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15.向かうよセレモニー

 文字の練習をしたり、祈って力を出す練習をしたり、ご飯がまいどまいど美味しいのに感動したり、後お風呂が泳げるくらい広かったのに感動したり……いや泳がないけど。

 そんな感じで十日ほど経ったある日の朝、エンジェラ様が今日は一緒にいられないって言ってきた。お互いにエイクとゲルダさんは一緒にいるんだけどね。


「今日はわたくし、お城の方に向かわなければなりませんの。お一人で大丈夫ですか?」

「お仕事なんですか?」

「まあ、お仕事と言えばお仕事ですわね」


 ほんの少し考えて、ゲルダさんと顔を見合わせて頷き合ってからエンジェラ様は、お仕事の内容を教えてくれた。聖女の宿舎もお城の中なので、そのうち分かるとでも思ったのかな。


「ワリキューア帝国から、魔帝陛下のご使者の方がおいでになりましたのでその歓迎会、とでもいいますか」

「あら」


 ワリキューア帝国。『のはける』でエンジェラ様とらぶいちゃしつつグランブレスト王国をぶっ潰して併合した魔帝陛下の治める国である。短く言うと隣の国。いや、間にちょっと距離あるけど、そこらへんは人が住んでないエリアだったりするしなあ。

 まあ、そもそも仲が良いわけでも悪いわけでもないので、使者の行き来くらいあってもおかしくはないだろう。『のはける』の場合、帝国に逃れたエンジェラ様の引き渡しを求めたフランティス殿下その他王国組のやり口がひどくて、魔帝陛下が怒ったって経緯だし。


「ということは、聖女としてではなくて王太子殿下の婚約者、としてのお仕事ってことになりますね」

「ええ、そういうことですの」


 ともかく、帝国から使者が来たので歓迎セレモニーだか何だかやるのにエンジェラ様が出席。そりゃ次期グランブレスト国王の婚約者だもんなあ、顔見せしてもおかしくないでしょ。というか、まだ聖女スタイルじゃんか。


「王国の大事なお仕事なんですから、私は大丈夫です。急がないと、準備もあるんじゃないですか?」

「ですから、今からお城の方に呼ばれているんです。ごめんなさいね」

「いえ。エンジェラ様、行ってらっしゃいませー」

「行ってらっしゃいませ、エンジェラ様」

「ありがとうキャルン様も、騎士エイクもありがとう。行ってきます」

「では、失礼いたします」


 慌てて、言葉を取り繕いつつ送り出した。王太子の婚約者なんてしっかり着飾って化粧やヘアセットもするんだから、時間たっぷり必要なのにまったくもう。


「……エイク」

「はい」


 さて、エンジェラ様たちが見えなくなったところで聞いてみるか。私よりエイクの方が、国の情勢なんかはよく知ってるだろうし。


「私は田舎者なんで、お国の上の人が考えていることはよくわからないんですけど。帝国の使者って、どんな話をしに来られたんでしょうね」


 今のところ、魔帝陛下がこちらにちょっかいかけてくる理由がちょっと思いつかないんだよねえ。『のはける』の話に入ったあたりなら、エンジェラ様の身柄から始まる意地と交渉のやりとりとかになるんだけど、そこまで仲悪いわけではないもの。

 で、エイクは「私も詳しいことはあまり良く知らないのですが」とか言いながら、それでも教えてくれた。


「噂では、魔帝陛下がそろそろ奥方を迎えたいとおっしゃっておられるようですね」

「は?」


 あ、そう言えば『のはける』、魔帝陛下とエンジェラ様結婚するんだよなあ。てことは当然……で、いいんだっけ?

 アニメとか見てたときはふーんで終わったけど、考えてみたら帝国の皇帝陛下なんだよね。魔帝陛下。


「王太子殿下みたいに婚約者とかおられないんですか? というか、そもそも独身?」

「独身で、決められた婚約者様もおられないようです。候補に挙げられた方は数名おられるようですが」

「そうなんですか……まあ、帝国トップの奥方ですからそれなりに高い地位のお家の方ですよね」

「それはそうですね。数代前には、グランブレスト王家の末姫様を娶ったということもあるそうですし」


 うん、そこら辺は『のはける』でも出てきた話だ。よしよし、このあたりの話は私が知ってるままで問題ないらしい。数代前のお姫様がエンジェラ様とちょっと似ているってのも出てきたっけなあ。公爵家って、王家と血縁あるはずだもんね。

 そういうこともあって魔帝陛下は、公爵家令嬢であるエンジェラ様が婚約破棄からの追放で出てきたところをお持ち帰りしたわけで。

 ……まさか、現世の魔帝陛下、エンジェラ様に惚れたりしないよな? いや、それなら私は関係ないからざまぁにはならないけれど。

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