【プロットタイプ】見栄とプライド
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
ただそれだけが、自分を動かす糧。
出席停止のウイルスしかり、更年期障害の症状しかり、一度掛かると動けなくなる。指先一つ動かす事さえ億劫になって、その場で固まってしまう。
それでも『甘えてんじゃねぇ!!』と自分を鼓舞しながら、必死に仕事をする。打ち込み間違えた数字を直し、隣から聞こえる小言に耐え、幾度となく同じ画面を見直す。
あれ……私今……何を見ていたっけ……?
今やってる仕事と、今の健康状態との相性は、再悪を極めていた。注意深く、効率良く見直さなくてはならないのに、同じ箇所ばかり眺めてしまう。
座っているのに目眩がする。動悸が止まらない。其れを馴らす為に、必然的に呼吸が荒くなる。耐えられなくなってトイレに閉じ篭る。
「ゲホっ……かはっ……」
便器に腰掛けながら、感じるのは胃から何かが迫り上がる気色悪さだった。
けれども衛生的な問題、会社との契約を加味すると、決してそれだけは駄目だと理性が働く。だから必死に『これは咳です』と誤魔化す様にして、息を吐き出した。
見栄とプライドだけで動いてる。ただ其れだけに縋って取り繕う。
「具合悪いなら、引き継ぐので」
「大丈夫です。もう少し頑張ります」
大丈夫だ。声も、外見も、人がいる前では取り繕える。そのまま、そのまま……。
スマホを開くとチャットが入っていた。あったのはたった一文。
――体調不良で帰ります。
となると、彼奴はきっと先に帰っている。恐らく、動けない程に憔悴している。だからインターホンを押さず、鞄から鍵を取り出して一人で中に滑り込む。
鏡花はリビングにいた。ベッタリと臀を付けて、立膝を付いている。書類を入れる様の大きな鞄と、弁当を入れる用の小さな鞄。其れが彼奴の周りに無造作に置かれている。脱ごうとして力尽きたのか、半端にストッキングが足先に絡んでいる。虚ろな目も相まって、廃人の様だった。
「体は大丈夫なのか?」
返事はない。代わりに頭部が僅かに動く。億劫なのか。動けないのか。ただ戦闘後の武者の雰囲気があった。目付きが釣り上がる。呼吸が荒い。
「動けないんだ。何も……出来ないんだ」
見栄とプライドが無ければ、ろくに動く事も出来ないんですよ。
毎日会社行けるのも、暮らしていけるのも、ただそれだけ。其れに縋ってるだけ。
あとは全部フルオート。
だから周りの目を気にして平気な顔出来ますし、仕事だって出来ます。
動けなくても、無理矢理指を動かします。
『やれる』って噛み付いて仕事します。
其れがないとただの廃人になってしまう。
平気で地べたに膝着くし、座り込むし、蹲るし、凭れ込む。
だからそんな状態で家に帰ると、何も出来ない。
手を洗う事も、寝転ぶ事も、返事をする事さえ出来ない。何も出来ない。
なんで生きてるんだろ。
仕事する為? 人の為? こんなしんどい思いしてまで仕事する、生きる意味って何?