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ラセン  作者: 夢咲 春風
1/1

魂の再生の闘い

一章・セバスチャン


多くの霊魂たちがあった。


その霊魂たちは男でも無く、女でも無かった。


その霊魂たちがいる場所は、光が完全に遮断された、黒い幕で覆われた、手まりの輪の中のような、空虚の中であった。

その球は大きくなく、等身大であった。


おまけに、その中は暗闇以外は何も見えなかった。


暗闇が恐怖をあおり、等身大しかない空間が、霊魂たちを圧迫し、苦しみを増幅させていた。


その玉は常に回っていた。


臓腑ぞうふから沸き上がる恐怖と苦しみの呻きをあげながら、それぞれの玉に入った霊魂達は、その中を歩いていた。


霊魂たちの姿は、どれも人間の型をしていた。




玉の中で、もがけば両手は、球体の天に届く狭さであった。


玉の膜は薄くもあり、厚くもあった。


玉の回転の速さは、

感情の深さ、重さで変わる。


常に恨みが走ると、玉はその怨念の深さに比例して加速する。

そうすると、足が取られ、バランスを崩して転がる。


転がると突然球体は、鋭いの刃を突起させる。

その刃の数も、怨みの数に比例していた。

霊魂たちはその度、強烈な痛みを受ける。


「ブスッ、ブスッと霊魂体に、強烈に突き刺さる。


霊魂たちは痛みが走る度、その痛みに泣き、顔が鬼のように醜い形相になる。


永遠に続くと思う”絶望”の責め苦。



玉の中の気温は、灼熱と極寒が交互にやってきた。


臭いは、刃が刺さる摩擦の焦げた臭いと、焼け焦げる断末魔の臭いが。

聞こえるものは、玉の中で、喘ぐ霊魂たちの呻きのみ。

見えるものは何も無かった。


地獄とは”永遠に救われない”と思う認識の中にあった。


霊魂たちは永遠にその球の中を歩き、また走り続けなければならないのか。


そのような玉が、その場所には数万個あった。


それは一つのもの、また二つにくっついたもの、などが存在していた。


多くの霊魂は歩き、刺さり、また走り続けていた。




この世界には日というものがない。

霊体であるために肉体がないので、疲れはない。


しかし日がないぶん、その苦しみが、永遠に続くと思う、精神のダメージは計り知れない。

マイナスな心が玉の速度を加速させる。


救われない世界。


爬虫類の卵のように、薄暗い平面に置き捨てられた世界。




幾年分の時が流れただろうか、その中の一つの玉に入ったある霊魂に、変化が起った。

一つ前の前世の記憶が、突然沸き起こった。


来世から送られてきた感情の力が、そうさせたのだ。


「ごめんなさい」

とその霊魂体が叫んだ瞬間、球が真っ二つに割れ、まばゆい光が溢れる世界が現れた。



この光り輝く世界には、二本の木が、並んで立っていた。

輝きの源はその木であった。


今ある空間には、平面が無く、木も霊魂も宙に浮いていた。


木が放つ光は、下にも、上にも、前にも、後ろにも四方を輝かせていた。


その木の大きさは計り知れなかった。



四方に伸びた枝々は、その放つ光の眩しさで、どこまで伸びているのか、誰も分からなかった。

その幹は、常に伸び続けていた。



霊魂はその木の前に平伏した。


その霊魂はなぜ、自分があの玉の中に入ったのかという、地上界で犯した罪の記憶が完全に蘇った


「セバスチャン」


木が語った。


「私は命の木であり、善悪を知る木である。

またアルファであり、オメガである。」

