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vol.82 ネットとメディアの交錯点、揺れる「けんたろう」像

【STARLIGHT SYMPHONY】に関連する各アーティストのインタビュー記事が公開されると、ネットは瞬く間に熱狂の渦に包まれた。

 特に、これまで謎に包まれていたSynaptic Driveの作曲家「けんたろう」の名は、トレンドの中心に躍り出た。


 ネット掲示板のスレッドは、凄まじい勢いで更新されていく。


【芸能】Synaptic Driveけんたろう、業界内で「原子力発電所」と「ビッグバン」呼ばれる作曲家だった!

1: 名無しのエンタメウォッチャー ユージの原子力発電所もインパクトあったけど、一条零のビッグバンは格が違うな。詩的表現がやばい。

25: 名無しの音楽ファン あの天才一条零にそこまで言わせるって、どんだけヤバい才能なんだよ、けんたろう…

58: 名無しの通りすがり Synaptic Driveの曲、確かに中毒性あるけど、そこまで言われると聴き方が変わるわ。

112: 名無しのエンタメウォッチャー もしかして、あの話題の『ファイヤー・オン・ザ・マーキュリー』とかも、けんたろうが作ってるのか?


【メディアの反応】

 各種音楽メディアもこの現象に注目。

 佐野美月(西東京音楽大学・准教授)が自身のサイトに寄せた短いコラムは、その的確さで静かな話題を呼んだ。

「けんたろう――現代ユーロビートの進化系。加速感、衝動、そして響きに残る余韻。ジャンル横断的な、可能性そのものです。」


【音楽系YouTuber・セブ直山】

「うぉぉぉぉ!みんな、見たかーーーっ!今、音楽シーンが燃えてるぜぇぇぇ!」

 登録者300万人、日本最大の音楽系YouTuber、セブ直山が、カメラに向かって絶叫していた。

 彼の背後には、イベントの告知ポスターがデカデカと貼られている。


「今日のテーマはこれしかない!『STARLIGHT SYMPHONY』、そしてその中心にいる嵐の目!謎の作曲家『けんたろう』だぁぁぁ!」

 セブは、興奮で立ち上がり、拳を突き上げる。


「コメント欄もヤバいことになってる!

『これ、神イベント確定だろ!』

『チケット争奪戦やばそう』

 …わかる!わかるぜその気持ち!

 だってよ、Synaptic DriveにMidva、一条零様、Dream Jumpsだぞ!?胸熱すぎるだろ!」

 彼はタブレットを手に取り、視聴者に見せる。


「そして見てみろよ、この熱狂!Dream Jumpsのめぐみちゃん!

 彼女のインタビュー、ありゃもうただの音楽好きの顔じゃねぇ!

 信者の顔だよ!

『めぐみちゃん、完全にけんたろうの信者じゃんw 可愛いなw』

 ってコメント、マジでそれな!

 週刊誌の騒動もあったけど、そんなの関係ねぇ!

 音楽の力で全てを黙らせる!これがロックだろ!」


「そして一条零様!あの女神が!

 一人の作曲家に『ビッグバン』って言ったんだぞ!?

 もう事件だよ、これは!

 音楽シーンを揺るがす大事件だ!

 俺は今、とんでもないムーブメントのど真ん中にいる!

 この熱気、最高だぜぇぇぇ!」


 セブの熱量は、モニターの向こうの視聴者にも伝播し、チャット欄は凄まじい速さで流れていった。


【Midnight Verdict応援チャンネル・ザッツ小泉】

 柔らかな間接照明に照らされた部屋。

 壁にはMidnight Verdictのポスターが飾られている。

 配信者であるザッツ小泉は、優雅に紅茶を一口飲むと、紳士的な笑みを浮かべてカメラに向き直った。


「やあ、我が愛すべき女王の騎士団の諸君。

 今宵も集まってくれて感謝する。

 ……さて、今夜の議題は、もちろん我らが女王、Midnight Verdictのインタビューについてだ」

 彼の声は穏やかだが、その瞳には熱い炎が宿っている。


「コメントをいくつか拾ってみましょう。

『Midvaのインタビュー見たけど、Synaptic Driveの話題になった時、なんか微妙な空気だったよなw』

『けいと様、いつものクールさがちょっと崩れてたような?』

 ……ふむ。我が騎士団の諸君は、実に鋭いな」

 小泉は、指で眼鏡の位置を直す。


「確かに、あの一瞬の動揺。

 あれこそが、今回の騒動の核心だと私は見ている。

 記事の写真を見たまえ。

 Synaptic Driveの話題が出た時、こはる嬢の顔は真っ赤になり、ひなた嬢はどこか挑戦的な笑みを浮かべていた。

 そして何より、かおり嬢は遠い目で何かを悟ったかのように静かだった。

 これは偶然ではあるまい」

 彼は少し真顔になり、声を潜める。


「そして極めつけのコメントがこれだ。

『てか、けんたろうって、Midvaとも関係あんの?まさか、けいと様の……いや、ないないw』

 …諸君。

 私は、この『ないないw』と笑い飛ばしている部分にこそ、真実が隠されているのではないかと考えている。

 我らが女王・けいと様が、あれほどまでに心を乱される相手だ。ただの作曲家であるはずがない」


 小泉は、静かに、しかし力強く宣言する。

「このザッツ小泉、騎士団長として、女王陛下をおびやかす存在の正体を、必ずや突き止めてみせる。

 そして、何があろうと、我々は女王陛下の盾となる。

 いいな、諸君!」


 彼の言葉に、チャット欄は「御意!」「我らが女王のために!」という忠誠の言葉で埋め尽くされた。



 三者三様の視点が交錯し、「けんたろう」という謎は、それぞれの思惑の中で、さらに大きく、そして複雑に膨れ上がっていくのだった。

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