前世魔王は今世で魔法チートを目指す
勇者に拾われ早、3年。
我輩は聡明で可憐な美少女に育った。
勇者は3歳にしては異常な我輩の理解力に驚き、そして誉めまくった。
言語はともかく、人間界の決まり事や歴史等は聞いても面白くもなかったが…勇者が教えてくれるのだ。それはそれは、真面目に学んだ。
そして、そろそろアレをおねだりする時ではないかとタイミングを狙っている。
「アラン~、私、アレが見たいな?」
「アレ?」
あ、ちなみにだが。アランとは勇者の名前だ。
流石勇者だ。なんて、素敵な名前なんだ。
「アレ、あのアランがボッて出すやつ。」
「ああ。これか。」
アランの手から炎が上がる。
おお!!なんと綺麗な炎なんだ!!思わず感動して拍手をする。
アランと戦った時のことだが、アランは聖剣しか使わず、炎を操ることはなかった。だから、我輩は今世で初めてアランの操る炎を見たのだ。
アランが操れるのは火の属性だけらしいが、魔力は高いので火力やバリエーションは素晴らしい。
我輩は前世では魔法等必要なかった。故に使ったこともない。しかし、今世の我輩には、魔王の持つ力もなければ家来もいない。アランが始終側にいてくれるものの、何かあった時に足手まといにはなりたくない。ただでさえ我輩は3歳という身体的不利がある。ソレを補う為にも、早いと思われるかもしれないが魔法を取得しようと思う。
「アラン!!私も魔法を使ってみたい!!」
え?今さらだけど、喋り方が違うって?
当たり前ではないか。アランの前では女らしくしておかないと嫌われたらどうする!!
「魔法…か。ユエは体術はまだ身体が出来ていないから無理だし。多少魔法が使えた方が護身の為にいいか。…いや。俺がついているのだから必要ない。ユエは俺が守る。魔法が暴走してユエが怪我でもした方が大変だ。」
アランがブツブツ呟いているのが聞こえる。小さな声だが、我輩には聞こえる。この我輩がアランの声を聞き落とす訳があるまい!!アランの言葉への喜びに打ち震えつつ、
「アランとお揃い。ダメ?」
顔の前で軽く手を合わせて小首を傾けてみる。我輩がアランにここぞというおねだりをする時のポーズだ。
「!!!!!!わかった!!!!だが、習得するまでは俺の前でだけ使う約束だぞ。…見たところ魔力もかなり高そうだし、本来魔法というものは自然と目覚めるまでは待つものなんだがユエなら出来るだろう。」
「自然と?」
「ああ。例外を覗いて大抵の人間は一種類しか魔法が使えない。力が自然と目覚めるまではどの魔法が使えるかわからないから敢えて無理に魔法を使おうとするものは少なないんだ。だが、どの魔法が使えるかは調べようとすれば出来ないこともない。」
「どうやって?」
「簡単だ。片っ端から初期魔法を試してみればいい。ただ、魔法を使うことにもコツがいる。コツを掴むまでは魔法の発動が上手くいかない。つまり、コツを掴むまでは全種類の魔法を試してみないといけないという根気強さがいる。」
「わかった。頑張る。」
この日から、我輩はアランに魔法を教わることとなった。しかし、これが予想以上に難しい…と、いうか正直、うんともすんとも言わない。
この我輩がだ!!何故だ!!何故なんだ!?
「アラン…。私はカスだ!!アランが教えてくれているのに…この低落!!なんとも情けない!!」
「…………ユエ。ユエは頑張っている。それは、俺が一番わかっている。それに、ユエはまだ3歳だ。出来なくて当然なんだ。言葉が乱れる程悲観しなくてもいい。」
「アラン…私頑張る!!一種類と言わず全種類操ってみる勢いで頑張るよ!!」
「ああ、一緒に頑張ろう。後、教えていなかったが、一種類使える者と複数使える者の明確な差があるんだ。」
「そうなの?頑張ったら出来るものではないの?」
「残念ながらな。まず、魔法というものはそもそも妖精の力を使っている。その使い方は二つある。一種類しか使えない者は大抵、産まれた時に加護として妖精が与えてくれた力を魔力で引き出して使っている。しかし、稀に妖精の姿が見える者がいて、そういった奴らは妖精と直に契約して力を使うんだ。妖精自身と直に取引ができるから自分の魔力を対価にして、威力を最大まで引き出せることもできるし、複数の妖精とも契約を結べるってことだ。そんな奴らは極稀で、まず見えたとしてもそう簡単には契約してくれないと魔術師団長は言っていたが。…難しかったか?」
「…大丈夫。」
つまり、見える妖精を捕まえて使役すればいいということだろう。ならば、心当たりがある。
魔王時代に使役していた妖精達だ。
来い。火の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊
『『『『魔王様!!お呼びでしょうか!!』』』』
やはり、お前達には我輩のことがわかるのだな。
『『『『はい!!私達は魔王様のペット(モノ)ですから!!』』』』
よい心構えだ。ならば、今世では我輩と契約をし、お前達の力を存分に貸すがよい。
『お言葉ですが…契約等せずとも、我らは魔王様に力をお貸し致します!!』
『契約となると、魔王様のお力を頂戴しないといけなくなります。そんな恐れ多いことできません。』
『以前のように、我らを使役してください。』
『我らは魔王様の為に。』
わかった。それでは、今世でもお前達を可愛がる(ペット)としよう。
『『『『ありがたき幸せ。』』』』
「ユエ?大丈夫か?」
「はい!!ユエは大丈夫です!!」
ああ!!しまった!!
我輩としたことがアランに心配そうな顔をさせてしうなど…気を付けなければ!!
「魔法。使えるようになりました!!」
「は?」
「今、妖精と契約していたの!!ほら。」
アランがしたように炎を出し、水を出し、風をおこし、土を隆起させる。
アランは唖然として見ていた。口を開けていても真のイケメンはイケメンだと初めて知ったぞ。
そんなお間抜けな顔も可愛いぞアラン。
プルプル震え出すアラン。
まさか、やり過ぎたか?
「さ、さすが俺のユエだーーー!!以前からユエは普通の子と違うと思っていたがやはり、ユエは天才だ!!」
勢いよく抱き上げられ、クルクルと回され抱き締められる。
お、おお!!ほ、頬にキ、キスまで!!
鼻血はでていないか咄嗟に確かめたが大丈夫のようだ。
ああ、幸せすぎる!!
ちなみにこの後、私は興奮しすぎてアランの腕の中で倒れたのだった。




