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18.名誉魔導士と癒しの保護者

小説・コミックス好評販売中です。是非よろしくお願いいたします!

更新は毎週金曜20時予定です~。


(どう、どうしよう!?)


 この場所に来る前はやる気満々な姿を見せてくれていたシロ。この世界に転生して以来ずっと頼りにしていた彼が、まさかお願いを聞いてくれない日がくるだなんて思ってもいなかった。


「シロさーん? えっと、だめ?」


 思わずしゃがみ込んでシロと目を合わせる。シロに目はないので、そういう気持ちになっただけだが。

 すると、シロの核がスススとあらぬ方向に動いた。まるで、人間が目を逸らす動作をしたかの如く。それに、なんとなくシロから「ちょっと今は不在ってことにしたいかなー」みたいな波動が伝わってくる。

 こんなことは初めてで動揺してしまう。


「シシシシシシロ、どうしてー!?」


「イオリさん?」


 魔力の動きが全くないことを不審に思ったのか、ナーシルがこちらを振り返る。


「ナ、ナーシル! あのっ、シロ、シロがイヤって……えっと、どう、どうすれば……」


 正確なニュアンスは、イヤではなくちょっと知らんふりしたいかなー、みたいな感じなのだがそれを伝える術を依織はもたない。


(シロが反抗期(?)なら自分でどうにかしなきゃ……。えっと、えっと、生け捕りにする、には……)


 生け捕りといえば頭に浮かぶのは「お縄を頂戴する」的なセリフである。頑丈なロープで縛ってしまえば相手はそう簡単に動けないだろう。

 しかし、今対峙しているのは岩でできたゴーレムである。なんだか力がとても強そうに感じるし、そもそもこの場には頑丈なロープなんてものはない。錬金術でどうにかするにしても、ロープの材料になりそうなものが思い浮かばないので却下だ。

 周囲の岩の形を変えて足元を固めてしまう、という方法もある。これも良く砂漠でやっていたことだ。足の速い魔物にはかなり有効だった。しかしそれは場所が塩が豊富に含まれた砂漠でやったこと。今この場で似たようなことをすると、どうしても地形を変えることになる。やりすぎない自信がない上に、岩でできたゴーレムにその拘束が通じるのか? という疑問もあった。

 ウンウンと頭を悩ませていると見かねたナーシルが再び声をかけてくる。


「イオリさん、捕獲が難しいのであれば仕方ありません! 倒しましょう!」


「うぇ!? あ、はい!」


 しかし、ここでも問題が浮上する。

 依織は今まで全く魔法を上達させようと思ったことがない。何故ならば、シロがいれば塩魔法で戦闘は事足りたからだ。シロにお願いして、断られたこともない。

 だが、今は何故だかシロに塩を出してもらうことができないのだ。

 その状態でできる、依織の攻撃魔法。

 まず、暴走しても周りに被害を及ぼさないことが大前提だ。その観点でいくと、火魔法や風魔法はよろしくない。特に火魔法は無駄に大きな炎になって、坑道の貴重な酸素を使いつくしてしまう羽目になるかもしれない。風魔法は巨大なかまいたちを起こした挙句、坑道のあっちこっちを傷つけて崩落の危険が考えられる。

 できたてほやほやの電球魔法は直接的な害がないかもしれないが、そもそもゴーレムに目くらましが効くのかが非常に怪しいところだ。逆に味方の目をくらませてしまう可能性の方が高い気さえする。


「ええと、ええと。あ、そうか、分解、すれば……」


 ゴーレムと言えど、もともとは岩である。錬金術で分解してしまえば良いのだ、と思い付きトコトコとゴーレムに近づこうとする。

 が、その行動は当然ながら味方に阻まれた。


「何故近寄ろうとする!?」


「イオリ様、下がってください!」


 護衛役のイースとザリの二人に同時に注意されてしまった。場面が場面だけに、怒鳴られているようにすら感じてしまう。どう考えても戦闘相手に無防備に近づこうとした依織が悪いのは確かだが。


「で、でも、近づかないと、あの、錬金術、できない」


「な、なるほど? いやでも、だからと言ってゴーレムに近づいちゃダメですよ! ……ダメですよね、イース隊長」


「う、うむ。となると、ナーシル、そちらで討伐は可能か?」


「できますよー。でもー……」


 話題を振られたナーシルの言葉の歯切れが悪い。それにチラチラと依織の方を見ている気がする。

 そんなナーシルの様子を見て、ヴァータがくわっと目を見開いた。


「ナーシル様!? もしやあなた『魔女様の分解見たいな~』とか思ってないでしょうね!?」


「ギクッ!! いえいえいえいえ、そんなまさかははははは。でも見れるものなら見たいじゃないですか! 自分の知らない魔法ですよ!? ヴァータくんは見たくないんですか!? 未知の魔法を!」


 思い切り図星を指されたらしいナーシル。どうにか誤魔化そうと前半は頑張っていたが、後半はもはや開き直っていた。開き直った上でどうにか道連れを作ろうと必死である。そんなに見たいのか、未知の魔法。


(未知のっていうけど……分解だから塩水のときと変わらないんだけど、な? あ、でもゴーレムは魔法陣描かせてくれないだろうから直接魔力を送り込んで……いつだかの洞窟作ろうとしたときっぽい感じになるかも? そっか、それは見せてないかも)


「えっ……それは……。えーと、いやでも……」


 未知の魔法というワードで揺れ始めるヴァータ。沈黙を守っていたナウマですらも似たような表情をしている。やはり魔法部隊の精鋭として集められる人達はナーシルに負けず劣らずの魔法馬鹿なようだ。

 ふと、先日話題に上がったエーヴァという人もそうなのだろうかと考えてしまう。もしそうなのであれば、会うのは遠慮したいところだ。


「そんなこと言ってる場合ですか!? ってか、魔女様を危険な目に遭わせたら後が怖いに決まってるでしょう!?」


 坑道内にザリのツッコミが響き渡る。狭いため、反響効果も乗って良い具合だ。

 あと依織個人としては『後が怖い』というワードにツッコミをいれたい。が、今はそんな場合ではなさそうだ。


「ちなみにイオリ殿、自身の身を護る魔法などは?」


「イースさん、えと……ない、です」


 今まで敵に近寄ったことなど全くない。近寄る前に塩で固めるのが常である。ならず者などの人間だった場合はとりあえず風魔法でどこぞまで吹っ飛んでもらった。そもそも自分ではなくトリさんが倒したり追い払ってくれたことも多い。

 今まで身を護るというシチュエーションは皆無だったのだ。


「であればその方法はナシだ。魔法部隊に大人しく任せよう」


「はぁー。ですよね、いい機会なのにもったいない。とは言ってられませんか。ナウマ、ヴァータ両名は周囲の環境保護をお願いします。整い次第私が」


「「はいっ!」」


 ナーシルが指揮官らしく、二人に指示を出す。その姿は珍しくかっこよく見えた。

 命じられた二人が杖を構え、何事かを詠唱し始める。


「あの、ご、ごめんなさい。まさかシロが……」


 突然シロが反抗期を迎えるだなんて思ってもいなかった。

 思わず非難がましい目をシロに向ける。


「……あ、あれ?」


 当のシロはと言えば、ゴーレムと向かい合ってプルプルと震えている。この世界でも最弱と名高いソルトスライムと、攻略が難航するゴーレム。

 それらがなんというか……。


「共鳴してる? ……あ、ちょ、ちょっと待っ……」


 シロとゴーレムの妙な動きに、思わず依織は割って入った。


【お願い】


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