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21.スパイフレグランス

「お連れしました!」

「お呼びでしょうか、総隊長」


 割とすぐに、エイクがラハルトさんを連れて戻ってきた。ああ、ピュティナ様の手元を見て一瞬顔色変えたな。分かる分かる。


「ラハルト。ちょうどいい、こいつの顔を……ピュティナ様」

「あらあ」


 で、ガルデスさんも同じところに視線を向けて苦笑した。そうだよねえ。アイアンクローしたまんまだと、ラハルトさんはそいつの顔を確認できやしない。


「ごめんなさいね、ちょうど持ちやすかったものですからあ」

「そういうふうに、襟を掴んで引きずったほうが持ちやすいと思いますが……あ」


 ほにゃんとした笑顔のままで手元のそれを持ち上げて、襟首掴んでラハルトさんに向ける。幸い顔が潰れてたりひしゃげてたりはしなかったようだけど、ラハルトさんはまじまじとその顔を見て軽く鼻を鳴らして、それから頷いた。


「この間、キャルン様宛の手紙を私に託してきたメイドです」

「間違いないな」

「はい。少し顔を変えているようですが、特に匂いが同じです」

「よし」


 ラハルトさんの証言を聞いて、ガルデスさんが満足げに唇の端を上げる。ところで、ラハルトさん何言ってるんですか、匂いって。


「匂い、ですか?」

「見てのとおり、ラハルトはワリキューア帝国の民の血を引いております。あちらの民には、五感のどれかが鋭い者が時折存在するそうでして」


 ……あー。

 魔帝陛下もそうなんだけど、『のはける』の中でワリキューア帝国の人って獣人だったり怪人だったり、その混血だったりとかが結構多いんだっけ。そういう人たちのトップに立ってるから、皇帝陛下じゃなくて魔帝陛下って呼ばれてるんだった。

 なるほど、そういう血が入ってるなら納得した。……本編でそういうこと言ってたっけなあ? シークレットムックにちらっとあった気はしなくもないけど、魔帝陛下とその直属の部下とかだけかと思ってた。


「それで、ラハルトさんは鼻が良いということなんですね」

「はい。変装した相手もほぼ見分けられます」

「まあまあ、すごいですわね」


 まあ、匂いで分かるとなるとなあ。香水とかを使う手もあるんだろうけれど、それはそれで印象が強くなるもんな。ピュティナ様も感心してるよ……その手に捕まってる怪しいやつが泡吹いてるけど。

 その顔を見もせずにピュティナ様は、やれやれと肩をすくめた。ああうん、私のことでご迷惑おかけしました。


「それでは、わたくしはよろしくて?」

「は。お手数をおかけいたしました」

「いえいえ。コートニア様には、わたくしからお伝えしておきますわね。このようなことがありましたので、お気をつけくださいまし、と」


 ガルデスさんと交わす会話に、何というかホッとする。いや、コートニア様って悪い人じゃないんだけど私が話しかけると突っかかる感じになっちゃうからなあ。ピュティナ様が受け持ってくれるなら、マジで助かる。


「よろしくお願いいたします……あの、それはこちらでお預かりいたしますので」

「あらまあ」

「ピュティナ様、泡吹いてますよそいつ」

「軟弱ですわねえ。ガルデス様、どうぞよしなに」


 ガルデスさんのいうそれ、つまり悪の手先かっこ仮名、をにっこり微笑みながらピュティナ様はガルデスさんに手渡した。ひょいと両手で支えて、何か大きなものをプレゼントするかのように……いや大きいけどね、人間だし。レックスが頭抱えるのも分かると言うか、君多分事務処理担当だろ。物理担当は完璧にピュティナ様なんだから。

 そして当のピュティナ様、ガルデスさんが呼び止めなかったらあれ引きずってコートニア様んとこまで持っていくつもりだったんだろうか? いやまあ、こんなの捕まえましたなんて言いかねないけどさ。

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