23、それからの結末を、少し
本編に入れられなかった、蛇足的な、説明的な、そんな感じの最終話。
それからの結末を、少しだけ。
ジークの後に王子様を継いだのは、ジークの弟だった。
魔法によって、ジークという存在がなくなってしまった今、それが自然な流れだったのだろう。
ジークは自分が消えた後のことも考えて、結構強引な政治改革をしていたらしいと後からエンドさんに教えられた。
家族にも存在を忘れられてしまって悲しいねと伝えると、ジークは酷く冷めた表情で大したことないと言っていた。
私にはとても悲しいことのように思えたけど、それは私が悲しむことではないから、そっと心にしまった。
私も、元の世界の「存在」を失ってしまっているためか、もう家族のことも友だちのことも、もう思い出せない。自分の名前に関しては、この世界に来たときから完璧に忘れてしまっていて今では「マナ」だけが私の名前だ。
元の世界を懐かしいとは思わない。元々、自分で捨てた世界だ。未練なんてない。
でも、ジークは私が元の世界を捨ててしまったことについては罪悪感があるみたいだった。それこそ、余計なお世話って話だと思う。まぁ、少しずつ分かっていってもらえばいいんだろう。時間は沢山あるんだ。
ワールズへの正式な入国が認められた後、ジークは魔法学校で学び、最短の三年で卒業した。
そして卒業後は魔法使いとして認められ、上位魔法使いにしか与えられない「色」も賜ったそうだ。
私と言えば、ジークが魔法学校に入学したと同時に、一緒に入学して魔法について学ぶことにした。とはいえ、魔力のない私は魔道士の学科に配置された。
魔道士の学科は、研究が主だったから、私は自分の出生を隠しつつ異世界召喚についての研究をした。
禁術なのに研究してもいいの?って最初は不思議だったけど、これをやり遂げられる人は滅多にいないってのがよく分かったから納得した。
こんなに面倒で魔力消費が酷くて、制約が多い魔法なんて滅多にない。
だから、これをやり遂げたジークはやっぱりすごいなってビックリしたんだっけ。
私は、このまま学園で研究を続けたかったのだけど、ジークの卒業と同時に私も卒業を余儀なくされ、今は学院生として自宅での自己満足的な研究をちまちまとしている。
ジークは卒業後は、ワールズの魔法使いとして国内外で活躍している。ただ、仕事にケチつけたり、規定業務時間を短縮しまくって、よくエンドさんに説教されているらしいけど、本人は知らん顔だ。
あれからけっこう経つけど、未だに世界の理とやらに消されず、二人とも無事に暮らしている。
それを考えると、エンドさんと、あの奇麗な少年には感謝の気持ちでいっぱいだ。
そう言うと、エンドさんは酷く怒るからあまり言わないようにしているんだけどね。
人魚姫みたいに執着心バリバリで執念深かった私とジークは、誰かの思いとか願いとかを踏みにじって、知らんふりをして、ようやくここまで来た。
私たちが願うのは、傍にいることと互いの幸せだけ。
だって、私たちには、もうそれだけしか残されていないから。
他の選択肢なんて選べないほどに、幸せな幸せな結末。
だから、私たちの物語は、どこまでいってもハッピーエンドでしかない。
人魚姫みたいに泡になっても愛おしい人の傍にいられるんだから。
「マナが泡になるときは、俺も泡になって傍にいるからね 」
「もー!!また、勝手に頭のなか読んだでしょー!! 」
「だって、なんか幸せそうな顔しているから、俺のこと考えていると思って 」
「なんか、それ、すっごく悔しいんだけどー!! 」
そうして、私たちは静かに世界から忘れ去られていくのだろう。
願ったように、そっと寄り添いながら密やかに幸せに暮らしていくのだ。
幸せな結末を、大切に抱きしめながら。
END
ようやくエンドマークをつけることができました。
自分の至らなさを痛感した物語となりました。
結末については、どうかご容赦くださいませ。
完結できたのは、お気に入り登録やメッセージのおかげです。
最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
シズカンナ