真面目と海と、オサムの転校。
百聞は一見にしかず。
アルバイト先で、店長から徹底的に叩き込まれた言葉だ。
だとしたら、と俺は思った。
百聞は、一見というより、一体感に近いのではないか、と。
いよいよ単位らしくなってきてしまうけれど、俺には、一見より一体感がしっくりきたのだった。
◇
いやぁ、俺、つらいな。
この真面目過ぎる性格(自称)のせいで、生きづらいし。
作り笑いにも、疲れたな。
何年も何年の前、中等部にあがる前だったっけ、夢を見た。
俺は、小学校二年のとき、近畿の市立小学校から、小中一貫校『千端学園』に転校した。
オサム君とは、近畿の市立小学校で知り合った。二年生で俺が転校したあと、オサム君も五年の終わりに転校し、再会することになるのだが、そのオサム君が、夢に出てきた。
(それは、俺が、まだ、千端学園になじめていないだけだったのかもしれないけれど)
オサム君と、幾千の山を越える夢。不思議と、痛みは感じなかった。旅の終点の海で、穏やかな波を前にして、オサム君が口を開く。
――海には、不思議……。
そこで、俺は、オサム君の声を聞き取ろうとして目覚める。夢は途絶える。
そんなこともあったっけ。
思わず笑ってしまった。
五年のころも辛かったけれど、今だって、辛い。
遺書、作ろっかな。
もう我慢するの、何回目だっけ。
衝動に任せて海まで出てきたけれど。
やっぱり、戻ったほうがいいかな。
結局、また海に来てしまった。
けれど、今度は、メモ帳とペンを持ってきた。
――これは、私、大島洋平の遺書である。
あれ。
遺書って、こういう書き方でいいんだっけ。
真面目すぎる俺も、最後位ふざけても、いいものなのだろうか?
咳ばらいを一つして、「これは、~である。」の下に、もう一文かきたした。
――私は、遺書の書き方がわからないから、遺書の書き方がわかるその日まで、生きてみようと思う。
サワサワ……と音がしたので海のほうを見ると、穏やかな波がきらめいていた。
海には、不思議な効果があるんだな、と俺は思った。
海は、よくわからない力で、人の悲しい願望を受け止めてくれる。
一聞でも、印象に残れば、何回でも思い返せる。
サワサワ……。
波は、ゆっくり引いては、ゆっくりあふれる。
あるようでない法則性に見とれて、俺は、波から目が離せなくなった。
サワサワ……。
俺は、深呼吸をした。
深呼吸って、海に着いてから十五分くらい経った今、初めてするもんかな?
海を眺めながら、俺はオサムを思い出した。
たまに見かける、なぜか人を読ませる力がある、現代文学っぽいネット小説と、波って、どこか似ていませんか?
ちなみに、作者は、「現代文学っぽいネット小説」について考えながら執筆しました。今読み返してみたら、文体も、ちょっと似ているかも?




