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山田家は裏社会?  作者: 佐藤真矢
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1-12 私たちの会話

勇の部屋で闇の盟約、カオス・トルティーヤ条約を交わしてから時刻は2時間を経過していた。


我が誰だと? クククッ、我は深淵なる闇を司る右目「紅き漆黒の終焉眼」と死を宣告する左目「生者の行進碧眼」の持ち主である、「純粋なる死神」のルシウス・ベルフェゴールだ......仮初めの名はマリー・バレンヌよ。


今は訳あって、この表社会に溶け込むため、仮の女子高校生の体と、人の名を利用しているけど、来たるべき時が到来したら、真の姿を披露し、闇夜を駆ける死神となるの。


宿敵である「聖へ導く者『ゼウス3世』」を葬るまで、私の戦いは終わらないわ。


今は両者の力関係は均衡しているが、それも今日までのこと、なんせ異世界から来たと言う『紅瑠栖 雷炎』を偶然にも味方につけることに成功したからね。新たな敵が現れたけど問題ないわ。私と彼の者の力を合わせれば、戦争の終結も時間の問題よ。


そんな日夜戦っている私だけど、今はその紅瑠栖雷炎こと優の家に、温情で住まわせてもらっているの。


住人は殆どがいい人ばかりで、見ず知らずの人ましてや外国人を快く引き入れてくれ、自然に接してくれている。


今の私には感謝の一言しかない。けど、1つ問題があるの。それは、


「あら、その程度の手際でお姉様のお手伝いとは、逆にお手を煩わせてしまいますわ」


と、こんな嫌味を笑顔でサラッと言ってくる奴がいること。その名は雪丸。小学生並みの身長の中学3年生。


こいつはゼウス3世より憎むべき敵。いつかその仮面を引き剥がして、悔しい顔にさせてやるんだから。


私は野菜を刻みながら反抗した。


「何よ、ヴッ。こういうのはあまりしたことないのよ。グスッ、見てなさい、すぐに、グスンッ、あんたより上手くなってやるんだから......ズッ」


「玉ねぎ切りながら、号泣されて言われましても」


雪丸は苦笑いしながら、段取りよく、水に浸けていた野菜の水切りをしていた。


「ククク.....」


ここまで差があるとは、こんなに屈辱的な気持ちになったのは初めてだわ。


何も言い返すことができず、玉ねぎとは別の原因の涙が溢れ始めた時、優しい声をかけてくれる小野小町のような女の子が現れた。


「初めは誰でも苦戦するものですよ。料理は継続して作れば必ず上達しますし、マリーさんならすぐにできるようになりますよ」


そう言いながら、私に対して暖かい微笑みを向けてくれた。


縁ちゃんは既に、玉ねぎ以外の野菜を全部切り終え、コンソメスープを完成させていた。


「縁ちゃん......そこの小学生と本当に同じ歳なの? 」


「それはどういう意味かしら?」


なにやら、ちんちくりんが少しだけ笑顔を痙攣らせているけど、そんなことはどうでもいいのよ。


なんていい子なの、縁ちゃん。それに家事スキルが高すぎる。そこの小学生と一緒で和風美人だけど、中身の格が違うわ。


小学生は中身の腹黒さが長い黒髪に出る程だけど、縁ちゃんは慎ましくして、優しく、しかし芯の強さを感じさせる。まさに平成の小野小町みたい。あと、関係ないけど短い黒髪が似合いすぎている。


「...ちゃん......」


縁ちゃんは何故か照れ臭そうに頬を掻いていた。


「どうしたの縁ちゃん?」


「縁ちゃんはねぇ」


台所に近いソファーで、ソファーの向きとは逆向きに膝をついて、もたれかかっていた楓は、ニマニマしながら縁ちゃんの姿を見ていた。


「縁ちゃんがどうしたかわかるの? 楓さん」


「縁ちゃんはマリーちゃんの『ちゃん』付けに照れてるのよ」


「楓さん!」


説明してくれている楓さんに向かって大声で叫ぶ縁ちゃん。


「ちゃん付けダメだったの?」


「普通は時間を置いて親しくなったら呼ぶものですわ。だから急に呼ばれたからお顔を赤くされるのも無理がないですわよ」


と、こちらもクスクスッと笑いながら野菜を盛り付けていた。


「雪丸さん......」


縁ちゃんは肩を震わせながら、静かに小学生の方に向きおたまを大きく振り上げた。


対する小学生は青ざめた笑顔で後退っていた。


「あらら、何故わたくしだけ怒らr、痛いっ! 楓さんも仰っていましたのに......」


小学生は涙目で叩かれた頭をさすっていた。


「日本のアニメでは時間なんて関係なく、親しくなったらこう呼んでいたのだけれど......嫌だった?」


縁ちゃんの優しさに少し甘えていたかもしれない。私は居候なんだから、家主の家族に対してもう少し礼節というものが配慮できていなかったかも。


そう思うと、少し申し訳なくなる。私が謝ろうとした時、それを遮るように縁ちゃんは顔を伏せながら言った。


「私は大丈夫です...その、どんな呼び方されても。縁さんでも、縁でも...縁ちゃんでも」


最後の方は口籠っていたせいで聞こえにくいけど、私は確かに聞こえた。


そして、その言葉を聞いた時、心の底から嬉しくなり思わず抱きしめてしめて大きな声を出したて言ってしまった。


「縁ちゃん萌えぇぇえええ!!」


この子はきっと聖母マリアの生まれ変わりだわ。私とは敵対関係だけど、気を許すとこのルシウスが洗礼されて聖天使に生まれ変わってしまうわ.....なんかそれはそれでかっこいいかも......


