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6.コミュ障とトモダチ


「つまり、あのガルーダはあなたの友人である、と」


「ひゃい…」


 ここ数時間で、あちらの翻訳能力は大分あがったように思う。依織のコミュニケーション能力にあまりにも難があるため、察せざるをえないのが正直なところなのだろうが。


 あのあと、依織はトリさんとシロによる襲撃をなんとか宥めた。宥めたというか、泣きついたというか。それでなんとなくわかったことなのだが、トリさんとシロはどうやら国軍ご一行様のことを敵襲と勘違いしたようなのだ。そして、依織を守るために行動してくれた、というわけだ。

 それ自体はとても嬉しいし、ぶっちゃけ敵襲のような気もする。が、それをやるとあとあと依織が不利になるかもしれない、ということを切々と訴えてとりあえず現状は小休止という形になった。


「いや、まさかガルーダを使役する人がいるとはなぁ。

 もしかして、ならず者追っ払ってもらったりした?」


 思い返せばそういうこともあったかもしれない。コクコクと頷いて見せれば、一行はなるほど、と納得した。


「そりゃ魔女って言われるわ」

「ガルーダ使いじゃあなあ…」


 トリさんはどうやらガルーダという種族らしい。やけに大きい鳥だなとは思ったが、異世界なのでこんなものかと思っていた。爪もクチバシもとても立派で、何より金から赤へのグラデーションがかっこいい鳥だ。大きさは依織よりも少し小さい程度だろうか。意思の疎通がきちんとできれば背中に乗せて貰えないだろうかと思ったことは一度や二度ではない。ただ、意思の疎通が全く出来る気がしないので言わなかったが。


「ガルーダっていうのはこの辺りに住んでいる魔物でね、とにかく好戦的なんだ。多分独自のテリトリーがあって、そこに入ってきた人間を攻撃しているって話だけど生体は詳しくは分かっていない。

 わかってるのは恐ろしく強くて、きちんとした戦闘力を備えてる集団じゃないと対処が難しいことかな」


「…はぁ」


 トリさんがそんなにも強いだなんて依織としてはイマイチピンとこなかった。最初に会ったときはボロボロだったから強い印象があんまりない。ただ、トリさんは褒められてちょっとまんざらでもなさそうだった。


「で、そちらの白いスライムは砂漠でたまに見かけるけど…まさか飼ってる人がいるとは思わなかったな」


 対するシロはまんまスライムだ。

 スライムはこちらの世界でも良く見かける魔物で、さまざまな色や形をしているらしい。環境への適応能力が高い一方で非常に弱い。そのため、大繁殖をして生態系を壊したりしない限り放置されているとのことだ。

 どのスライムにも共通する点は不定形な体と、その体のどこかに急所と呼ぶべき核があること。シロはやけに弾力のありそうな半透明の塩の結晶のような体と、ちょっと見えにくい核がある。ちなみに核は体内のどこでも移動可能らしい。


「あ、あの…シロなんですけど。

 オアシスの維持にすごく役立ってて…」


 何度も心の中で反復した言葉を口から出す。シロのことを説明するなら今だ、と思ったのだ。

 シロはソルトスライムといい、塩分を主食としていること。先程のように余剰分であれば塩を出すことも出来ること。なにより、水や土から塩分のみを食べることを伝えた。

 練習をした言葉なら口に出せる。それは前世の就活練習でわかったことだ。

 ただし、それをしたあとは物凄く疲れる。


「つまり、このオアシスの維持はこのスライムのお陰ということか…。スライムと言えば取るに足らない生き物という印象が強くて騎士団のレベル上げにすら使われていなかったが…」


