vol.113 女子会ミドヴァ⑨
こはるちゃんによる「無邪気にパクパク」発言と、けいとさんの口元のクリーム。
あまりにも完璧すぎる「答え合わせ」に、生放送スタジオの空気は完全に凍りついた。
Midnight Verdictのメンバーは文字通り崩れ落ち、けいとさんは顔面蒼白で完全に制御不能な状態に陥っている。
「いやいやいや! けいとさん、それはきっと偶然ですよね!?」
ゴリマッチョ岡田が必死にフォローを入れるが、その声は上ずっている。
桜木麗子の
「何か、関係があるんじゃないかしら?」
というストレートな質問に、僕はテレビの前で凍りついた。
やめろ、それ以上は…!
もう、けいとさんを追い詰めないでくれ…!
僕の祈りも虚しく、その言葉はスタジオに投げ込まれた巨大な爆弾となった。
そして、Midnight Verdictのメンバーは、今度こそ完全に「崩壊」した。
けいとさんは、両手で顔を覆い、そのままうずくまってしまった。
背中が小刻みに震えている。
あやさんは、笑いをこらえきれず、床に座り込んで身悶え、
「むり…むりだって…ひぃひぃ…」
と呼吸困難になりそうだ。
さやかさんは、頭を抱え、
「ま、まずい…これは…」
と小さく呟いている。
そして、かおりさん。
彼女は突如として立ち上がり、
「アハハハハハハハハハハハ!!!!」
と、普段からは想像もできない大爆笑を始めた。
何かのタガが外れてしまったかのような、止めどない笑い声がスタジオに響き渡る。
ひなちゃんは、口がパクパクと開閉するばかりで、完全にフリーズしていた。
そして、こはるちゃんだけが、きょとんとした表情でスタジオを見回している。
「あれ?みんな、どうしたの?」
この地獄絵図(天国絵図?)を前に、僕の頭の中は完全に真っ白になった。
「あらあら、けいとさん、そんなに動揺しちゃって、可愛いわねぇ」
桜木がさらに追い打ちをかける。
「でも、視聴者の皆さんも気になってると思うのよ。
ねえ、けいとさんと、最近話題のSynaptic Driveのけんたろうさん。
何か、関係があるんじゃないかしら?」
この大混乱の中、こはるが再び、全く悪意なく、しかし決定的な一言を発した。
「それはね、けいとちゃんの秘密だから、聞いちゃダメなの!」
ああ、もうダメだ。
全部バレた。
隠し通すなんて、もう無理なんだ。
ガラガラと音を立てて、僕とけいとさんの間に張り巡らされていた「秘密のベール」が、今度こそ完全に崩れ落ちた。
スマホ画面に目をやると、ザッツ小泉が涙を流しながら天を仰いでいた。
『皆さん!
見ましたか!
【こはる爆弾】三度目の投下!
しかも『秘密だから聞いちゃダメ』と!
もはやこれは自白です!
Midnight Verdict、完全崩壊!』
彼の背景では、ネットのコメントが狂乱状態で流れていく。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「三度目の奇襲! これはもう全面降伏だろ!!」
「MV完全に壊れたwwwwwwwwwwwwwwwww」
「かおりさん爆笑してるし、カオスすぎる!」
「これ、生放送事故だろ!でも最高に面白い!!」
「けいと様、顔覆ってうずくまってるし!かわいそすぎだろwww」
「かおりさん爆笑してるし、ひなたフリーズだし、あや倒れてるし、さやか頭抱えてるし!カオスすぎる!」
「岡田さんも麗子さんも固まってるwwwwwww」
「これ、生放送事故だろ!でも最高に面白い!!」
『見てくださいこの熱狂!』
とザッツ小泉が叫ぶ。
『「伝説確定」「神回すぎる」の声! 我々は今、歴史の目撃者となっているのです!』
混沌の極みに達したスタジオの中、まるで救世主のように、こはるが再び口を開いた。
彼女は、目の前のカメラに向かって、無邪気な笑顔で、はっきりと、しかし少し困ったように言った。
「はい、CM!」
こはるちゃんのその一言で、番組は強制的にCMへと突入した。
けたたましいCMソングが、大音量で流れ始める。
僕は、力が抜けてソファに崩れ落ちた。
救われたのか?
それとも、ただ処刑が先延ばしになっただけなのか?
僕にはもう、何も分からなかった。
このCM明けに、一体何が語られるのか。
全ての注目が、CM明けのスタジオに集まっていた。