私は止まらない気持ちを表に出しながら、縁ちゃんに抱きつきながらスリスリしていた。


「く、苦しいです......」


「縁ちゃん可愛い!」


「あと包丁が近いです......」


右手に持っていた包丁を抱きつきながらまな板に置いて、空いた右腕を再度、縁ちゃんに巻きついた。


私からは縁ちゃんの顔が見れないし、縁ちゃんは嫌がっていると思うけど、抵抗が全くないので抱き続けていた。


「ふふふ、まるでゆう君みたい」


「そうかしら? お兄様の方がもっと気持ち悪いですわよ」


「それは否定できないわね」


小学生はサラダを作り終えたようで、リビングのテーブルに運んでいた。


「......それにしても、お姉様はお兄様同様、懐かれる素質があるのですわね」


「......私もそう思うわよ」


そう言った楓さんと小学生の表情は笑顔のまま崩れてはいないが、何故か意味深な雰囲気に感じた。


私は抱きついて頬ずりしながらその2人を見ていると、小学生と目が合った。


「......フフッ」


すると、小学生はワザとらしくなく、しかし故意的に小学生が作ったサラダに視線を誘導させながら、勝ち誇った表情をしていた。


「......」


その姿を見た私は名残惜しいけど、縁ちゃんを解放して玉ねぎを切ることを再開した。


急に真剣に玉ねぎを切り始めた私を見て、縁ちゃんは少しキョトンとしたが、胸中を察してくれたのか、縁ちゃんも微笑みながら料理の続きを始めた。


「それにしても、やっぱり7人にもなると作る量が多いわね」


「1人少ないですわよ、ナイチチ」


私の発言に訂正する小学生。


「うっさい!胸の話は今関係ないでしょ!!」


「おほほほ、失礼いたしましたわ。何やらマリーさんの中で私の呼び名がおかしいような気がしたので、つい」


なんでわかるの、この小学生は!?


「心を読んでるんじゃないわよ!」


「ほら、当たってるではありませんか」


「なっ!......ど、どうせ、あんただって私のこと悪いように思っているんでしょ!?」


「あらら、心を読まないで欲しいですわね」


そう言いながら小学生は相変わらずの憎たらしい満面な笑みを向けてきた。


「少しは隠しなさいよ!」


「何を仰いますか、わたくしはこのように堂々としていますわ。あなたと違って」


大きな胸を揺らしながら得意げな顔で、私の癪に触ってきた。


私は包丁を強く握りながら睨みつけた。


「下ろすわよ」


「できますかしら?」


私たちが睨みあっていると、不意に縁ちゃんが人参のみじん切りが入ったボールを私の前に突き付けてきた。


「はいはい、喧嘩は終了です。マリさん、玉ねぎ切り終わったなら、このボールに入れてもらっていいですか?」


縁ちゃんは、私と小学生の繋がった視線をボールで遮って、私たちのいがみ合いを止めたのだった。そして、その時だった。


「そっか!」


先ほどから黙っていた楓さんは急に手をポンっと叩き、思い出したように話した。


「マリーちゃんは冷華ちゃんと会っていないのね。だから7人だけしか数えられなかった......私、冴えてない?」


「冷華?まだこの家に住んでいる人がいるの」


「そうよぉ。高校2年生だからマリーちゃんとゆう君と同じ歳じゃないかしら。それよりも、私の推理凄くないかしら?」


真面目な顔で自画自賛している楓さんに、縁ちゃんと小学生ぎ呆れた顔をしていた。


「凄いですねぇー」


小学生は私からでも分かるぐらいの言葉に感情が篭っていないセリフを発した。


「感情がこもっていない気が......」


「それぐらい私でも分かりますよ、楓さん」


そして、縁ちゃんも刻んだ野菜とご飯をバターで炒めながら冷静に言っていた。


「えぇ〜」


余程の自信を楓さんが持っていたのか、急に落ち込みながらソファーの上で膝を抱え込んでいた。


その時、突然、


「来たれ!グングニル!!」


と、2階から大きな声でカッコイイセリフが聞こえた。きっと、声の主は


「何やってるんですか、兄さんは......」


「カッコイイ......グングニル......」


今度使ってみよう。


私は脳内技リストに加えながら、縁ちゃんに「皿を取って欲しい」と言われたので、棚に向かったのだった。その際、少しだけ楓さんの話に違和感を感じたのだった。


......あれ?私、楓さんに年齢教えたっけ?


皿を取りながら思い出していたが、その途中に小学生のちょっかいが入ってしまい、それ以上考えることをやめてしまったのだ


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