1-4 勇さんの妹は二人いる?
--------------前回の会議の続き-----------------
「マリーちゃんね、わかったわ。よろしくね、マリーちゃん。私は松前楓。気さくに楓って呼んでいいわよ」
「俺は金剛 照義だ。一応言っとくと23歳だからね。よく、実年齢より老いてるように見られるらしいから、一応ね……すごい、驚いてる顔してるね」
おっさんが言うようにマリーさんは驚いて口を少し開けていた。その直後疑う眼差しでおっさんを見ていた。これは、おっさんの年齢を聞いた人がほとんどする反応だから、気にすることはない。
「おっさん、少し傷ついちゃうよ」
と、ケラケラ笑いながらだから、全くそんな落ち込んでいるように見えない。てか、落ち込んでないだろ、おっさん。
「そして、このごく普通な男は山田勇あ……」
「山田勇だ!」
自分は無理やりにでもおっさんが自分を紹介することを遮った。
「皆からは勇って言われてるから、マリーさんもそう呼んでほしい。山田だといろいろ被っちゃうしね」
自分は今マリーさんが自分に向けている怒りを感じる視線を、おっさんに向けた。
すると、おっさんはまたケラケラ笑いだした。
「必死になってるゆうちゃん可愛いわよ」
楓さんがクスッと笑い、最後に雪丸の紹介をした。
「この笑顔が素敵なかわい子ちゃんは雪丸よ。小学生ぐらいの身長だけど、れっきとした中学生だから仲良くしてあげてね」
その身長145㎝のDカップというアンバランスボディーの雪丸は、楓が言っているように超絶満面の笑みで楓の後頭部にめがけて靴ベラをフルスイングして、そのままその笑顔でこちらを見渡した。
「わたくしが黙っていたら、随分と話が脱線していないでしょうか?」
楓はかなり痛そうにうずくまっていた。その光景を見ていた自分たちは一同揃って、頭を下げた。マリーちゃんも空気を読んで下げていた。
「今回の会議はですね、お兄様が見ず知らずの女性を夜分遅くに連れ込んでいたということですわ」
「いや、連れ込んでいたというか、なんというか……」
「なんですか?」
このままでは、自分は破廉恥な男と家の奴らに思われながら生活することになってしまう!
自分はそんなことになったらそれこそ部屋から出られなくなるので、ここまでにあったことをすべて話すことにした。
「……てことで、仕方なく家に連れてきたんだ」
「なるほどね、つまりゆうくんはマリーちゃんを放っておくことができず連れてきたのね」
とりあえず、玄関までにあった話を皆に伝えた。
「話の筋もあっているようだし、勇ちゃんが縁ちゃんの名前を出すぐらいだから、俺は本当のことだと思うぜ……それにしても、よくこんな時間に縁ちゃんに電話したな、勇者だな」
「わたくしも今回の会議にお姉様を呼ぶ勇気がなかったから、そこは同感ですわ」
雪丸はもしこの時間から縁を起こしたらどうなるかを、考えただけで震えてしまっている。
「ですが! それと家の中で抱きついている話とは繋がりませんわよ」
「いや、抱きついてないから! それは、マリーさんのことを貧ny……」
と、続きを言おうとした瞬間、今度はマリーさんの方から威圧を感じた。
恐る恐るマリーの方を見てみると、次言ったら命はないと言わんばかりの顔をしていた。
「マリーさんのことがなんですの?」
雪丸も雪丸でずっと笑顔というマスクを被りながら、仮面の下では怒りの感情を感じられる。しかも、いつもならここで冗談の一つでも言うような他二人は、マリーさんと雪丸の雰囲気に圧倒されていて、何も言わずにいるし。
「えっと、だから、そのですね……」
どうしようかと困り果てているときに、急に二人とは比べ物にならないほどの、死を感じるような気配をリビングの外から感じたのだ。
その気配の持ち主は一歩、また一歩と、足音を立ててリビングに近づいてくることが分かった。そして、それが近付いてくるにつれて、自分と雪丸と楓とおっさんの顔色は青ざめていき、マリーもこのただならぬ気配に道中と同じように小動物のような様子で小刻みに震えていた。
「……やばいんじゃない? 俺たちが何回か大声出したからか?」
と、冷や汗が多いおっさん。
「照義さんが、高らかに笑っていたからじゃないかしら?」
と、責任逃れをする楓さん。
「お二方のやり取りのせいですわ」
と、笑顔で口端をひきつる雪丸。
「……」
小刻みに震えるマリーさん。
各々の見苦しい擦り付け合いを他所に、死神は遂にリビングのドアノブに手をかけた。
「ねぇ、皆さん……」
その一言で、リビングにいた全員の体が凍った。
ドアはゆっくりと開き出し、死神の顔は暗く、しかし確かに憤怒していることがわかった。
そして、一言。
「こんな時間に……ナニ、シテルノ?」
その後、自分たちの恐ろしい夜が始まった。