vol.83 Rogue Sound、原子力発電所からチェルノブイリへ!?
「さあ、いよいよ最後の取材となります!
Synaptic Driveのお二人にお話を伺います!」
【STARLIGHT SYMPHONY】への出演が決定し、各方面からの取材が殺到する中、Rogue Soundの小さな事務所にも、ついにメディアのカメラが運び込まれた。
しかし、今回の騒動でメディア対応に疲れ果てたけんたろうは、綾音の計らいで「買い出し」という名目のもと不在。
取材を受けるのは、ボーカルのユージとマネージャーの綾音だけだ。
「それでは、ユージさん、綾音マネージャー!
今回のイベントへの意気込みをお願いします!」
ユージはいつもの調子でニヤリと笑う。
「おうよ!
日本のドームを俺たちのユーロビートでぶっ飛ばしてやるぜ!
みんな、覚悟しとけよな!」
その威勢のいい言葉に、綾音は苦笑いを浮かべ、すかさず補足する。
「ユージくんの言葉通り、Synaptic Driveの音楽で皆さんの心に最高のエネルギーをお届けできるよう、全力を尽くします。」
記者は間髪入れず、本題へと切り込む。
「ユージさん、以前、けんたろうさんのことを“原子力発電所みてーな作曲家”と評されていたそうですが、その真意をもう少し詳しくお聞かせいただけますか?」
待ってましたとばかりに、ユージがさらに上機嫌になる。
「おうよ!あいつはな、もう原子力発電所どころじゃねーんだよ!」
綾音の顔がピクリと強ばる。
記者たちも、次に飛び出すワードに期待を寄せている。
「あいつはな……例えるなら、チェルノブイリだ!」
「ちょ、ちょっとその例えはやめとこうよ、ユージくん!」
綾音が思わず声を上げる。
「いや、そうじゃなくて、ちゃんと意味があるんだって!
聞いてくれよ。
あいつの頭の中じゃ、常に音楽のメルトダウンが起きてんだ!」
両手を広げて熱弁をふるうユージ。
そのぶっとんだ表現に、記者たちはあっけにとられつつも、なぜだかワクワクしてくる。
「……メルトダウンということは、危険な部分もあるということでしょうか?」
記者が恐る恐る尋ねると、ユージは即答する。
「危険?
ああ、危険だぜ!
あいつの音楽は、聴く奴の魂を完全に巻き込む。
ハマったら抜け出せねぇ。
まさしく、音楽の最終兵器だ!」
さらにユージは熱を帯びたまま、語り続ける。
「だいたい、あいつの音楽は、もうこの時代のもんじゃねぇんだ。
たとえば、6億光年未来の音楽が、あいつの頭の中からポンと出てくんだよ!」
綾音がすかさずツッコむ。
「ユージくん!
6億光年は距離でしょ!
未来じゃないわよ!」
「あ、そうだったか!」
と悪びれもせずに笑うユージ。
記者たちからも思わず笑い声が上がる。
このユージと綾音の掛け合いは、Rogue Soundの日常そのものだった。
「ま、そういうこった。
あいつの音楽は、俺たちの想像の遥かかなたを行く。
だから、俺たちはあいつをスーパープロデューサーとして信頼してるんだ!」
自信たっぷりに胸を張るユージ。
そのたびに綾音の胃はキリキリと音を立てる。
けんたろうが高校生だと知れたら、きっと収拾がつかなくなる――綾音の心配は尽きなかった。
再び記者が間合いを詰める。
「ということは、けんたろうさんは、かなりご年配のベテラン作曲家なのでしょうか?」
けんたろうの謎めいた肩書きや音楽性から、記者たちは勝手に年齢像を想像していた。
ユージは悪戯っぽくニヤリと笑う。
「さぁな?
若けりゃ若いで、あの才能はヤバいし、ジジイだったらそれこそ現役最前線ってことだからもっとヤバい。
まあ、ご想像にお任せしとくぜ!」
年齢には触れず、けんたろうの“得体の知れなさ”だけが増していく。
綾音は、ようやく小さく安堵のため息を漏らすのだった。
この取材が、【STARLIGHT SYMPHONY】の舞台裏でどんな化学反応を引き起こすのか――
そして、その舞台の中心で踊る“けんたろう”という名の謎は、いっそう深く、音の迷宮へと沈み込んでいく。




