず、なんですけど」

「昔からそうですので、セイブレストは見限ったのですわあ」

「そのときに叩き潰しておかれればよろしかったのに」


 エンジェラ様がため息をつき、私が肩をすくめ、ピュティナ様がニッコリ笑いながら怒りのオーラを解き放ち、コートニア様がどこ吹く風とばかりにツッコミを入れる。……女子カルテット漫才ユニットか、聖女は。

 ゲルダさんとエイクは……あ、必死で知らんぷりして向こうでお茶を頂いてる。うん、ごめんねお二人さん、聞かなかったことにしてね。聖女の現実って、こんなものみたいだし。


「まさか、ここまで愚かなことをなさるとは先祖もお考えでなかったのですわあ。といいますかあ、今の代が一番ひどいんですう」

「セイブレスト本家から見放されて以降、ひどくなっていったのかな? 外面はそれなりに作っていたみたいだけどね」


 笑顔のままのピュティナ様の言葉に、苦笑しつつフランティス殿下がお茶を口に運んだ。ま、何かやらかそうとする家が外面作ってなきゃあっさり怪しまれて潰されるだろうしな。そのくらい、私にも分かるし。


「ワリキューアの介入については、どういたしましょうか? 殿下」

「証拠があれば、帝国側に協力を要請できるんだけどね。今の魔帝陛下はあまりこちらに興味を持っているわけでもないけれど、だからといって関係の悪化は望んでいないだろうし」


 エンジェラ様は、どうやら向こうのほうまで気をかけているみたい。……さすがに『のはける』と違ってこのエンジェラ様、魔帝陛下とくっつくことはないよな? それって、殿下がエンジェラ様を国外追放することが前提なわけだし。


「今のところ確固とした証拠は出ていないから、表向きに協力要請はできない。まあ、王城の中にあちらと繋がってる者もいるだろうから、彼らにまかせても良いかもね」


 ……殿下、今の笑顔、ピュティナ様以上に怖いです。もしかして、ラハルトさんのこと知ってたりするのかも。

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