閑話 巨大イケメンのひとりごと
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「『ジン殿』……カ。小石の癖に懐かしい響きを思い出させてくれるヨネ」
なんとも風変わりなニンゲンにゾロゾロとついてきた小石のうちの一人。ちなみに顔は全く覚えていないし、覚える気もない。
ただ、そいつの言葉の響きが、懐かしい日々を思い出させた。
『ジン殿、いや、ジン様? ジン御大? 大明神!? お力をお貸しください~~!!』
やかましい声が脳裏に蘇る。ニンゲンにとっては脅威であるはずの、魔物である自分。それを過剰に恐れることなく話しかけてきた毛色の違う大たわけ者。
それもそのはずで、彼は神に遣わされた異世界人なのだった。
馬鹿みたいな魔力持ちかつ武力もある。のだが、どこか情けない。その癖、周りのニンゲンには一目置かれているみたいな、妙なヤツだった。
(カミサマの情報っていくらボクでもないからサァ。興味本位で付き合ったらほんっとめんどくさいことになったヨネ。ボクもまだまだ若かった、ということにしておくカ)
ククク、とジンは一人笑う。
好奇心に従って動いたが最後、その情けないニンゲンは何故かこちらに懐いてきた。うっとおしいと思ったことは一度や二度ではないし、ジンと言えど不可能だってある。……口が裂けても不可能とは言わず、のらりくらりと躱したが。
結果的にはソイツがこの世を去るまで関係は続き、時々気まぐれに助けもした。説明しがたいのだけれど、助けてやった方がいいかなぁと思わされるような何かがあったのだ。もしかしたら、それこそが神の与えた能力だったのかもしれない。
だが、その恵まれた能力のせいで、ニンゲン特有のシガラミに絡めとられていた。それを時には指をさして笑い、時には呆れながらも手を貸した。
(寿命短い癖に何してんだかって思ったもんだよネ。その辺りはいなくなるまで変わらなかったナ……)
だが、その短い寿命を燃やすように、ソイツは変わっていった。
暇つぶしついでに覗きに行くたびに「イゲンのあるオウサマ」とやらの仮面をつけるのが上手くなっていったのだ。
それをつついて、自分の知る情けないニンゲンに戻る瞬間がまた面白かった。
「……カミサマの新しいオモチャはつついたら死にそうだよネ」
今日出会った、彼と同じ立場であるニンゲン。
魔力の総量は彼にひけをとらないだろうが、あまりにもひ弱だった。肉体的にも精神的にも。バランスが悪すぎる。面白いか面白くないかで言えばまぁまぁ面白そうではあった。
(でもカミサマの情報なんてヤツと同程度しか持ってないデショ? ってかそもそもアレ、会話にならなさそうだシ……)
そもそものきっかけは、神の情報に興味を持ったことだった。いまとなってはどうでもいいような気もするが、得られるものなら得てもいい。
とは言え、新たな情報源になりそうなのがアレでは。
情報を引き出すどころか会話を成立させることさえ相当な高難度に思われる。
自分もそれなりに苦戦したマンティコアを倒した、というのが信じられないくらいだ。だが、気配がないのだから事実なのだろう。
「……ていうかさぁ、これって約束果たしたことにならナイんだよネェ」
ジンは約束を守る生き物だ。少なくとも己はそうだ。
だからこそ、ニンゲンなんかと約束する気は毛頭なかったのだが……。
「アレはさぁ、仕方ないよネ。フカコーリョクってヤツだよ。アイツってほんとサァ……」
当時のことを思い出すだけで唇の端があがっていく。
本当に奇妙で、情けなくて、その癖他のニンゲンには頼られている、おかしなニンゲンだった。
きっとあのスライムも似たようなことを思いながら、あのひ弱なニンゲンにくっついているのだろう。
「アノコはどんな選択をスルんだろうネ。まぁ、アイツの顔に免じて精々暴発しないようにしてやるカ」
『頼むよ~! 俺がいなくなったあと、気が向いたらでいいからさ~!』
やかましくて情けない声が再び脳裏に蘇る。どうも今日は感傷的な気分に傾いているらしい。全く似ていない、けれど、どこか懐かしい風の匂いを感じたからだろうか。
「ヤレヤレ」
ジンは大仰に肩を竦めると、その姿を風の渦に変えた。
自分が溜めた魔力の様子を見に行くために。
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