セバスチャンと呼ばれた霊体はその時、地上界を去って直ぐに、この木と対面した事を思い出した。

その時に言われた言葉を思い出した。


「四十世代に及ぶ救いを汝に与えた。

しかし見事に汝は私を裏切った。

玉に入るがいい。

再生は、今は許されない。」


再度対面した今、霊魂は光の前で懺悔した。


「神よ、おゆるしください。

私は・・

蘇生する資格がありません。」


木は霊魂に言った

「再度の試練である

汝の未来から、私に言葉が届いた。

その言葉が汝に入り、汝の良心が私に「許しの言葉」を放った。

ゆえに汝の玉を私は今、割いた。」


霊魂はそこにいて、未来が無いはずなのに、なぜ未来から声がしたかは、今の段階で、その英知を解説出来る者はいない。


霊魂は感慨に答えた。

「ご慈悲ありがとうございます。」



木はさらに続けた。

「二つの過ちがある

一つは私が愛したわが子を殺したこと。


もう一つは神の子として天命に背き、汝自ら命を絶ったこと 。

浄化するためには・・」

木はセバスチャンに全てを語った。

そして木は最後に語った。

「セバスチャンよ、行くがよい。」

というとセバスチャンはこの会話の記憶を奪われた。


セバスチャンはその場に倒れて深い眠りについた。



木が与えた救いの場にセバスチャンは行った。次元を幾つも超えて新たな救いの人生が始まった。


地球に生まれた人間には到底理解しえない「神の許しの身業

がここに現れた。



命の木はセバスチャンの再生のため、その霊魂を再び地上に蘇生させた。


月日は流れ、セバスチャンの生まれ変わりである「井上佑一」は、もちろん前世の記憶などなく、完全に人間として生きていた。


命の木は、彼を蘇生させただけでなく、再び自由を与えた。


自由を獲得出来たセバスチャンは何をしてもいい権利を獲得した。


また前世のように人を殺し、自らの命を絶つ事も自由である。


セバスチャンは自由を獲た替わりに、命の木は口出しする事も無くなった。


「神の沈黙」という地上界の摂理がセバスチャンに入った。


2章・セバスチャンから祐一



その夜、空は多くの星座で輝いていた。


初冬のそこ冷えする冷気の中で、それらは崩れる事なく、永遠に型にはまった版画のように鮮明であった。


井上佑一は帰宅した車から降りると夜空をしばらく仰いでいた。


それらの星々は悠久の光を佑一に注いでいた。


「何千年前の光を浴びているのだろうか。」


仕事の煩雑さが、佑一に自然の中に溶け込む余裕を奪っていたが、その日は一年係りのプロジェクトがほぼ成功したため、余裕が導くように夜空に眼を行かせた。



佑一は知っている星座の形を追った。


それらの形は懐かしい郷愁の思いを抱かせながら、心の中に溶け込んでいった。


あたかも誰かに抱き締められているかのように、心が落ち着いた。


しかし次の瞬間に佑一の心に言い知れぬ「恐怖心」が襲って来た。


オリオンの中から刃が落ちて来る光景が脳裏に浮んだ。


「疲れているんだな。」

佑一は恐怖心を振り払い、誰もいない、温まっていない、我が家へと入った。



佑一はソファーで音楽を聴きながら、ワインを楽しんでいた。

そこへ携帯が鳴った。


「私だけど・・」

別れた妻の真由美である。

「リサの運動会、来週の日曜日なんだけど・・

あなた出てくれないかしら・・」

「ああ、願ってもない事だけど・・

君達は・・」

「私達、ちょっと新居の事で出かけるの・・

彼もその日しか時間がなくて・・」


早口にまくし立てる。

もうそうすべきなの、と言いたげな口調である。

「いいでしょ!

