vol.106 女子会が暴く甘い秘密
灼熱のユーロビートを叩き出し、ライブ会場を熱狂の渦に巻き込んだMidnight Verdictのメンバーたち。
スタジオでの練習を終え、へとへとになりながらも、いつもの女子会モードへと突入していた。
冷たい飲み物を片手に、ソファに身を沈める彼女たちの間には、心地よい疲労感と満ち足りた達成感が漂っていた。
「あー、疲れたねぇ。
でも、今日の練習も最高だった!」
あやがグラスを傾けながら満面の笑みで言うと、ひなたが
「ねー!あやの今日の歌声、鳥肌立ったし!」
と元気いっぱいに続く。こはるも
「けいとちゃんのキーボードも冴えてたよ!」
と、ふわふわした笑顔でけいとさんを見上げた。
そんな中、さやかが小さなCDプレイヤーを取り出した。
「そういえば、Synaptic Driveの新曲、もう聴いた?
ネットでめちゃくちゃ話題になってるよ!」
さやかの言葉に、メンバー全員の視線が集中する。
一条零の宣戦布告、そして謎のタイトル「CAKE」。
この数日、メディアとネットを賑わせていた話題の中心は、まさにSynaptic Driveの新曲だった。
「あ、私も気になってた!
なんか、タイトルが『CAKE』って聞いたんだけど、ユージが歌うの、どんな感じなんだろう?」
あやが身を乗り出すと、けいとさんは少しだけ表情を曇らせた。
彼女の心には、一条零の言葉と、未だ連絡のない僕へのもやもやが渦巻いている。
衝撃の歌声
さやかはCDをプレイヤーにセットし、再生ボタンを押した。
キラキラとした可愛らしいシンセサイザーのイントロが流れ出す。
Midnight Verdictのクールなユーロビートとは異なる、しかしどこか耳に残るメロディに、メンバーはそれぞれ聴き入っていた。
そして、その歌い出しに、スタジオの空気が一変する。
【僕をかわいいしか言わないあなた】
──ユージの声ではない。
「けんたろうちゃんが歌ってる!!!」
あやが、まるで金縛りにでもあったかのように叫び声を上げた。
その声に、さやか、かおり、ひなた、こはるも一斉に目を見開いた。
「え、これ、けんたろうちゃんの声!?マジで!?」
ひなたが驚きのあまり、ソファから飛び跳ねる勢いで叫ぶ。
「可愛い…!
けんたろうちゃん、こんなに可愛らしい声だったんだね!」
こはるが両手を頬に当てて、夢見るような表情で呟く。
けいとさんは、最初は驚きで固まっていたが、その歌声に少しだけ胸の奥がキュンとした。
答え合わせの始まり
曲は続く。
【お姉さんぶってつっぱって ぼくをいじめるの】
このフレーズが流れた瞬間、スタジオにいた全員の視線が、一斉にけいとさんに向けられた。
「…あ」
あやが呆れたような声を出す。
ひなたがニヤニヤと笑いながらけいとさんを指差し、こはるは何も言わずとも「まさか…」といった表情で、けいとさんを凝視している。
「これ、けいとじゃん!」
あやが確信に満ちた声で言い放った。
その言葉に、さやかもうなずき、かおりもフッと小さく笑った。
【なんだかんだいっても 僕はあなたが好きなんだ】
このストレートな愛情表現に、ひなたが
「けんたろうちゃん、けいとにゾッコンだねぇ!」
と茶化すように言うと、あやが
「あー、もうこの歌詞、完全にけいとのことだわ!」
と、まるで自分のことのように興奮している。
甘い証拠の数々
そして、サビ。
【あなたはCAKEが好きだから あなたの笑顔が見たいから】
【CAKEを食べさせたいの】
「ほら来た!
けいとちゃん、ケーキ好きだもんねー!」
こはるが嬉しそうに言うと、さやかもうんうんと頷き、かおりも口元に笑みを浮かべていた。
【恋はCAKE おしゃれなショートCAKE】
【無邪気にパクパクこどもみたい】
この歌詞が流れた瞬間、ひなたが
「え、けいとが無邪気にパクパク!?」
と大声で笑い出す。
「普段女王様なのに、けんたろうちゃんの前だと子供になるってこと!?」
と、あやが面白そうにけいとさんを覗き込んだ。
けいとさんは、最初こそ平静を装っていたものの、メンバーからの矢継ぎ早のツッコミと、歌詞がまさに自分を表現していることに気づき、みるみるうちに顔を真っ赤に染めていった。
「ちょ、ちょっと…!
何言ってんのよあんたたち…!」
蚊の鳴くような声で反論しようとするが、その声は歌詞にかき消されてしまう。
【KISSはCAKE 甘いフルーツCAKE】
【口にはクリーム女の子】
このフレーズが流れると、メンバーの目はさらに輝き、けいとさんの顔はもう真っ赤を通り越して、もはや紫色に近かった。
「キャーーーーー!
けいととけんたろうちゃんのキスシーンだああああああ!」
ひなたが絶叫し、あやが
「これ、完全にラブラブじゃん!
聞かせちゃっていいの、こんなの!?」
と興奮気味に叫ぶ。
「もうっ…!うるさいっ!」
けいとさんは顔を両手で覆い、ソファの背もたれに体を預けた。
しかし、その耳はしっかりと、僕の歌声を捉えていた。
【二人の恋をCAKEに変えて 二人で一緒に食べようか?】
【早く一緒に食べようよ My honey!】
サビの締めくくりの「My honey!」が流れる頃には、けいとさんは完全にメロメロになっていた。
両手で顔を覆ったまま、わずかに漏れる吐息は、甘く、そして幸せなものだった。
その様子を見たメンバーたちは、声を殺して笑い転げていた。
クールで女王様然としたけいとさんが、ここまでデレデレになっている姿は、めったに見られるものではない。
この女子会は、僕がけいとさんへ送った甘いメッセージを、彼女の友人たちと共に、最高の形で「テイスティング」する場となったのだった。




