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24.名誉魔導士の奮闘と魔力の行方

小説・コミックス好評販売中です。是非よろしくお願いいたします!

更新は毎週金曜20時予定です~。


「塩魔法!? なんだそれは! 意味がわからんぞ! お前は感覚に頼りすぎだ」

「いえでもそうとしか言えなくて……」

「万が一固有魔法であれば一大事ではないか! 特にお前は教える側の立場なのだぞ。常に教える側になることをを考えろとあれほど……!!」

「イオリさんがハチャメチャなのは僕のせいじゃないですよお……」


 エーヴァ様、と呼ばれていた彼とナーシルが対話をしているのだが、それがまた非常に珍しい光景だった。依織の前ではあれだけ饒舌だったナーシルが、ハチャメチャに突っ込まれているのである。

 とりあえずそんな二人を横目にもう安全だろうということで、シロに塩の壁を片してもらうことにした。その間も


「そもそもソルトスライムが何故魔法の補助など!!」

「そこは僕もわからないですってばー……」


(タジタジなナーシルって凄く珍しい。っと、見とれてる場合じゃなかった。話すこと決めないと……その前に、どこまで言ってもいいかジンに確認しなきゃ)


 塩魔法のことを教えるナーシルと、めちゃくちゃ突っ込むエーヴァ。その光景に口を出したそうにしつつもなんとか耐えているイース達。

 カオスな空間を横目に依織はジンに話しかけた。


「あの、どこまで言っても平気?」


 人には言われたくないこと、広められたくないことがあるだろうという配慮からだ。ただし、彼は人ではなくジンである。


「ん? 別にボクは隠したいコトなんてないヨ。あるのは君の方じゃないのかイ?」


「……そうかも」


 ポソポソと小声でジンと打ち合わせをする。

 神様に関連することはイザークにも「あまり口にしない方がいい」と言われている。初対面の人がいる場所で言うのはやめておきたい。

 隠したいことがある依織とは逆に、ジンはついさっき聞いたことは全て話しても構わないらしい。自由でちょっとだけうらやましい。


「あの、じゃあ、初代国王との約束の、マンティコア退治のために起きて、情報を得るためにゴーレムを動かしてた、で、いい?」


「いいヨ。あってル。ていうか話したいのその先だかラ、ちゃっちゃと進めてほしいところダネ」


「が、がんばる……」


「……なんか、ボクが話した方がハヤイ?」


「うん!」


 一も二もなく大きく頷く。何せここには紙がないから言いたいことをまとめようにも上手くまとめられないのだ。


「キミほんと素直だよネェ。ま、いいケド。んじゃ最初の一言だけなんか言ってヨ」


「さ、最初の一言!?」


 無茶ぶりにも程がある。

 いや、ジン的には温情というか、優しさの結果だというのはわかるのだが。それはコミュ障にとっては大変困難な事柄である。


(最初、最初の一言って……な、何を言えば? とりあえず皆がこっち見て、話を聞く気持ちになってくれればいい、のよね? ……そ、そんな校長先生みたいなこと無理では……えっと、初代国王との約束で、あ、この人はジンで、敵じゃなくて……あ、人じゃない……ええと? ええと?)


 頭の中で「ジン」とか「敵ではない」といった単語がグルグルと回るものの、きちんと言葉としてまとまる気配が一向にない。

 が、ジンからの圧を感じる。それだけでなく、イース達からもチラチラと視線を感じるのだ。それが依織を余計に焦らせた。


「あのっ! この人! 初代国王のマンティコアの友達で、約束のジンを……えと……あれ……?」


 決死の思いでわちゃわちゃとした一団に声をかける。が、後半になるにつれて勢いがなくなり、ついには自分がナニを言っているのかわからなくなってしまった。

 焦りまくったせいか思いがけないほどに大きい声が出て、何とかわちゃわちゃ集団を静めることはできた。だが、それは同時に彼らの注目を一身に集めることになるわけで。


(ま、待って。こっち見ないでイケメン集団!!)


