vol.117 嵐のモテ期到来
Midnight Verdictの生放送で巻き起こった「CAKE」騒動と、Rogue Soundでのめぐみと一条零による熾烈な「けんたろう争奪戦」。
その余波は、天才作曲家・けんたろうの周囲で、カオスな渦となって膨れ上がっていた。
「いやー、しかし、お前も罪な男だな」
テレビ局へ向かう車中、ユージがニヤニヤしながらけんたろうの肩を叩いた。
「トップアイドルのセンターと、あの孤高の歌姫、零様だぜ?
めぐみちゃんは『私、けんたろうくんを好きになっちゃいました!』ってガチ告白だし、零様なんかは『交際発表しましょう』って独占欲丸出だし!
本命はMidnight Verdictの女王、けいとちゃんだろ?
どうなってんだよ、このモテ期は!」
ユージの軽口に、助手席の綾音は深いため息をつく。
「笑い事じゃないわよ!
けんたろうくん、本当に大変だったんだから!
あの時のRogue Soundは、女のプライドがぶつかり合う戦場だったのよ…!」
その時の光景を思い出したのか、綾音は顔を青くする。
二人の報告に、けんたろうは困ったように眉を下げた。
自分の音楽が評価されるのは嬉しい。
だが、自分の存在が恋愛の火種になるとは、まったくの想定外だった。
「え、えっと…僕、そんなつもりじゃ…」
しどろもどろになるけんたろうの頭を、ユージがわしゃわしゃと撫でる。
そんな中、ユージは窓の外にテレビ局の建物が見えてくると、急に目を輝かせた。
「おっ! ていうかさ、この時間ってもしかして、夕方のニュースのゆりこアナに会えたりしねえかな!?
俺、大ファンなんだよなー!」
「ユージくん!」
綾音が呆れたように声を荒らげる。
「今はけんたろうくんのことで手一杯でしょ!
不謹慎よ!」
しかし、その名前に、けんたろうの肩が微かに揺れた。
(ゆりこさん……)
けんたろうは、その名を心の中でそっとつぶやく。
ユージのミーハーな期待とも、綾音の焦りとも違う、複雑な感情が胸に広がる。
けんたろうは窓の外に流れる景色を見つめながら、遠い過去に思いを馳せるかのように、そっと瞳を伏せるのだった。




