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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

少女Aが自殺するだけの話

作者: お久しぶりの粒餡

「……」

 私は、下を見下ろす。そこには、見慣れた校庭があった。

 私は、前を見る。そこには、いつまでも続いてるような街並みがあった。

 そして私は上を見上げる。そこには、いつもより近く綺麗な星空があった。

 私は今日、自殺する。別に特別な理由があるわけではない。ただ、普通にいじめられて、普通に家に帰れば親が罵りあっていて、普通に居場所がないだけ。特別な理由はないが、よくある自殺の理由はたくさんあった。

 「思ったよりは、怖くないね」

 自然と、言葉が口から零れる。嘘だ、本当はすごく怖い。怖くて怖くて仕方がない、死にたくない、痛いことをしたくない、今からでも家に帰ろう。そんなことを思考するが、すぐにそれはこのまま生きていくことへの恐怖でかき消されてしまう。死に対する恐怖より、生に対する恐怖が勝ってしまった。だから私はここにいるのだ。

 「……すぅー」

 昔、私がこの世界で唯一好きな人であったおばあちゃんから教わったお呪い。やりたいことに対して勇気が出ない時は、目を閉じて、何も見えない状態で吸ってはいてを繰り返す、そして次目を開けたときにはきっと出来るようになっている。そんな素敵なお呪い。

 ああ、でも何ておばあちゃん不幸な孫なのだろうか、私は今からおばあちゃんが教えてくれた素敵なお呪いで、死のうとしているのだ。ごめんなさい、ごめんなさいおばあちゃん。このことを知ったらきっとおばあちゃんは死ぬほど後悔することだろう……最も、既におばあちゃんは天国に行ってしまったが。きっと私は地獄行きだろうから、この謝罪は閻魔様にでも伝えてもらおう。

 「……よし」

 そして、目を開けると、おばあちゃんが言っていた通りここから落ちる覚悟が決まった、決まってしまった。おばあちゃんはいつも、いやただ一つ、私がいい子であるということ以外ではいつも正しかったのだ。

 さあ飛び降りよう、この世にお別れを告げよう。最期に願いが叶うとしたら、登校してきたあいつらに一生残るトラウマが残りますように。そんなことを思いながら、私は自らの命を支えていた二本の腕を放し、落ちた。

 真っ逆さまに落ちていく、だけど意外と速度は遅かったから他の事に目を向ける余裕があった。

 とりあえず、校舎を見てみた、一年ちょっとしか通うことが出来なくて、嫌な思い出しかない高校であったが思い入れはあった。一年生の時の教室が通り過ぎていく、あの頃はまだ楽しかった、そこそこ喋る友達はいたし、きっと私が普通の学校生活を過ごしていたら、卒業するころには親友になっていただろう。

 二年生の教室が通り過ぎていく、私の人生の転換点。私の何がいけなかったのだろうか、気づいたら周りに味方がいなくなっていて、敵しかいなかった。私をいじめていた奴らはどうなるだろうか、もしトラウマが残ったとしてももしかしたら、それを慰める素敵な誰かと出会うのかもしれない。そう思うと何だか腹が立ってきた、何故死ぬときになってまでこんな嫌な思いをしなければならないのだろうか。私は嫌になって空を見て死ぬことにした。

 空はいい、見ていたら嫌なことはその時だけは忘れられるから。昔、まだ両親の仲が良かった頃、家族で近くの丘に天体観測をしに行ったことがある。運が良いことにその日は誰もいなくて、夜空は私たちだけのものだった。今思えば、空が好きなのはそれが理由なのかもしれない。

 小学生になったとき、二人は一緒に喜んでくれた。中学生になったとき、二人はまた一緒に喜んでくれた。高校生になったとき、二人は喜んでいた、別々に。何となくぎくしゃくした雰囲気を感じてはいたが、その内何とかなるだろうと思っていたのがまずかった……例え私が何か行動を起こしていたとしても何も変わらなかっただろうけど。ぎくしゃくの原因は、二人の浮気だった。笑えることに、二人とも浮気をしていたのだ、何故知っているかというと、ある日二人からこう告白されたからだ。

 「お父さんたちはな……それぞれ違う好きな人が出来たんだ。だから離婚することにした、でも安心してくれ、お前が高校を卒業するまでは家族でいるから」

 そんなことを言っていたが、これなら離婚された方がマシだった。お父さんたちは週に二日は浮気相手の元で生活し、残りは家で過ごす。でも、家で過ごしている間はお互い他人であるように振る舞い、ちょっとしたことで喧嘩をする。そうして、私のために離婚をしなかった両親からの愛は、私を苦しめた。

 やっぱり空を見るのもやめよう、空は好きだが両親は好きではない。ここはやはり地面を見るべきだろう、少し怖いが最後に私が選択した行動だ、結果を見守りたい。

 「っ……」

 そう思って、地面を見たら思わず息をのんでしまった。地面は、すぐ目の前まで来ていた、思ったより遅かったはずが、どうやら早かったらしい。今まで思い出していた記憶などは吹っ飛び、私は……。

 「……死にたくない!」

 最後の最期で、死に対する恐怖が生に対する恐怖を上回った。まだ死にたくない、痛いことをしたくない、今からでも家に帰りたい、誰かたすけ

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