貴方の一人娘に会わせてやるんだから!」

祐一のグラスを持つ手が震えた。


「分かった、学校直接でいのかな・・」


別れた妻の夫は佑一の取引先の男で、田中誠という。

別れた妻と誠との出会いは、スポーツサークルであった。

誠は身長が高く、細身で、情に篤く、女性より気が付く男である。

真由美は、佑一と誠が面識がある事は知らずに接していた。


誠は七年前に奥さんを亡くしている。

子供は居なかった。


誠は真由美を一緒の境遇と思っていたらしい。

「私も夫をなくしたの。」

の言葉に誠はだまされた。

「なくした」と言う言葉を誤解させ、真由美はたくみに誠を誘惑した。

真由美は、独り身になった誠の寂しい心の隙間に入り込んで行った。


誠は三十半ばで、一流商社の取締役営業部長であった。


真由美には魅力のある肩書である。


誠は真由美を愛した。

真由美も初めは、誠を愛した。


祐一達の結婚は十二年で終わったが、真由美は三年前にデザイナーの会社を立ち上げ、社長であり、自立出来るほどの収入になった。


その頃から、真由美は佑一をさげすんでみるようになっていった。

佑一は妻の変化に耐えていた。


妻に新しい男が出来た事は、薄々感じてはいたが、まさか誠であるとは思ってもいなかった。



妻と離婚したあと、

誠から籍を入れた事を申し訳なく告白された時は、佑一は冷静でいられた。


「申し訳ございません。」


「いや、気にしないでいいよ。

これが彼女の望みであれば、それでいい。」


祐一は誠に対して好感を持っていた。

なぜだかわからないが、誠には良心があると祐一は直感で感じるもがあった。

よって、話を聞いた時も、佑一に対して、怒りや憎しみは沸いて来なかった。

いや、かえって真由美のさげすみのまなざしから開放される喜びの方が大きかった。


ただ、一人娘のリサと別れる悲しみだけが残った。


しばらくしてまた携帯が鳴った。


経理主任の山口亜利紗である。


「夜分遅く申し訳ございません。

山口です。

部長、今回のプロジェクトの成功、おめでとうございます。」


「ああ、山口君か、ありがとう。

お陰様で何とかなりそうだよ。」


「本当におめでとうございます。

部長は人一倍、ご苦労なされましたので・・

ぜひ一言言いたくて・・申し訳ございませんでした。」


亜利紗は話しているうちに込み上げてくるものがあったのだろう。

すすり泣く声が聞こえた。


経理主任といっても、山口亜利紗はまだ三十歳前である。

スレンダーでスタイルがよく、ロングの髪をなびかせて歩く姿はモデルさんと言ってもおかしくない程である。


社内でも亜利紗に憬れている男達は、ほとんどといってもいい。


独身で、礼儀正しく、おまけに優しい性格なので、浮いた話もありそうなはずだが、佑一にそのような話が伝わって来た事がない。


「ご家族団欒の中、誠に申し訳ございません。」

「いや・・

今日は一人なんだ・・」

「お一人・・

奥様やお子様は・・」


「いや・・

ちょっとね・・」


「そうでしたか・・

失礼いたしました。

では・・

部長、おやすみなさい。」

離婚したことはまだ数人しか知らない。


まあ、知れわたるのは時間の問題だろうと、佑一は離婚した後ろめたさはない。

それよりも妻のさげすみのまなざしの辛さにくらべれば取るに足らない事と思えた。


その夜、佑一は不思議な夢を見た。


仕事の疲れとビールの酔いから、熟睡しているのだが夢が向こうから強引に入りこんだ。


入り込んだ夢は「神」が与えた「救いの儀式」である。


内容は佑一には記憶させず、

前世で犯した罪の「心理的感情」だけを残させ、そこから現世で救いの行動を起こさせる「神」が与える試練の業である。

神が人間に持たせた「潜在意識」に働きかけるのである。


佑一は冬であるのに、汗を流しながら目覚めた。

「この悲しさはなんなんだ。」


虚脱感で目覚めた。


その日、男は女を狙っていた。


女は髪を束ね、川で夫の服を洗っていた。


森の緑に繁った木々の間から、男は何度も覗き見た光景であった。


男が女を狙う目的は、始めはその肉体ではなかった。

しかし徐々に肉体の誘惑も襲って来た。


川で腰を屈めて洗う姿の胸元から見える、ふくよかな胸。

