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山田家は裏社会?  作者: 佐藤真矢
3/19

1-2 彼はどうやら変態のようです


「静かにしてくれよ……」


あれから自分は、話しかけられたからには無視もできず、仕方がないから家へ連れてきた。


最悪の事態を防ぐために、事前に家に入ったら静かにするように注意もした。


「万が一にも、あいつらに見つかったら面倒なことになるしな……」


「えっ?」


「いや、こっちの話」


金髪っ子は何故か異なっている色をした両目を潤わせながら、家の中を見渡していた。


「……」


断じていうが、下心など全くない……本当だよ?


たとえ、控えめに言っても美人なこの金髪っ子が潤んだ瞳で「家へ泊めてください」や「なんでもするから」など魅惑のセリフを言われたとしても、この不動心の代名詞である山田は、これっぽちも心どころか、いろんな所が反応していないです……いや、だから本当だよ?


そして道中どんなに話しかけても体をビクッとなったり、目線が定まらず泳がせたり、まるで小動物みたいな反応で可愛らしい動きをしていても、前世が菩薩だった山田にとってはなんていうこともないことだ……だから、本当だって言ってるでしょ!!!!


……ごめんなさい、やっぱり少しは期待してました、はい。


だって、仕方ないじゃない、男の子だもん。


でも、この子とのことで少しでも妄想すると必ず結末はバッドエンド改め、デッドエンドになってしまうのです。


理由は後々分かるから、今は置いといて、道中から表情が緩んでは真っ青になる自分に不信感を抱いてそうな表情で金髪っ子が山田家の玄関で佇んでいた。


「じゃあ、えっと……」


「はっ、ひゃい!にゃんですかでございまするか!?」


金髪っ子は先ほど自分が注意したことを軽く無視して、声を張って動揺していた。


「シッーーーー!静かにぃぃ!!」


慌てて人差し指を口の前で立て、静かにするようにジェスチャーで伝えた。そして、家中を見渡し誰も起きていないこと確認した。


それで金髪っこを見ると首を必要以上に縦に振っていた。


「オーケー、いい子だ。とりあえず、今は何も言わずに自分についてきて。ごめんだけど今日は風呂に入る余裕はなさそうだから、明日にしてほしい」


「そ、それはつまり風呂に入らずやると!!??」


また、すごい動揺したのか声高らかに悲鳴みたいな叫び声を発した。


「ち、違うから!! やらないから! 本当にやらないからね!!」


「人畜無害そうだから、最悪でも普通にできると思ってたのに、人は見た目によらないのね。人選を間違えちゃったわ……これが邪神たちが与える試練なのか?」


金髪っ子は控えめな胸を隠し、まるで獣を見るような目で睨んできた。そして、後半は言っている内容わからない。


「だから、誤解だって! 自分は君になにもしないから。ただ、静かにしてほしいだけで!」


「どうだか、男はみんなモンスターと聞きます。脳と股間が繋がっている生物の言うことなんて信用ならないわ……でも、これが試練というなら仕方がないですっ! 匂いフェチですか!? この、変態!」


「本当に違うんだって! それに、君みたいな貧乳に手を出さないから!」


……空気が一瞬凍った。


「……今、なんて……」


「なんてって、いや、だから……あっ」


弁解で必死になりすぎたためか、思わず言うつもりのないことが口から零れてしまった。


金髪っこを見ると、さっきまでの小動物のような可愛らしさはどこへ行ったのか、むしろ小動物を狩る側のような鋭い視線を向け、こちらににじり寄ってきた。


「あのぉ、ここは日本なので土足で上がるのは、どうかとぉ……思います、はい……」


こちらの声が届いていないらしく関係なく歩みを止めなかった。


玄関は電気をつけていないため、暗いのと相乗して、恐怖が倍増していくのが自分の冷や汗の量で分かった。どうやら、とてつもない地雷を踏んだらしい。


「暗き闇より燃える漆黒の黒炎、聖を貫く死の聖槍を合わせ持つ雷号のグングニルよ、彼のものに無慈悲な地獄を……」


金髪っ子はブツブツと呟きながら、静かにどこから出したかわからないスタンガンをオンにしたまま一歩、また一歩と着実に距離を詰めてくる。


黒多くない?聖を聖で貫くの?とかいろいろツッコミどころがあるセリフだったが、今は身の危険を回避すべく金髪っ子が一歩近づくたびに、自分は一歩後退し、説得を試みた。


「いや、ごめん。つい、口が滑ってしまった(1Hit)。でも、貧乳でもいいじゃないか(2hit)。別におかしくない、少し人より胸が小さい(3Hit)だけで悲観することないし、世の中にはそういうのが好きな人だっているって聞くよ(4Hit)。大丈夫、貧乳でも問題ないよ!(5Hit)」


頑張ってみたが、説得空しく、何故か5段階で怖さが増してきた……これは、死ぬッ!


「大丈夫よ……痛みなんてすぐに終わるから」


「それ、サイコパスな人がよく言うセリフ!」


そして、ついに背中が壁にぶつかり下がれなくなり、金髪っ子は自分が逃げないように胸倉を掴み体を密着させてきた。その時、救いの声が階段の上から聞こえた。


「兄様? 帰ってこられたのですか?」


違った、地獄への招待状だ。勘違いされると困るので今ここで言うけど、縁ちゃんが自分を呼ぶときは兄さんである。よって、この声の主は賢い人なら分かるでしょう。


声の主はゆっくりと階段を下りてきた。


「や、やぁ、雪丸、起きちゃった?」


小柄な容姿、白く綺麗な肌。普段は髪を右と左でおさげにしているが、夜中なので長い黒髪と身長に釣り合わない豊満な胸部を揺らしながら、自称「山田 雪丸」は静かに一段、また一段と下りている。


「兄様、ユキと呼んでくださいと何度も言ってますのに、それに兄様にお使いを頼んだのですから、頼んだ本人が悠々と寝たら失礼ですわ」


それならこんな時間に頼まなかったらいいんじゃないですかね、といつもなら言いたいところだが、今はそんな余裕がない。幸い金髪っ子は突然の第三者が来て脳内処理が終わってないのか、固まったままでいる。問題は、この状況を見られるのは非常にまずいということだ。


傍から見ると、今の自分は夜中に女の子と体を密着していることしかわからないだろう。


下手したら、勝手に家に女を連れ込んで玄関でイチャイチャしているように見られないこともない。そんなことになったら、自分は、本当に、終わる……。


「そのことならっ……」


……時すでに遅し。


自分が何か策がないか考えているうちに、雪丸の容赦のない進行は完了していて、すでに自分たちの姿が目視できる範囲まで来ていた。


そして、しばしの沈黙の後に満面の笑みで、しかし先ほどの金髪っ子にも引けを取らないぐらいの威圧感で、雪丸は自分の顔を見て言った。


「言い訳をどうぞ♡」


あぁ、最悪の事態で、デッドエンドだ。


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