vol.80 Midnight Verdict、秘密を守る華麗なる戦い!
「STARLIGHT SYMPHONY」の開催を控え、Midnight Verdictの事務所にも連日メディア取材が殺到していた。
この日はけいと、あや、さやか、かおり、ひなた、こはるのメンバー全員が顔を揃え、記者の質問に対応している。
「今回のイベントへの意気込みをお願いします!」
リーダーのけいとがクールに答える。
「はい。Midnight Verdictとして、これまで培ってきたユーロビートの魅力を最大限に表現し、観客の皆様の心に深く響くステージをお届けできるよう、全力を尽くします」
落ち着いた受け答えに記者が感心したように頷く。
だが、次の質問にメンバーたちの間に微かな、しかし決定的な動揺が走った。
「今回のイベントには、同じユーロビートのジャンルからSynaptic Driveも参加されますね。彼らについては、どのような印象をお持ちですか?」
――来たか。
メンバー全員の心が一瞬で凍りつく。
けいととけんたろう、そしてユージとあやの交際関係は、世間には決して知られてはならない秘密。
Synaptic Driveの話題は、触れられたくない地雷そのものだ。
それでも、彼女たちはプロだ。
けいとは一瞬だけ呼吸を整え、表情を変えずに答える。
「Synaptic Driveさんは、新しい世代のユーロビートを牽引する、非常に勢いのあるユニットだと認識しております。彼らの独特なサウンドには、私たちも刺激を受けています」
リーダーの完璧な回答に、他のメンバーも各々苦心しながら続く。
【けいと(リーダー&キーボード&作曲)】
冷静沈着な受け答えの裏で、内心は激しく動揺していた。
けんたろうの名前が出ないことだけを祈りながら、膝に力を込める。ポーカーフェイスを死守し、深呼吸で自分を落ち着かせている。
【あや(ボーカル&ギター)】
「そうですね!お二人の作る曲って、本当に勢いがあって、私たちもすごく元気をもらってます!特にユージさんの歌声は、聞いててスカッとしますよね!ふふふ」
(内心:ひー!けんたろうちゃんの名前が出るたびに心臓が縮む〜!ユージの話だけで勘弁して!)
巧みに話題をユージのほうへ導き、親友けいとの恋人への言及を避けてにこやかにかわす。
【さやか(ドラム)】
「はい。Synaptic Driveさんの楽曲はとても情熱的で……私たちも、もっと情熱的なドラムを叩けるよう、日々精進しております」
(内心:けいとちゃん、大丈夫かな…。これ以上彼女を困らせる質問はしないで…!)
真面目に答えながらも、その視線は絶えずリーダーを気遣っていた。
【ひなた(ダンス&コーラス)】
「うーん、そうですねぇ!私もダンスしてて思うんですけど、彼らの曲ってリズムが独特で面白いんですよね〜!踊ってると、なんだか小悪魔になっちゃう気分!」
(内心:けんたろうちゃんは、私の可愛い弟分なんだから!誰にも渡さないんだからねっ!)
明るく小悪魔キャラを全開にしつつ、話題をダンスへ逸らす。
その瞳の奥には、けいととは違う意味で燃える“戦い”があった。
【こはる(コーラス&パーカッション&たまに作曲)】
「えっと……すごい……と思います……。お二人とも……頑張ってる……と思います……」
(内心:だめだめだめ!『けんたろうちゃんはうちのけいとちゃんの彼氏で〜!』なんて絶対言っちゃだめ…!)
普段のゆるふわさに加え、緊張で語尾がどんどん小さくなっていく。うっかりが出ないよう口をきゅっと引き締め、顔は真っ赤だ。
メンバーたちがなんとか危機を乗り越えたと思った時、記者からさらなる追撃が飛ぶ。
「先日、Dream Jumpsのめぐみさんが『Synaptic Driveのユージさんが、けんたろうさんのことを原子力発電所みたいな作曲家だと評していました』と話していましたが、皆さんはけんたろうさんをどう思いますか?」
全員の表情に「またその話題か!」という露骨な疲労が走る。
けいとは背筋をさらに伸ばし、静かに応じた。
「……非常に情熱的で、才能に溢れた作曲家だと認識しています」
かおりが遠い目でけいとを見やる。
(原子力発電所……つまり計り知れないエネルギー……けんたろうの制御棒がけいと。絶妙なバランスのカップルね……)
ひなたはこはるにささやく。
「ねえこはる、けいとって、けんたろうちゃんの“火力発電所”みたいだよね!愛の炎が燃えてるもん!」
「でも、原子力発電所だから…“核融合”…」
真剣に訂正しようとするこはるに、ひなたは「もう、いいよ!」と笑って手を振る。
あやは二人のやりとりを横目に、噴き出しそうになるのを必死で堪えていた。
(ユージの原子力発電所発言、けいとの“制御棒”、ひなたの火力発電所、こはるの核融合って……!もう、みんなけんたろうちゃんのこと大好きすぎ!……私もだけど!)
結局、Midnight Verdictのメンバーは終始、個人的な感情をプロの仮面の下に隠し通した。
この夏の「STARLIGHT SYMPHONY」は、彼女たちにとって音楽の祭典であると同時に、決して明かせない秘密を守るための、熾烈な戦いの舞台となるのだった――。




