幸せな時間に爆弾は投げられる
目を開けてまず見えたのがアランだった。なんということだ。幸せすぎる。
反射的にそんなことを思い、ふと先程のことを思い出して自分の唇を押さえて呻いた。
夢か?!夢だったのか!?
確かめるようにそっとアランの唇と自分の唇に触れた。
アランのこの唇が我輩の唇に…
「…………そんな物欲しそうに見るなよ。…全部奪いたくなるだろ。」
パチリと目が開き、その瞳にはすでに情欲が浮かんでいた。
「お、起きていたのか?!」
アランは慌てる我輩をよそに意地悪く笑うと、一瞬頬に唇を寄せて軽く口付けると甘い声で囁いた。
「おはよう。俺のユエ。」
「お、おおおおおはよう。アラン。」
我輩がこれ以上アランのセクシーボイスに耳を犯されないように軽く耳を押さえていると、珍しくどこか不安げな声が聞こえた。
「…なぁ。確認だけど、ユエって俺のこと好きだよな。その、恋愛的な意味で。」
「な、なななな」
真面目な顔で見つめられて、うろたえてしまう。
なんと答えればよいのか。いや、答えなど一つしかないのだが。アランをこれ以上不安げにはさせてはいけないと決して口を開いた。
「す、好き!!ずーっと前から好き!!」
「…それは刷り込みじゃなくて?」
「は?」
決して告げたのにも関わらず、我輩の言葉を否定するかのような問いに思わず低い声が出たのは仕方がないと思う。
「いや、だってさ…小さい頃から俺としか接点なかっただろ?だから、俺のことを好きだと思ってるん「違う!!私の気持ちを勝手に決めるな!!私は本当にずーっと前から…アランだけが好きなんだ!!」」
何て言ったって魔王だった頃からなんだぞ!!
とは、言えないが真剣なのだということが伝わるように必死に見つめてアピールする。
ようやく、アランは安心したようだった。
「そうか、、あのさ…実は俺…あの眼鏡が現れて…ユエの視界に他の男が写ったのを目の当たりにして…不安になって、嫉妬して…ようやく自分の気持ちに確信が持てたんだよな。」
「アラン…それってつまり、私のこと…」
「ああ。好きだよ。誰にも渡したくないくらい。自分でも不思議なくらい…ユエに惹かれている。」
「わ、私も!!私も好き!!」
感極まって勢いよく力の限りアランに抱きついた。アランも嬉しそうに受け止めてくれて抱きしめ返してくれた。
「ああ。このまま喰いてぇな。」
「!!」
顔に一瞬で熱が集まった。アランは私は幼いからまだ意味がわかっていないと思っているのか。私がまだ幼いことを考慮して我慢する。だの、でも途中まではセーフだの。途中ってピーまでか、それともピピーまでか等と呟いている。
しかも、それを耳元でボソボソやられるのだからいろいろとリアルに想像してしまって…いろいろと私の顔がヤバイことになってそうだ。
「…とりあえず、ここを出るか。」
そうであった。ここは、我輩達が泊まっている所とは違う場所であった。
アランについて出る。アランが急に立ち止まり、広い背中にそのまま鼻をぶつけてしまった。
「…なんのようだよ。」
げ、腹黒メガネ!!
アランの後ろから顔だけ覗かせると嫌なヤツがいた。
「随分なお言葉ですね。しかし、いいのですか?こんな時間からどうどうとそのような幼子を宿に連れ込むなど。」
「なっ。子供扱いするな!!」
「関係ねぇよ。特にお前にはな。」
アランは前に出て噛みつこうとする我輩を引き寄せ肩をだいた。
「まぁ…そうでもないですけどね…勇者であるあなたと魔王様が恋人同士ではこちらも都合が悪いですからねぇ。」
ニヤリと笑った腹黒メガネは、とんでもないことをさらりと暴露した。
「は?」
アランから低い声が発せられた。
我輩は顔をアランに向けることができず腹黒メガネを睨み付けた。
視線で殺せるなら今すぐコイツを殺したい。
腹黒メガネは殺気をものともせずに、むしろ嬉しそうに笑っていた。