一重の襦袢のような衣から、ちらっと覗く伸びた脚。

男はその女の夫の兄である。


兄は初め、ただ弟の様子を見に来ていただけだった。

用事は何も無かった。

独身の兄は、弟に対して嫉妬していた。その男の、もう地上にはいない両親は、兄と同等に弟も愛していた。


しかし、兄は両親が自分よりも弟を愛していると思っていた。


嫉妬という煩悩が正当な視界を困惑させていたのだ。両親にしてみれば、子供は全て可愛いということを遮断させ続けた。

「羨ましいだろう」


と誰かが兄の心に囁いた。


うなずいた瞬間、誰かがまた男の中に入った。


兄は女に言った。


先程兄に入った者が兄に言わせた。


「あなたの家で弟を待ちたいのだが。」


「親愛なるお兄様

さあ、どうぞ。」


女は自分の家に兄を迎えた。


女は夫を軽蔑していた。

「私は貧しい生活はいやです。


せめてお兄さんみたいなお金持ちの妻になりたい」



そう思っていた。



若くて美しい私の自由を、夫が奪っていると思っていた。



そこに゛独り身゛で裕福な兄が来たのだ。


女は胸の前の服を少しはだけた。



兄に入った者の業は慎重にその心を操って行った。


また、女がわざと見せる、かがんだ時の胸の膨らみ、そこから見せる誘惑の瞳。


全てが入ってきたものの策略が進んで行った。



食べ物が女によって運ばれた。


兄は弟が山を超えた村に行ったのを見届けていた。


女も兄を誘惑した。

お互いが入って来たものの゛策略゛にはまった。


「弟は毎日、この女を抱いている


お前は兄


あの女はお前を待っている」


男は女を押し倒した・・

女は抵抗するふりをした。


男は女のばたつかす腕,脚を全身で受け止め、制止させた。


唇で女の露出している肌を舐めまわした。


女は感じ始めた。


抵抗が徐々に弱ってきた。


女は裸にされた。


女に入りこんだものは笑っていた。


女はその男に身を任せた。


二人は互いの身体を貪りあった。


行為は絶頂に達した。


そこに弟が帰って来た。


星座がきらめく夜空であった。


弟はそれらを眺めながら、家路を急いでいた。


家の近くまでくると、呻き声が聞こえる。


徐々に近付くことに、それが鮮明に耳に入る。


その声に合わせるように、木が揺れてゴトンゴトンとリズミカルに歩調している。


弟は扉を開けた。


行為は遮断され、女は泣いた。


男は、その震えながら立ちすくむ弟に笑いかけた。


二人の間に沈黙があった。


その後に弟は激情のまま、包丁で兄を刺した。


ただ、この現状を消したかった。


一刀で血が脇腹から溢れだし、下にいた女に垂れ流された。


女は恐怖で上に乗っていた男を跳ね除けようとばたつかせたが、男は女を抱き締め、

放そうとはしなかった。


呻きと叫びが家の中、また家の周りの草原に木霊した。


弟は三回、男を刺して外に出た。


初冬のきらめく星座の下で、弟は全身に血を浴びた姿で崩れ落ちた。


全てが終わった。


オリオンが極めて輝いていた。


幸せから絶望へ。


悟った瞬間、刃を自らの腹へ一刀に突き刺した。


その時に祐一はハッと目覚めた。


しかし夢の内容は隠されていたため覚えていない。



虚脱感は、恐怖心と懺悔の気持ちで、誠の心を覆っていた。



祐一はその日、経理主任の山口亜利紗を食事に誘った。


祐一と亜利紗に関係のある人々から見られる事のない、遠くにあるフランスレストランを予約した。


会社の近くや家の近くで目撃された場合、変な噂が流れると困るので場所をわざと遠くにした。

タクシーから降りて店内に入ると個室に案内された。


クラシックが流れ、黒光のするテーブルやイスが高級感を与える。


壁の絵画は淡い海辺の油絵である。


程なくすると、亜利紗が到着した。


「遠くまでごめんなさいね。」


「いえいえ

今日はお招きいただきましてありがとうございます。」


亜利紗は満面の笑みを称えた。

コートを脱ぐと亜利紗は白のスーツ姿であった。

ヒールを履くと祐一よりも少し低い位の身長である。


華奢な体付きではあるが、大きな胸と細いウエスト、スカートから伸びる長く細い脚。

社内の男達が魅了される事が祐一にはうなずけた。


「場所はすぐに分かったかな。」


