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コーヒーを淹れなおしてから読むべき小説群。

真面目と海と、オサムの転校。

作者: H真面目U
掲載日:2026/05/01

 百聞は一見にしかず。

 アルバイト先で、店長から徹底的に叩き込まれた言葉だ。

 

 だとしたら、と俺は思った。

 百聞は、一見というより、一体感に近いのではないか、と。


 いよいよ単位らしくなってきてしまうけれど、俺には、一見より一体感がしっくりきたのだった。



              ◇


 いやぁ、俺、つらいな。

 この真面目過ぎる性格(自称)のせいで、生きづらいし。

 作り笑いにも、疲れたな。


 何年も何年の前、中等部にあがる前だったっけ、夢を見た。

 俺は、小学校二年のとき、近畿の市立小学校から、小中一貫校『千端学園』に転校した。

 オサム君とは、近畿の市立小学校で知り合った。二年生で俺が転校したあと、オサム君も五年の終わりに転校し、再会することになるのだが、そのオサム君が、夢に出てきた。


(それは、俺が、まだ、千端学園になじめていないだけだったのかもしれないけれど)


 オサム君と、幾千の山を越える夢。不思議と、痛みは感じなかった。旅の終点の海で、穏やかな波を前にして、オサム君が口を開く。


――海には、不思議……。


 そこで、俺は、オサム君の声を聞き取ろうとして目覚める。夢は途絶える。



 そんなこともあったっけ。

 思わず笑ってしまった。

 五年のころも辛かったけれど、今だって、辛い。



 遺書、作ろっかな。

 もう我慢するの、何回目だっけ。

 衝動に任せて海まで出てきたけれど。



 やっぱり、戻ったほうがいいかな。


 結局、また海に来てしまった。

 けれど、今度は、メモ帳とペンを持ってきた。


――これは、私、大島洋平の遺書である。


 あれ。

 遺書って、こういう書き方でいいんだっけ。

 真面目すぎる俺も、最後位ふざけても、いいものなのだろうか?


 咳ばらいを一つして、「これは、~である。」の下に、もう一文かきたした。



――私は、遺書の書き方がわからないから、遺書の書き方がわかるその日まで、生きてみようと思う。


 サワサワ……と音がしたので海のほうを見ると、穏やかな波がきらめいていた。

 海には、不思議な効果があるんだな、と俺は思った。


 海は、よくわからない力で、人の悲しい願望を受け止めてくれる。

 一聞でも、印象に残れば、何回でも思い返せる。

 サワサワ……。

 波は、ゆっくり引いては、ゆっくりあふれる。

 あるようでない法則性に見とれて、俺は、波から目が離せなくなった。

 サワサワ……。

 俺は、深呼吸をした。

 深呼吸って、海に着いてから十五分くらい経った今、初めてするもんかな?


 海を眺めながら、俺はオサムを思い出した。

 

たまに見かける、なぜか人を読ませる力がある、現代文学っぽいネット小説と、波って、どこか似ていませんか?


ちなみに、作者は、「現代文学っぽいネット小説」について考えながら執筆しました。今読み返してみたら、文体も、ちょっと似ているかも?

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