困惑ばかりが押し寄せる
ユエは目の前の資料を何度も読み返した。
見覚えのある国名に動揺する。
資料には、ある男の手により一国が滅んだと記述がある。その男の名はよく知っているものだった。
「いったい…いったい何があったというのだ。」
アランは無事なのか。怪我はないのか。
何故こんなことをしたのか。
あれから、何があったのか。
そして、こんなことをしでかしたアランは…どうなるのだ。
「…アル。べリアル!!」
机を叩き、べリアルの名を叫び呼び出す。
べリアルは一瞬で机を挟んでユエの前へと現れた。
ユエの動揺している姿を見てもわかっていたかのような反応でユエの発言を待っている。
「べリアル…この資料は確かか。」
「はい。シュベルツが確認のため赴き、確かにその目で荒れ果てた地を確かめたと。」
「そうか。…それで、これを行ったアランは…見たと?」
「ええ。彼に会ったと聞いております。」
「!?シュベルツをここに!!今すぐにだ!!」
コンコン
「入ってもよいか?」
どこか楽しげな声がドアの外から聞こえた。声の主は今話題にしたばかりのシュベルツのもの。すぐさまユエは肯定の意を返した。
「そちらの報告に来たのだが、調度よかったようですな。」
ちらりと机の上の資料を見てニヤリと笑った。その表情に苛ついたものの、それどころではないと先を促す。
「そちらの資料だが。少々内容が誤っているぞ。」
「…どこがだ。」
「ただしくは、かの国を滅ぼしたのはアラン様一人ではなく…私も手をお貸ししたのだからな。」
「それは…どういう…」
シュベルツの発言に困惑する。どうしてそのようなことになったのだ。アランとシュベルツが結託して一国を滅ぼした?
「いやはや、あのアラン様の戦いぶり!!さすが魔王様の見初めた方だ!!私でさえゾクゾクするものがありましたよ。」
思い出すかの様に斜め上に視線をやり、些か興奮した表情で話始めた。
「アラン様が人間を次々に殺め魂を汚していく姿は何と冷徹で美しかったことか!!見せて差し上げたかったですな!!それになんといっても聖剣と言われた剣が血を吸い魔剣となる様子など私が生きてきた中でも初めてお目にかかることでした!!あの瞬間はついつい私も手を止め見いってしまいまして…」
「そのような話はどうでもよい!!私が知りたいのはアランが無事なのかどうかだ!!」
ユエの発言に一瞬静寂が訪れる。次の瞬間には何故か笑いが起きた。
「ふはははは!!成る程な!!べリアルの言ったとおりか。」
「ふふ。でしょう。ですから、あなたの悩みなど杞憂だと申したのですよ。」
べリアルは口に手をあて微笑んで開けられたままのドアを見つめた。何をわらっているのだ。と怒りを露にしたユエもつられてドアへと目を向けた。
「よ、お。」
「なっ…」
そこには気まずそうに佇むアランがいた。




