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25.名誉魔導士と大いなる魔力

コミックスの完結巻が2/29に発売されます。


小説・コミックス共に是非よろしくお願いいたします!

小説の更新は毎週金曜20時予定です~。


「そ、それは国が危ない、のでは?」


 思わず声が出てしまった。

 しかしながらそれも当然だろう。あのマンティコアを消し飛ばすために溜められた魔力を捨てるのであれば、色々な場所に影響が出る気がする。


(天変地異が起きて砂漠に雨が! とかだったら歓迎できるかも? あ、ここ塩性砂漠だからたくさん雨降ったらそれはそれで大変かもしれない。やっぱナシで! シロの同族なんて雨で溶けちゃうかもしれないし)


 呆れた表情でジンが振り返った。


「だからわざわざニンゲンに聞いてあげてるデショ。捨てても問題ない場所ドコ? って」


 しかし、それは依織に大ダメージだ。クリティカルヒットかつ会心の一撃で軽いやけどでよかったね~ではすまない。

 あまりあるキラキラの暴力、ダメ絶対。


「ひぃっ。フリムカナイデクダサイッ」


「……キミ、めんどくサ」


 カミカミになりながらも抗議すれば全てを諦めた瞳で前を向いてくれた。依織としては命拾いした形だ。

 ジンと依織がそんな漫才を繰り広げている間、クウォルフ国の精鋭たちは懸命に相談をしていたようだ。なんかごめん。


「で、どこに捨てればイイカ、決まっタ?」


「その、申し訳ありません。これは我々の一存で決められる事柄ではなく……今しばらく時間をいただけないでしょうか?」


「うわ、出た。リケンとかハバツとかいうやつでしょ、ニンゲンめんどくサ。まぁボクは暴発したって構わないしイイヨ」


 ジンは良いかもしれないが、人間にとっては死活問題だ。

 皆の顔から一斉に血の気が引いていく。そんな中依織はといえば、一人だけ巨大なイケメンが振り向かないかどうかという心配をしていたりする。ある意味で、一人だけ平和だ。


「ちなみに、猶予はいかほどあるのでしょうか?」


「さぁ……?」


(そんな無責任な……。いや、責任感あるからこうして人間探して忠告までしてくれてるのかな? なんにせよ、私にできることってなさそう……。宿に戻ってトリさん経由でイザークに急いできてもらう、とかならできるかな?)


 依織は名誉職は貰っているもののなんの権限もなく、この国の地理にも疎い。

 ジンの溜めた魔力を解放する場所の選定に加わることなど到底できない。蚊帳の外だとある種の安心さえ抱いていた依織だった。

 のだが、ジンが何やら意味深にこちらに目線を送ってきた気がする。


(えっ……なに?)


「あと、もう一つ方法がなくもないんだケド……うーん……」


「方法があるのであれば是非お教え願いたい」


 いつのまにかあちらサイドはエーヴァが会話の主導権を握っているようだった。

 確かに口下手なイースや得意分野でしか口が回らないナーシルよりは適任そうに見える。確か現在は国の役職についていない人だった気がするが、あの二人が納得しているのであればまぁいいのだろう。

 それよりも問題はチラチラとこちらを振り返る巨大なイケメンである。

 嫌な予感しかしない。


「うーんと、まぁ、あれだヨ。そこの毛色の違うニンゲンならなんとかできなくもナクもなく……?」


「!?」


 嫌な予感が的中である。どうしてこんな場面で白羽の矢が立つのだろうか。

 いや、内心では依織も薄々気付いてはいた。


(そりゃね、神様からなんか色々貰ってるチートですからね。なんかそういう素質っていうのはあるかなぁとは思うんですよ。でも、無理! 全然魔法のことわからないもの!)


 心の中で無理を羅列していると、意外なところからも同意の声があがった。


「イオリさんがですか!? 確かに凄い魔法は使えますけど、魔力操作とかは全然アレですよ!?」


 依織の魔法の腕前について、一番良く知るナーシルだ。だが、言うに事欠いてアレとはなんだ、アレとは。

 ハッキリ明言しなかっただけ配慮があったのかもしれないけれど。


「え、そんなニ?」


「そんなにです!」


 ナーシルが握りこぶしを作って力説する。


「彼女の魔法のほとんどは僕たちが知らないオリジナルで、しかもその中身を解析しようとしたらほぼほぼ生まれ持った莫大な魔力による力業で真似の仕様がありません。復元不可能なオリジナル魔法なんです。更に言えばその魔力の使い方が下手もいいところで無駄が多すぎて解析に時間がかかりすぎるというオマケつきなんですよ! 伝説の魔物であるジンが長年溜め込んだ魔力を吸収して無力化なんていう繊細な魔力操作ができるとは到底思えません。僕とエーヴァ様が共同作業した方がまだマシとすら思えますよ」


「そう、なのか? いや、ナーシルが言うなら見立てはほぼ間違っていないのだろうが……私とお前の共同作業の方がマシとは相当だぞ……?」


 槍玉に上げられたエーヴァが依織とナーシルを交互に見る。

 大変いたたまれない。

 ジンはと言えばナーシルの力説に気圧されたのか、視線が泳いでいる。


「う、うーん……。じゃあやっぱどっかに捨てるカ。未知数のコトが起こるよりも砂漠に大穴空く方がマシだよネ」


「大穴、ですか? それはその……地中の魔物に影響があるのでは……?」


「まぁそれなりには地上に出てくるんじゃなイ? 死にたくないのは人間も魔物も一緒だヨ。マンティコアより弱いのしかいないから平気デショ」


 その言葉で全員が依織を見る。

 何故そんな期待した目でこちらを見るのだろうか。


「む、無理! マンティコア倒した、ワタシ、チガウ!」


 無理なのは、マンティコアよりも弱いとされる地中の魔物を葬ることか。それとも注目されている今現在の事か。少なくともカミカミになってしまったのは、注目されてるからである。


「他の魔物はともかく、彼女にサンドワーム系は無理だろう。砂の中から出てくるのであれば大群になることも予測できる。トリさんの助力があったとしても、大群を倒すとなれば取りこぼしもあるだろう。少なくとも彼女だけに任せるのは避けたい」


 イザークから話を聞いているのか、イースが冷静に突っ込んでくれた。

 砂の中から現れるサンドワームの大群。想像しただけで眩暈がしそうだ。万が一そんなものを目にした場合、良ければ気絶、悪ければ魔力暴走を起こしてしまうかもしれない。

 それだけは絶対に阻止しなければ。

 とは思うものの、依織にできることはブルブルと拒否の意を示すために首を全力で横に振るくらいなのだが。


「もし砂漠のどこかに向かって魔力を解き放つという方法でしたら、それらの魔物の対策も必要となります。やはり今しばらくお時間をいただけないでしょうか?」


「ニンゲンって寿命短い癖にそういう時って時間めちゃくちゃかけるよネェ。ボクは待ってあげてもいいけど魔力の方がどうなることやら……」


 ジンとしてはさっさとコトを終わらせたいのだろう。

 先ほどからチラチラと依織の方を見てくる。その視線がふと、依織から別の場所にズレた。

 そして、ポツリと呟く。


「あ。もう一個、魔力をナントカする案あるカモ?」

【お願い】


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ブックマークも是非よろしくおねがいいたします


書籍化もしておりますのでどうぞよろしくお願いいたします

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