「マンティコアといえば伝説の魔物だろう? それがどうしたというのだ」

「ジン!? ジンって言いましたイオリさん! そこのとこもっと詳しく!」


 先ほどまで説教をする人される人になっていたはずのエーヴァとナーシルがそろってこちらに問いかけてくる。他の面々も言葉は発していないが聞きたいことは山ほどあるといった表情だ。

 無理。

 依織の頭の中がその二文字で占められる。


「……ほんと、アイツと同じニンゲンとは思えないよねェ、キミ。アイツは口だけは上手かったからさァ」


 アワアワしている依織に苦笑交じりの独り言を呟いたジンが、突如ぬるりとゴーレムの中から姿を現した。デカイイケメンの登場である。

 依織と彼らの間に現れたため、デカイイケメンの顔面を直視するという生命の危機は間一髪で逃れられた。後ろ姿だけでも十分にイケメンオーラが出ているのは流石ジンというところなのだろうか。


「全然紹介できてないケド、今彼女が言った通り、ボクがジンだよ。あと君タチの言う初代国王とやらの知り合いっちゃ知り合いだネ」


「それは真、ですか?」


 恐る恐る、といった具合にイースが問いかけた。他の皆はその問いかけに対して固唾をのんで見守っているような感じである。


(確か現在の王様がデーヴァター三世さんだっけ? この国って皆愛国心強そうだし、その上初代さんってすごく尊敬されてるっぽい雰囲気があったよなぁ。なんだろう、歴史上の推しの知り合いがいた、みたいな感じなんだろうか)


 一方、その初代国王様に対しては気安いというか、ちょっと悪態つきたい感じのジンは少々気に障っている様子だった。


「嘘ついてどうすんのサ」


「では……」

「あの建国の話って本当だったんだ、すげぇ」

「やはり初代様は素晴らしい方だったのだな」


 向こう側でワイワイと様々な言葉が発せられる。声の情報量が多すぎて、依織は既にキャパオーバーしてしまった。

 わかるのは、彼らの視線がジンに向いたため、呼吸がしやすくなったことだけ。

 ひとまず注目を浴びるという地獄のような環境から脱出できたことにホッと胸を撫で下ろす。

 だが、この状況はあまりジンには好ましくなかったようで、声音に不機嫌さがのる。


「あぁ、もううるさいナァ、話聞く気ないなら帰ってくんなイ?」


 この一言に、場が一気に静まり返った。


(ジンってマンティコアと同じくらいこわい、って認識でいいのかも。ナーシルまでもがちゃんと黙っちゃったものね。面積が大きいと圧もすごいんだなぁ)


 実際はジンが魔力で圧力をかけたのだが、どうにも魔力感知方面に疎い依織はそれを「イケメン独特の圧」と取り違えていた。よく見れば年若いヴァータやザリなんかは顔色が悪くなり、冷や汗もかいていることがわかるのだが。

 残念ながらイケメンを良く観察する、などという自殺行為を依織がするわけもない。


「ふぅん、多少魔力は感じられるんだネ。だったらもう少し早く来てほしいところだったケド。まぁいいや。トニカク、あのオーサマとかいうのになったヤツと約束したマンティコア退治のために起きてきたんだケド、なんか倒しちゃったんだっテ?」


「その節は大変申し訳ありませんでした」


 チラリとこちらに目線をよこす巨大なイケメンことジン。謝罪の言葉だけはスルリと出てくる依織であった。

 そんな依織を見て、ジンは気付かれないようにひそりと笑った。


「まぁそれはいいんだケド。このボクであってもアイツには苦戦するかなーと思って魔力を溜めておいたんだよネ。それが不要になっちゃったってことだからさぁ。どっか捨てる場所ナイ? それがボクが一番聞きたかったコトだったんだけど、この子異邦人デショ? 地元のキミ達に聞いた方が早いと思ったワケ」


「あぁ、それで……」


 納得して依織は小さく頷いた。

 確かにそれは自分にわかる事柄ではない。だからジンは彼らの前に姿を現す気になったのだろう。


「お、お待ちください。質問を、よろしいでしょうか」


(すごい、エーヴァって人、こわくないのかな。このでっかいイケメン。……もしかしてイケメン慣れしてるのかも……)


 かなり緊張した面持ちでエーヴァがジンの前に進み出た。

 対照的に、イケメンが多すぎるせいか明後日の方向に誤解をしたままの依織。


「エー。まぁイイケド。何?」


「ありがとうございます。その、不要になった魔力というのは捨てるとどのようなことが起きるのでしょうか?」


「そりゃマンティコアを一撃で粉々にするくらいの魔力だからねェ。ドカーンって感ジ?」


「えっ……ど、どかーん?」


 突然の刺激的な擬音に思わず依織が呟く。それを聞き取ったジンは大きく両手を広げて見せた。どうでもいいがイチイチ動作が仰々しいのは何故なのか。ゴーレムインアウトどちらであっても彼のアクションは変わらないらしい。


「そう。ドカーン」


 マンティコアを粉々にするくらいの魔力が、ドカーン。

 どう楽観的に解釈しようとも、厄介な予感しかしない。


【お願い】


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