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109.私の知らぬオハナシ

「陛下」


 ラハルトさんじゃないけれど、魔帝陛下の部下の人が上司を呼びに来たところで陛下が席を立った。まあ、帝国の皇帝だもんね。王国に来たら、ついでにいろいろお仕事とかあるんだろう。

 慌てて私たちも席を立とうとしたら、魔帝陛下は「皆は立たなくていい」と言ってくれた。あー助かった、この場で一番えらい人の退出だもん。陛下が言ってくれなければ、立たない人は不敬だぞと言われるんだよね。

 ……まあ、失礼なのは前世でもそうかも知れないけれど、この世界の場合部下の人とかにばっさりやられる可能性……はあるけどやらないかな、せいぜい怒られるだけで。でも、いやだもんね。


「他に仕事もあるから、先に失礼する。見送りはいらないからな、身内同士仲良くやってくれ」

「はっ。同席いただき、感謝の極みです」

「いや、こちらこそ一時リラックスさせてもらって感謝してるさ。また、機会があれば」

『はい。また』


 とりあえず、腰を下ろしたまま頭はきちんと下げてお礼を言う。ひらひらと手を閃かせながら魔帝陛下は、お茶会の場を去っていった。いやまあ、ちょっとはのんびりできたかな。これからまた、忙しくなりそうだしさ。いろいろと。

 で、魔帝陛下が去った後の話題はまずそこからだった。というか、隣国のトップを間近で見た感想のやり取りということになる。


「魔帝陛下って、気さくな方でしたわね」

「そうだね」


 エンジェラ様とフランティス殿下の感想は、さっくりとしたものだった。最もこの二人、王太子とその妃予定なんだから今後一番お付き合いすることになる立場じゃないかな。


「ですが、公式の場ではもっと苛烈な方でしょうね」

「そうですわねえ。何しろお、帝国を治められる方ですものお」

「先頭切って、魔女軍と戦ってましたしねえ」

「ほおんと、お強かったですわあ」


 コートニア様とピュティナ様は、そこから一歩離れた立ち位置になるので半ば見物人である。いやほんと、政務とかやってるときは怖い人だろうなあ、魔帝陛下。でもピュティナ様、多分あなたのほうが強い気がするんだけど気のせいかな?


「キャルン様は、『見た』ことのある魔帝陛下と比べていかがでした?」

「えー……ああ、あのような感じだったと思いますよ。そんなに変わってませんし、公式の場で厳しい方というのも多分そうだと思います」


 私はなあ……ほら、『のはける』で知ってるのと比べてしまうわけで。でも、あんまり変わらなかったけどね。

 変わったのは私、というかキャルンの方だもの。フランティス殿下をバカ王にすることもなく、ざまぁされることもなく、何とか安心して聖女ライフを進むことができそうだ。

 ……そう言えば、もしかしたら帝国からも聖女様が来るのかもしれないのか。いつになるかはわからないけれど。


「帝国から聖女様が来られたら、楽しいことになるでしょうね。わたくし、キャルン様が来られたときもとても楽しみにしていたんですけれど」

「わたくしどもは、王都や領地の近辺しか存じ上げませんものね。帝国の生活について、お話を伺いたいですわ」

「私でも、さすがに帝国のお話はあんまり聞きませんし」

「わたくしもお、あまり詳しいことは伺ってませんわあ」

「僕も、まだ行ったことはないなあ。そのうち、今回の関係で行くことになるとは思うけど」


 魔女問題が解決した直後なせいか、殿下込みで緊張感がなさすぎる。含む、自分。ほんとに戦後処理は責任者におまかせすればいいんだけど、その中に殿下も入るのかと今更ながらに気がついた。そうだよなあ、王太子で聖女の一人が婚約者だもんな。


「そうだわ、キャルン様」

「はい? 何でしょうか、エンジェラ様」

「キャルン様がお生まれになった村のお話、聞かせてくださいませんか」

「へ? あ、はあ、構いませんけれど」


 そこからどうして、キャルン(いまのわたし)の故郷話になるんだろうなあ。いやまあ、私以外の皆は貴族王族生まれ育ちで、平民の生活とか詳しく知らないか。うん。

 しょうがない、ど平民の私が教えてあげよう!

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