vol.118 再会
テレビ局内は、未だ「CAKE」の話題で持ちきりだった。
Midnight VerdictとSynaptic Driveへの注目度が異常なまでに高まる中、渦中の人物であるけんたろうは、事務所の意向で深くフードを被り、綾音とユージの間に隠れるようにして歩いていた。
「いい? けんたろうくん、絶対に顔を見せないで!
今、誰にも見られちゃいけないんだから!」
綾音の悲痛な声に、けんたろうは小さく頷く。
しかし、運命とは皮肉なものだ。
曲がり角を曲がった瞬間、向こうから歩いてきた人物と、けんたろうの体が軽くぶつかってしまった。
「うわっ!」
思わず上げた声と共にフードがずり落ち、彼の顔が完全に露わになる。
綾音とユージは、血の気が引くのを感じた。
だが、彼らの焦りも、けんたろうとぶつかった相手が顔を上げた瞬間、驚愕に変わった。
そこに立っていたのは、今をきらめく人気ナンバーワンアナウンサー、知的でクールな美貌の、ゆりこアナだった。
彼女が廊下にいる。
ただそれだけで、まるで映画のワンシーンのように、周囲の喧騒も、飾られた華やかな花さえも、自然と彼女の方を振り返る。
テレビで見るより遥かに圧倒的なオーラ。
周りのすべてが彼女の引き立て役になる、まばゆい輝きを放っていた。
「!!」
綾音は、驚きと焦りがないまぜになった表情で、ゆりこアナを見つめた。
「!!」
ユージもまた、その美しさと、まさかの人物との遭遇に、固唾を飲んだ。
そして、けんたろうは――。
まるで時が止まったかのように、ゆりこアナの姿を捉えたまま、小さく、しかし確かな声で、その名を呼んだ。
「…ゆりこさん…」
その声に、ゆりこアナはふと視線を向ける。
そして、少年の瞳の奥に何かを見出したかのように、彼女の透き通った瞳がわずかに揺れた。
ゆっくりと、記憶の扉を開くように、言葉を紡ぐ。
「……けんたろうちゃん?」
その瞬間、二人の瞳は互いを映し、まるで鏡を突き合わせた無限回廊に迷い込んだ。
過去と現在が交錯し、記憶が鮮やかに蘇る。
全ての騒音が遠のき、二人だけの、懐かしくも切ない時間が流れ始めた。




