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02.田舎カウントダウン

 さて。

 そこから十日ほど、コトント村はお祭り騒ぎになった。何しろど平民から聖女の素質持ちが発見されたのだ、収穫祭と年越しくらいしかお楽しみのない田舎村、およびその近辺にとって目玉商品……いや商品じゃないけど、そういうのが登場したわけよ。


「キャルンちゃん、聖女なんだって? おめでとう!」

「あ、ありがとうございます……」

「てことは、もうすぐ王都に行くんだよね。その前にこれ、いっぱい食べて!」


 翌日は、朝も早くから押しかけてきたお隣のおばちゃんに、野菜と芋の煮物をもらった。あ、ちなみに時々届けてくれる好物で、うちからはかわりに猪の肉とかをおすそ分けしている。うちの畑を襲撃してたところをお父さんに返り討ちにされた、哀れな動物性タンパク質。


「キャルンねーちゃん、王都でお勉強すんのかー」

「ねえねえお姉ちゃん、王子様かっこいいかな?」

「かっこいいんじゃないかな? 王子様だし」


 その次の日、昼前のおやつの時間。近所のガキ……失礼、子どもたちと一緒に蜜を絞った後の蜂の巣をもっちゃもっちゃと食べた。この子たちはあの儀式までまだ数年あるけど、さてどんな素質が出てくるんだろうなあ。


「せっかくだから、王都に行く前に拝ませてくれ! うちの子にも、いい素質が出ますようにって!」

「いや、素質決めるのは私じゃないですから! あ、でもいい素質が出るといいね」


 そのまた次の日、隣村から最近赤ちゃんが生まれたばっかりだというご夫婦がやってきた。一応頭は撫でてあげたけど、変な素質が出てきても私を恨まないでよ?

 ……とまあ、こんな感じで一日中聖女聖女と騒がれるんだよな。別の隣村のお婆ちゃんに拝まれたりもしたし。

 あー、『のはける』のキャルンがああなった意味、少し分かった。こんな田舎しか知らない小娘が、聖女様としてここらへんの住民から祀り上げられて、そんでもって王都に呼ばれるんだもんね。私は選ばれた存在よー、なんてなるわ、そりゃ。


「あと五日もしたら、王都からのお迎えが到着するそうだから。持っていくもの、まとめておきなさいよ」

「あ、はあい」


 私が聖女の素質持ちと分かってから五日目、お母さんにそう言われた。そうそう、そろそろ荷物作っておかないとなあと思い、自分の部屋に戻る。

 聖女の素質を持つと分かった者は、王都というか王城に迎え入れられる。私みたいな平民の場合は、まず貴族の家に招かれても問題ない最低限のマナーとかあと読み書きなんかを勉強するんだよね。

 そうして、聖女としての能力を引き出す修行をしながら、各自の能力レベルを調べる。怪我を治すのが得意とか、毒を消すのが得意とか、個人差があるから。


「……その後は、お仕事として聖女をやる、と」


 大体能力が開花したところで正式に聖女として認められ、それ以降は各自の能力に基づいてお仕事を割り振られることになる。その中で見初められて貴族や神官と結婚することもあるし、『のはける』主人公のようにもともと婚約者がいるなんて場合もある。

 例えば平民の私がいきなり王太子様の嫁になる、なんてのはいくら聖女でもこう、貴族社会だとね。周囲の視線がすごく冷たいらしい。なので、私は王都に向かうに当たり形式上領主様の養女、という形になる。キャルン改めキャルン・セデッカ、ね。


「あー。シークレットムック、読んどいてよかったあ」


 ここらへんは全て、『のはける』アニメブルーレイ版にくっついてきた裏設定資料集に書いてあった話。実際のところとどこまで合致してるかは、これから確認しないといけないんだよね。

 王都に出たらいろいろ調べられるだろうから、ちょっと頑張ろうと思う。とりあえず読み書きは毎日頑張ってるし……あーもう、何で日本語はすらすら書けるのにこの世界の言葉は書けないんだ、と思ったけど勉強してないからだ、うん。前世と違って義務教育ないもんなあ、この国。


「十進法はそのまんまだから、数字さえ書ければ計算ができるのは楽だけど」


 いや、計算はもともとのキャルンでもちゃんとできるんだよな。お父さんの畑の作物とか、お母さんの織物とか売りに出すときにちゃんと値段出せないと駄目だからね。

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