「あの、だから…。

 都のオアシスが縮小化している原因が塩にあるのであれば、シロを連れていけばきっと解決するんじゃないかと…」


「しかし…このスライムは君が使役してるのではないか?」


「し…えき?」


 使役とは、自分以外の者を使って主に雑用をさせること、だっただろうか。

 そういえばトリさんのときもそんな言葉を使われた気がするがスルーしてしまった。


「ええと、テイムというか。

 このスライムは君と契約した獣魔だと思ったのだが…」


「……シロ?」


 テイム、と言われても現代日本人の感覚ではわからない。僕と契約して塩を食べてよ、と言った覚えもない。覚えがないから言われても答えることが出来なかった。そのため、一番わかっているであろうシロに問いかける。

 するとシロはプルプルと震えた。彼(?)なりに返事をしてくれてるのだろう。が、スライムには手も足もなく、全ての動作が震えるに通じる。

 つまり、わからない。


「ええと…肯定なら縦に、否定なら横に震えて? あ、わからなかったら動かないでね?

 私、シロをテイムしてるの?」


 プルプルと横に震えるシロ。


「協力関係、だよね?」


 プルプルと縦に震えるシロ。


「横からすまない。こちらからも質問していいか?」


 少し黙ってから嫌そうに縦に震えるシロ。先程は小刻みにプルプルしていたが、今の問いにはめんどくさそうにブルンブルンと大きく波打っている。その様子に苦笑して、イザークは質問を続けた。


「彼女と一緒であればこちらに協力して貰えるだろうか?

 具体的に言うと、一緒に王都に来て貰い、此処より大きなオアシスの塩分を取り除いて欲しいんだ」


 ドロンドロン、とでも言えば良いだろうか。シロの表面が縦でもなく横でもなく波打つ。そして、核がまるで目のように依織の方に向いた。


「えっ…えっ?」


「…もしかして、彼女次第、ということかな?」


 イケメンはスライムとの意思疎通まで出来るのか。イザークの問いかけにシロは縦に震えた。

 つまり、選択権は依織に移ってきたというわけだ。


「わ、わたし…? でも、あの、えっと…」


 行きたくない。非常に行きたくない。

 されど、角の立たない言い方がわからない。どうすれば怒られないか、どうすれば無礼打ちをされないか。そんなことばかり考えてしまう。


「あの…この家を空けると、すぐ荒れちゃうし…」


「確か、スライムは分裂出来たよね。分裂体を此処に置いて、塩の浸食を止めて貰うことはできるかな? シロ」


 そんな高度な技は初耳だ。と、叫ぶ前にシロが勿論だ、とでも言うように縦に震える。

 次の瞬間、シロはポコン、という効果音とともに増えた。その数五匹。そのどれもが「どうだ、エライだろう」とでも言うように震えている。

 確かにこれだけ居ればオアシスの環境は守られるだろう。


「で、でも、盗賊の人、とか…」


 まだ往生際悪くあがいてみる。

 実際とられてこまるようなモノはあまりない。織機だけは惜しいと思うけれど。

 だがそんな依織の一縷の望みもあっさり砕かれてしまった。


「恐らくだけど、ここはそのガルーダの縄張り内なんだろう?

 だったら巡回して貰えるように頼めばいいんじゃないかな?」


「えっ…」


 思わずトリさんの方を向けば、こちらもこちらで「任せろ」と言いたげな表情をしている。というか器用に翼をサムズアップのような形に変えているような…。

 そもそもこの二匹は人間の言葉が通じるのか。

 言葉を話すということすら全くしていなかったため気がつかなかった。


「であれば、ここのオアシス一帯はガルーダとスライムの分裂体に任せてもなんとかなるということになりますね」


「戦力としてはガルーダがいる時点で申し分ないものね。その辺にうろちょろしているならず者なら瞬殺してくれるだろう。

 それじゃあそういうことで、イオリ殿にはちょっと苦労かけちゃうかも知れないけれど王都までよろしくね」


 ギョエエとトリさんが同意するように鳴き、シロの分裂達が任せろと言うかのようにプルプル震えてみせる。

 もはや依織の退路は全て塞がれたのだった。


(どうして!? どうしてこうなっちゃうの!?)

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[一言] トリさん、ガルーダなのね 龍食べたりします?
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