vol.78 夢の祭典!ドームに集う運命のアーティストたち
「まさか、あのイベントに僕たちが!?」
Rogue Soundのオフィスで、僕は信じられない思いで声を上げていた。社長の口から告げられたのは、まさに青天の霹靂ともいえるビッグニュースだった。
この夏、日本の音楽シーンを彩る人気アーティストが勢揃いする、夢のようなイベントが開催されるというのだ。
その名も「STARLIGHT SYMPHONY -輝く星々の祭典-」。
国内最大級の大型ドームを舞台に、そのライブは全国に生中継される。そして、僕たちSynaptic Driveの参加が決まったと社長は告げた。
ユージもまた、驚きと興奮で目を輝かせている。
「うおおおおっ!マジかよ、社長!ドームだぜドーム!しかも生中継!こりゃ、俺たちの音楽を全国にブチかます最高のチャンスじゃねーか!」
ユージはもう、すでにステージに立っているかのように、エアギターをかき鳴らしていた。
「そうだ。そして、今回参加が決定したのは、Synaptic Driveだけじゃない。Midnight Verdict、一条零、そしてDream Jumpsも参加する。」
社長の言葉に、僕はピタリと動きを止めた。ユージもエアギターを中断して固まる。
「え……?」
僕は思わず声を漏らした。その瞬間、頭の中に、彼女たちや一条零とのあれこれが一気にフラッシュバックした。
けいとさんの『お仕置き』の時の冷たい視線、一条零のミステリアスな微笑み、そして『週刊文秋』に載った、めぐみの満面の笑み…。3人の顔がグルグルと頭の中を回り始め、それぞれの声が耳元でこだました。
『浮気は許さないわよ』
『見えない力で動くものです』
『私、けんたろうさんのユーロビートが歌いたい!』
――ああ、もう無理だ……。
走馬灯みたいに過去の失敗が甦る。ユージが、そんな僕の心情など気にせず、悪ノリの極致のセリフをぶつけてきた。
「おいおい、けんたろう!聞いてるか!?
けいとちゃんのMidnight Verdictに、一条零に、Dream Jumpsのめぐみとか……!
全部お前の女みてーなもんじゃねーか!」
ユージはにやにやと意地の悪い笑顔で僕を小突き、さらに追い打ちをかける。
「お前、どんだけ罪な男なんだよ〜!
ドームのステージの上で、お前の女たちが勢揃いするって、どんだけ修羅場なんだよ!ははは!」
僕は顔から血の気が引いていくのがわかった。
「やめろよ、ユージ!そんなこと言うな!」
必死にユージの口を塞ごうとするけど、ユージの悪乗りは止まらない。
「お前、この前めぐみとカフェで撮られた写真も、けいとちゃんに死ぬほど怒られたんだろ?これでまた同じステージに立ったら、またけいとちゃんに怒られるぞ〜!」
まるで子どもをからかうみたいに、いつまでも僕をいじり続けるユージ。僕は頭を抱えて唸った。
「うわあああ!頼むからやめてくれよ、ユージ!
これ以上、けいとさんを刺激しないでくれ……!」
その様子を見ていた綾音さんが、ついに頭を抱えてしまった。
「もう!ユージくん!けんたろうくんをからかわないでよ!
こんな状況で、そういう悪ノリしてる場合じゃないでしょー!
胃が……胃が痛くなってきたわ……!」
綾音さんの悲鳴が、やけに遠くに聞こえる。Synaptic Driveの初のドームライブ。普通なら、それだけで舞い上がっていいはずなのに、僕のプライベートがあまりに複雑で、どんどんおかしな方向に進んでいく。
自分でも感じていた。
僕の顔はすでに生気のない人形みたいだった。
目の前に広がるのは、夢のステージじゃなくて、四方八方から迫ってくる修羅場の幻影。
本当に、僕はこの「STARLIGHT SYMPHONY」という名の祭典を、無事に乗り切れるんだろうか……?
今回の話は大変光栄だ。
僕たちはここまでやってきた・・・だけど・・・本当に自分が望んだのはこの景色だったのかな?
何かが違う、何かが冷たい、でも何が違うのか自分でもわからない。
誰かが掘った穴に、知らずに落ちていく・・・そんな感じに襲われた。




