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26.分家などデストロイ

 お茶会報告から、えーと一ヶ月ほどかな。その頃になって私は、国王陛下のもとに呼び出された。今日はなぜかピュティナ様も一緒に、ということで二人揃って陛下の執務室に参上。当然というか、フランティス殿下とエンジェラ様もお待ちかねであった。


「調査の結果が入り次第、そなたらにはきちんと報告せねばならん、と思うてな」

「はい。私も気になっていましたので」


 あー、どうにか私たちに知られても良いくらいの結果は出たわけか。よかったよかった、お城の皆様お疲れさまです。


「わたくしも、関係者ですの?」

「故に来てもらったのだよ。聖女ピュティナ殿」

「それは、そうですわねえ」


 ……相手が国王陛下でも、マイペースなピュティナ様。ま、失礼な物言いでもなさげだし公式の場じゃないからいいか。当の陛下が平気な顔してるんだから、私がどうこう言うことじゃないわ。

 で、その平気な顔の陛下はいくつかの書類に目を通し、調査結果を端的に教えてくれた。


「結論から言えば、セイブラン子爵家の一部の暴走だったようだな。エンジェラ殿の排除が目的だったらしいが……はて」

「セイブラン子爵……」


 また新しい貴族の名前が出てきたっつーか、まあ一応それなりの規模の王国なんだから貴族くらいいっぱいいるよね。というかセイブラン子爵って確か、『のはける』で聞いたことあるぞ。


「あらあ。小父様ってば、何をなさっておいでなのかしらあ」

「おじさま、ですか?」


 いやちょっと待て、何かピュティナ様の笑顔がめっちゃ怖いんですが。具体的に言うと、怪しいやつをアイアンクローで引きずってきたときよりも怖い。というか身内か? 貴族同士が親戚ってことはよくある話っぽいけど……って、この説明はフランティス殿下がしてくれた。


「セイブランはセイブレスト辺境伯家の分家なんだけど、本家とは仲が悪いんだよねえ」

「そうなんですよう。六代くらい前に分家しましてえ、ひいおじいさまの代に分家がとぼけたことをやらかしまして、それからほぼ没交渉ですのお」

「それでも本家と分家ですから、完全に関係を切ることができないというのはご苦労さまですわ。セイブランに大きな瑕疵でもあれば、お取り潰しにできるのでしょうが」


 ピュティナ様はある意味当事者だから言い方がアレでも良いんだろうけれど、エンジェラ様まで便乗して何かひどいこと言ってないか? ま、国王陛下も真面目な顔してうんうん頷いてるから本気で取り潰したい家、なんだろうけどさ。

 ……と、ここで思い出した。『のはける』でのセイブラン子爵家って、キャルンに取り入ってエンジェラ様の追放に一役買った悪役だわ。ただ、エンジェラ様が魔帝陛下の保護下に入ったあととっとと潰されたっけなあ、物理的に。


「それに、どうもワリキューア帝国の一部と繋がりがあるらしくてね。ただ、はっきりした証拠が掴めなくてさ」

「え?」


 けれど、その後のフランティス殿下のセリフには思わず眉をひそめた。

 そんな設定、『のはける』の中では出てこなかったぞ? いやまあ、ここは現実であって小説やアニメの中の世界ではないわけだから、いろいろ違いはあるんだけど。

 てーか自分とこと繋がっていたら魔帝陛下、潰すか……もしれないか。よくやった、褒美に死ねいばっさり、とか時代劇なんかで見たことがある。前世でだけど。


「ワリキューアの魔帝は、今のところこちらと戦を構えるつもりはないそうだ。それに不満を持つ配下がいる、という話も聞いている」


 国王陛下が、ため息交じりにそんなことを言った。……あー、この前の使者さん辺りだな、情報源。あの後しばらくして帝国に帰ったらしいけれど、一緒にこっちの国王陛下のお手紙とか持っていったんだろうなあ。家でも国でも、ご近所付き合いって大変だよね。


「ですが、此度の証拠が揃っているのではありませんのお?」

「そのとおり。セイブラン子爵家は取り潰し、領地は本家であるセイブレスト辺境伯領に編入するものとする。既にセイブランには発令してあってね、一両日中には領主の変更手続きが地元で終わるはずだよ」


 ピュティナ様と国王陛下、同じようににやりと黒っぽい笑みを浮かべたのが印象に残る。ああもう、殿下とエンジェラ様も平気な顔してるってことは、このくらい慣れろってことかあ。おのれ、王族貴族の裏側め。

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