幸せはこの手に
目の前にはアランらしき人物がいる。
ふらふらと近づいてみた。うむ。近くから見てもアランぽい。くるりと周囲を回る。360度どこから見てもアランだ。
次は、アラン(仮)にさらに近寄る。
クンクンクン。
「アランだ!!」
「どんな判断方法だ!?」
アランからの張り手が飛んできた。む、間違いない!!
ジッと見つめる。アランは気まずそうに視線を泳がせる。
「何故、アランがここに?まさか…」
我輩に会いにきたのか?
なんて言葉は聞けなかった。涙が溢れて止まらなかったからだ。
改めて愛しい気持ちが募る。いや、今まで以上に愛しく感じた。
「無理だったんだよ。…ユエと離れてるなんて無理だった。もう、離れたくない。放さない。」
ユエを力強く抱き締めるアラン。ユエは嗚咽し、それでもアランに抱きつき返した。
落ち着いてきた頃、コホンと咳払いの音でわれに返った。べリアルの不機嫌な顔とシュベルツのニヤニヤした顔にアランは慌てて離れる。ユエは気が利かないやつらだと怒っている。
「しかし、アランはこの世界には長くはいられまい。風の精霊に力を貸してもらうか…。」
「それならば、大丈夫ですぞ。アラン様は…」
アランがシュベルツの話を手で制して止めた。真剣で、不安げで、それでいて腹をくくった表情でユエを見つめた。ユエもその雰囲気を感じ、緊張した面持ちで見つめ返した。
「俺は、自分の私利私欲の為一国を滅ぼした。そんな俺でも好きか?」
ユエを危険に晒さないようにするためだけに、聖剣と言われた剣で向かい来る人間(敵)を殺していった。
「好きに決まっているでわないか!!むしろ、愛しているぞ!!…それに、我輩は魔王だぞ?人を殺めたことも魔物を殺めたことも数えきれないくらいある。」
ふん。と鼻で笑うユエにアランは少し安心したようで、それでもまだ話は続く。
「俺は…もう、人間ではないが…それでも?」
最後は消え入るような声であった。ユエは一意味が理解できないようで固まっていた。
アランが人間ではない?
そういえば、この我輩がアランの気配に気がつかなかった。この気配は…よく知ったもので…………
全てを理解したときには身体が動いていた。
「我輩のアランをーーーーー!!」
「ぐはああああー!!!!!!」
魔力を乗せて放ったパンチにより、シュベルツは吹き飛んでいった。シュベルツの表情は満足げに微笑んでおり、べリアルはその様子を侮蔑を含めた瞳で眺めていた。
「わかりましたか?」
べリアルは溜め息を吐いた後、アランに尋ねた。
アランは戸惑いを見せてべリアルを見る。
「魔王様にとってはあなたが人間かどうかなどどうでもよいのですよ。それよりも、あなたに手をだしたシュベルツ(敵)の存在のほうが気になるようですからね。」
うむうむと頷くユエを見て。アランはやっと理解し心底安心し、愛しさと嬉しさが込み上げた。
再び抱き寄せきつく抱き締める。
ユエはあわあわと慌てているが嬉しそうだ。
その様子をべリアルは見つめ溜め息を吐き眼鏡を中指で押し上げ立ち去った。その顔は主の幸せを目にしてどことなく嬉しそうであった。