「はい、タクシーの運転手さんが知っていましたので。」


祐一はあらかじめタクシー代を亜利紗に渡していた。


お釣と領収書を手渡しながら、亜利紗はウェイトレスが引いた席に着いた。


改めて亜利紗と顔を向かい合わせると、その美しさに祐一は赤面する程のときめきを感じた。


「部長、この度はおめでとうございます。」



「いやいや、ありがとう。

皆の頑張りのおかげだよ。

特に山口君には助けてもらった。

感謝するよ。」


「いえいえ、私なんかご指示に従っただけです。」


「そんな事はないけど、まあ今日はプロジェクトの成功祝いということで乾杯しよう。」


「はい、部長ありがとうございます。」


二人はワインで乾杯した。


クラシックの音色が会話を滑らかにした。

前菜が運ばれ、二人はフルコースを楽しんだ。

見つめ合う二人の心は、より一層、近くなって行った。



「今日のお食事の事は、奥様はご存じなんですか。」

急に亜利紗は悲しい表情で言った。


「山口君、実は僕は離婚したんだ。」


「えっ・・」



亜利紗は本当にびっくりしたようだった。

そして、悲しみの表情から嬉しそうな表情を作り、一瞬その少し潤んだ大きな眼を、祐一から逸して言った。


「じゃ、私にもチャンスがあるって事ですね。」

下に逸した眼が、輝きを持って再び祐一に注がれた。


ワインの酔いで亜利紗は一段と色っぽさを増していた。


祐一はその言葉と表情に、言い尽くせない程の愛しさが沸いて来た。


肩まである髪を亜利紗はかき上げた。


髪から発せられる甘味な香りが、祐一には今まで嗅いだ事のない、天上の最高の香りだと思った。

店から出た二人は、肩を抱き合っていた。


タクシーに乗ってからは手をつなぎ合い、亜利紗は祐一の胸にもたれかかった。


祐一は優しく肩を抱いてあげた。


ホテルに到着し、そこで初めて二人は結ばれた。



亜利紗の透き通る白い肌が、赤く熱を帯びながらベッドの上で官能のまま、なまめかしく、ゆっくりと震えながら動いていた。


祐一は優しく目の前の、愛しい肌に唇をゆっくりと重ねていく。


その度に、亜利紗の小さな唇から、感じるままの喘ぎ声があがって行った。


祐一は唇を全身に這わせ、両手で亜利紗の全身を愛おしむように擦っていく。


それに応えるように亜利紗は華奢な身体をくねらせ、悶えていった。


亜利紗の身体が弓なりになり、のけ反る。


その動作は時間と共に妖艶さを増して行った。


声はその動作と共有するように段々と大きくなる。


亜利紗は決して男を知らない身体ではなかった。


しかし祐一のように、心から愛されていると思ったのは初めてであった。


亜利紗は男女の営みで初めて絶頂という感覚を実感していた。


祐一が愛しく唇でなぞってくれる場所、また愛撫している手のひらに触られる場所が、全部気持ち良さを通り越した「性感帯」になって行くのを知った。

亜利紗が逝くたび、二人は長く唇を重ねあう。


登り詰めた後、祐一はエクスタシーが引いていく余韻を与えずに、亜利紗を優しく愛し続けた。


亜利紗に対する思いやりが何回も亜利紗を逝かせた。


結合する前に亜利紗は何度登り詰めたか分からなかった。


長い愛撫のあと、祐一は亜利紗の中に入って行った。


結ばれた状態で、祐一は亜利紗を抱き抱えた。


「亜利紗、愛しているよ。」


「祐一さん・・

愛して・・

ます・・」

亜利紗は悶えながら言った。


切ない程の美しい声。


祐一は亜利紗の中を優しく突いていく。


亜利紗は、もう死んでもいい、とすら思えるほどの最高絶頂を生まれて初めて祐一から与えられた。


亜利紗の中に入ってくるものが、奥に入るたび、亜利紗は絶頂に何度も身体をのけ反らせ、歓喜の喘ぎを発した。


その動きは、優しい程にゆっくりしたものである。


あくまでも亜利紗の感情に応えたスピードである。


その日、亜利紗は最高の頂上に達した時に、祐一も逝った。


亜利紗は涙を流しながら、女性が発する声でない叫びをあげて逝った。


祐一も人間が出すことはない「獣」の声を出しながら逝った。


二人はこのように結ばれた。





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